2026.01.12

粉飾事件で逮捕「旧すてきナイス」元経営者がやり直し裁判で逆転無罪の真相…へのツッコミ


粉飾事件で逮捕「旧すてきナイス」元経営者がやり直し裁判で逆転無罪の真相――「会計基準」を無視して暴走した地検の"誤算"と6年半の苦闘

https://toyokeizai.net/articles/-/926606

上記記事が正月早々(ごく一部で)話題を集めています。個人的には一読してツッコミどころ満載だと思いましたのでツッコミながら読んでみます。まだ自分の中での考えがまとまっていませんので、とりあえずツッコミを垂れ流しながら考えたいと思っています。

まず前提として、判決文は全然読んでいませんし、事例も昔のことなのであまり覚えていません。したがってこの判決について物申そうとしているものではありませんし、感覚的には無罪も当然ありうると思っています。あくまでツッコミ先は当該記事ですので誤解のないよう。




上場企業が株式を発行することは、お札を刷ることに近い。

いきなりおいおいという感じで、常々ハコ企業を「株券印刷業」と呼んでいるクラスタにとってはこの表現自体かなり違和感があるのですが、この辺で下手なこと話すといろんな方面から銃弾が飛んできそうなので生半可な知識で語るのはやめておきます。


それは、企業会計基準に照らして"粉飾といえるのか"だけを争点に審理がなされ、70代の2人の経営者に「無罪」が言い渡されるというものだった。

この先「会計基準にしたがって判断しろ」と散々言い出す割には、粉飾と言えるのか"だけ"は随分な言い草で、早くも結論への誘導が見られます。この「だけ」は下級審差し戻しの論点から来ているようですが、それと経営者の年齢と何の関係があるのか?


決算書は会計基準に基づいて作られるのだから、会計基準で判断するのが当たり前ではないかとの疑問を持った読者は常識人だ。ところが、粉飾事件が審理される裁判所では、その常識が通じないことが珍しくない。

何が言いたいのかよくわからないのですが、会計基準から逸脱した会計処理をすることが粉飾事件の構成要件(雑ですが)だと思いますので、会計基準で判断されるのは当たり前です。それを慢性骨髄性白血病という被告人の病状を持ち出して感情論で錯乱させているのはこの記事の方ではないかと。


一審で、弁護側は決算書の粉飾かどうかを"会計基準に照らして立証"するよう検察側に求めた。ところが、検察側はこれを受け入れず、平田さんが実質的に支配する会社に30億円を超えるマンションや土地を売った取引は、決算対策のための実体がないもので、売上高や利益を計上することは、決算書に虚偽を記載したことになるなどと主張した。

会計をかじった方ならわかるかと思いますが、Substance over form といった実質優先主義の原則が会計基準適用の前提にあるかと思います。取引に実態がないという判断が「会計基準に照らして立証」していないと主張するのは会計実務家としてはかなりの違和感がありますね。


差し戻し審では、検察側は日本の会計基準を決める民間機関「企業会計基準委員会」の委員長などを歴任した会計士の西川郁生氏を、弁護側は筑波大学大学院教授などを歴任した会計士の弥永真生氏を証人とし、難解な会計の議論を交わした。

このへんのビッグネームは熱いですね。弥永先生は現役の明治大学の教授ですが筑波大教授を歴任したと書くものなのですね。どうでもいいことでした。すみません。


例えば、東京証券取引所の上場企業がとることができる会計基準には実質的に3つある。日本会計基準、国際会計基準、米国会計基準で、採用する基準によって、売上高も利益も変わる。会計基準でさえ選べるのに、個々の会計処理となると、選択肢はさらに広がる。

忘れないでください、J…、というネタはともかく、会計基準が選べるから個々の会計処理の選択肢が広がる、という論拠はいかがなものかと思いますね。一つのルールには一つの体系があって然るべきで、他のルールで認められているからこのルールでもいいではないかというのはただの言いがかりでしかないですね。


今回の主任弁護人で「無罪請負人」とも呼ばれる弘中惇一郎弁護士は、「企業は決算対策でいろいろと工夫する。こういう見解に立てばこの売買は否定されるべきといった領域まで検察が刑事事件として捉えること自体を自制すべきだ」と指摘した。

ひ、弘中先生…。安易に刑事事件とすべきではないというのはそのとおりだと思いますが、「決算対策でいろいろと工夫する」ことを是認するようなコメントになってしまっているのはいかがなものなんでしょう。そうしているのは記者かもしれませんが…


同年度は有報の虚偽記載で6社が命じられた。最も多額だったのは液晶パネルのジャパンディスプレイ(JDI)で、21億6333万円、最低は600万円だった。課徴金の額は、企業の時価総額の大きさや不正の期間によって決定されるが、ナイスの課徴金は2番目の低さだった。

JDIの場合は全てを抱え込んで黄泉の国へ行かれた方がいらっしゃったので立件は難しかったのではないかと推察しますが、いずれにせよ大企業では立件されず中小ばかり狙い撃ちされる、というのは堀江貴文氏の時にもよく言われたことです。大企業と比較して中小企業の方が指揮命令権が分かりやすく立件しやすいという事情はあるのでしょうが、課徴金の額で刑事責任の順番が決まっていないから恣意的と判断するのもまたちょっと違うような気がします。


会計基準に照らして立件された粉飾事件は珍しい。それどころか、2008年の旧日本長期信用銀行事件や2011年の旧日本債券信用銀行事件は、会計基準に照らした判断の結果、逆転無罪となった。

2008年とか2011年とか書いていますが、事案としては1990年代後半の話で、金融商品会計基準の適用前、当時の大蔵省の指導がすべてに優先していたと言われる時代であって、会計基準がかなり整備された現在と単純比較はできないものと思いますね。


もちろん、健全な株式市場の発展のためには、粉飾事件には目を光らせる必要がある。一方で、企業には決算書という「証拠」がある。検察側には見込みに基づいて「自白」を求める捜査ではなく、会計基準に照らして決算書を分析する客観的な立証を期待したい。

そもそも粉飾決算とは決算書が正しくないことであり、決算書という証拠があるという言い回しは矛盾をはらんでいるように見え私には理解不能です。今回の件が「自白」を求めた捜査であるのかの判断は私の能力の外ですが、今までの判断が「会計基準に照らして」なかったと言わんばかりの書き方はやはり違和感を禁じ得ないのですわ。

とにかく言いたいのは検察が「会計基準を無視して暴走した」というのはあまりに短絡的な見方であり、会計基準というものの捉え方が偏狭的と感じてしまいます。なにより検察側の証人に立った会計専門家の西川郁生さんにあまりに礼を失していると思います。

気が向いたらもう少しまとめますね。向かないような気はしますが。

2026.01.04

あけましておめでとうございます2026


昨年からはいつもの野営を縮小し、温泉入り放題の自炊宿で年を越すという軟弱民になってしまったのですが、今年も同様。こたつで紅白をリアタイして、帰宅後に鶴岡八幡宮と地場の神社にお参りに行き、本日紅白を見られなかった部分と、ちゃんみなを見返してやっと年が明けた気分なのに、もう明日は勤務です。

というわけで明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

毎年だらだらと会社員生活で惰眠を貪っているうちに、とうとう生まれてから十干十二支が一周してしまいました。正直来年何をしているのかよくわかっておりませんが、隠居するほどの蓄えもありませんし、起業などは一番向いてないタイプと自覚しておりますので、引き続きどこかで使用人として禄を食んでいるものと思います。

ここ2年は仕事だけで精一杯。いや仕事量が以前に比べて増えているというよりも、自分の体力的精神的キャパがどんどん減っていくことによる相対的な仕事量が確実に増えており、眼の前のやりたいことはあっても、今後長期的にやりたいことを考えている余裕があまりなかったと言うのが実感で、あと誕生日くらいまでにじっくり考えたいんだけど、たぶんあっという間に過ぎてしまうのでしょう。皆さんからも少しずつヒントをもらいながら考えたいと思っていますので、引き続きおつきあいの程をよろしくお願いします。
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2025.12.22

Subsequent Events - その憂鬱な存在

・本稿はゆる会計アドベントカレンダー2025 12/22分記事です。

今年も投稿の機会をいただいたけいたろうさんに感謝いたします。

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なおタイトル及びここまでの文章は2000字制限の範囲外となります。

ーーーー

2025年12月13日、北日本で起きた地震の余震に注意喚起するために「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発せられました。この「後発」という単語に魂がひゅんっとした方、そんなあなたを想定読者としています。

 

修正後発事象の判断

 

洗練されている皆様向けですので定義の説明は省略します。皆様においては下記の修正後発事象の議論の有益性を考えていただきたく思います。なお以下のショートコントは筆者の書き下ろしのフィクションであり、実体験などほんの少ししか入ってません。

 

ショートコント1:貸倒引当金

 

わい「得意先が民事再生の手続に入りまして…。」

監査人「そうですか、貸倒引当金は典型的な修正後発事象ですので、すぐに修正後の3月末財務諸表をください。」

わ「いや、これは4月中の突発事項が原因で…。」

監「では得意先の3月末の財務諸表を入手して健全性を証明してください。だめなら修正してください。」

わ「この時期にそんなもんあるわけないやないですか。」

監「では突発事項がなかった場合のシミュレーションを示してください。客観性が担保されたエビデンスをもって(中略)。だめなら修正…。」

わ「ぬっ●すぞゴルァ。」

 

ショートコント2:受注損失引当金

 

わ「ここへきて資材高騰とか作業の手戻りなどがあり、このプロジェクトは将来的に損失が見込まれるようになりました。」

監「そうですか、受注損失引当金は典型的な修正後発事象ですので、すぐに修正後の3月末財務諸表をください。」

わ「いや、3月中には異変は報告されてません、4月の情報を織り込んだ今回の見積りで初めて損失に転じたんです。」

監「でも現場は3月にわかってたんでしょ?修正してください。」

わ「そんなチャレンジ行為はあれ以来厳に禁じてます。本当に4月になって発生した事象です。」

監「では、3月末に行われていた場合どのような見積りになるか提出してください。客観性が担保されたエビデンスをもって(後略)。」

わ「ぬっ●すぞゴルァ。」

 

ショートコント3:訴訟損失引当金

 

わ「某国で争っていた損害賠償訴訟、一審で支払いの判決が出てしまいました。」

監「そうですか、訴訟損失は典型的な修正後発事象ですので、すぐに修正後の3月末財務諸表をください。」

わ「待ってください。判決出たばっかりですよ。」

監「4月で敗訴なら3月末でも当然不利ですよね。修正してください。」

わ「いや3月末の弁護士の見解だって当社有利だったんですよ。」

監「地場の弁護士の見解なんて、朝●龍が休場するときの診断書みたいなもんですよね、修正してください。」

わ「いやどんな弁護士が判断したって、3月不利とは出ないですよ。」

監「では、3月末の状況についてセカンドオピニオンを取ってください。あ、監査意見に影響しますんで、期限は1週間以内に…。」

わ「ぬっ●すぞゴルァ。」

 

ショートコント4:プロフォーマ財務諸表

 

わ「カーブアウト財務諸表の目処がたってきましたね。」

監「おつかれさまです。では最後に後発事象確認手続に入ります。」

わ「2025年3月期の財務諸表にかかる後発事象のリストはこちらです。」

監「ありがとうございます。あと2024年度に計上した貸倒引当金の2024年3月末時点の評価の適正性について確認させてください、あと2023年度に計上した受注損失引当金の2023年3月末時点の評価も…。」

わ「待ってください。当時の担当者は異動したり退社したりしていますので、それは困難です。」

監「では、なりかわって現在の担当者に当時の判断を代弁させてください」

わ「そんな大川●法みたいなこと言われても…。だいたい2年前の時点の予見可能性を示すなんて実効性ないですよ。」

監「では、経営者確認書において社長に宣言していただけますか?社長に完全に内容を理解していただかないと、意見ふひょ…。」

わ「ぬっ●すぞゴルァ。」

 

ショートコント5:会社法と金商法の狭間

 

わ「6月1日付で得意先破綻が発覚しました。監基報560実1に書いてあるとおり財務諸表の修正は実務上困難であるので財務諸表において開示後発事象として注記する、ということでいいですよね。」

監「…御社IFRS適用会社ですよね。」

わ「君のような勘のいいガキは嫌いだよ。」

 

暴論:すべての後発事象を開示に


こうして決算のたびにどこかで存立危機事態が発生して、無駄に精神と手数をすり減らすことになっていますが、過去に立ち返って当時のエビデンスをもとに判断をし直す不毛な作業が本当に投資家にとって有益な手続きなのでしょうか。以前も書いたことなのですが、あとでわかったことは「すみません」と謝ってしっかり開示すればすむ話ではないかと思います。いたずらに理屈をこね回すことはかえって会計の恣意性をもたらすことにつながると考えています。あとは投資家の皆さんが何とかしてくれますよ。だって開示を見る投資家のみなさんって洗練されてるんでしょ?

2025.12.08

アラカン財務マンのCIA合格体験記 ー生成AIと穴埋め問題で挑んだ脳トレ受験ー

 

・本稿は2025年会計系アドベントカレンダー12/8分記事です。


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・本稿のタイトルは趣旨に鑑み某AIで作成しました。さすがAI、こんなインプレ稼ぎの薄っぺらい商材屋みたいなタイトル、人間の私では思いつきません。

・もともとはゆる会計アドベントカレンダー2025用に書き始めた記事でしたが、文字を減らせなくなったためこちらに格上げしたものです。ゆるい気持ちで接していただけると助かります。

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CIA合格しました(2025年3月)。7月までに受からないと新シラバスになってしまいますのでホッとしました。

そもそもここに来る方は、CIAといっても諜報機関ではないことはご存知かと思います。米国公認内部監査人(Certified Internal Auditor)のことです。

受験動機

受験した動機ですか?ぶっちゃけた話、年齢です。

 

財務会計畑一筋数十年、某JTCでそれなりのポストまでは来ました。でも年齢や能力、周りの環境を考えると、これ以上のプロモーションは望めない。このままでは年収維持も難しい。年収が維持できないと推しに会いに行けない、推しに会いに行けないと生きていけない……と考えたとき、生きるためにもう一本なにかが必要だと思ったんです。

 

JTCあるあるですが、ある程度経理ができる人間はそれなりの年齢に達すると内部監査部門にというルートが厳然と存在しております。そのルートに乗った場合CIAを持っておけば何かと便利という打算です。

 

幸か不幸か私はその後子会社の経理部門でのポストを得て、いまだ内部監査の仕事はしておりませんが、いずれ口を糊する手段として必要になるのではないか。数十年前USCPAを受けた時なにか役に立ちそうな気がするというこの直感、これをまた信じました。

 

そして何より、年齢的に記憶力や理解力の衰えが顕著になってきたこと、管理職も長くなって仕事は経験で回せるようになった分新たなインプットが不足してきたこと、そしてそのインプット力が明らかに落ちていて「脳の訓練」が必要だと感じていたこと、そんなことも背景にあります。

 

受験時スペック

  • 年齢:あらかん
  • スキル:USCPA全科目合格(25年前。当時は筆記試験なのでCBT形式は未経験)
  • 職務経験:財務会計ひとすじ数十年ですが、数十年やってりゃJ-SOX含めコンプラガバナンス系に触ることもありますよね、という状態
  • HbA1c:最高8.5(わかる人だけわかればいいです。集中力のコントロールが難しいんです)

受験スケジュール

某CtoCマーケットプレイスの記録を見るとPart1のMCを買ったのが2024年1月、合格したのが2024年6月。Part2はそれぞれその1か月後だったようです(記憶が定かではない。記録が残る取引はこういう時助かりますね)。日本の内部監査協会に入会申し込み(注:受験料が安くなるのです)をしたのも2024年1月のようなので、本気で受験を意識したのはこの頃のようです。

 

こうしてみるとめっちゃ短期間で合格したようにも見えますが、先にも書いた通り基本書はそれ以前に入手しており、掲載されている問題を解いたりもしていた(正答率は惨憺たるものでしたが)ので、実際にかかった期間はもっと長いです。だらだらやっていたのが、CIA試験のシラバスの変更と自分の残り時間を意識して尻に火がついてからの期間が上記の期間と考えてもらえればいいかと思います。

使った教材

CIA(公認内部監査人)合格へのパスポート

著者:三輪 豊明
https://www.amazon.co.jp/dp/4419060727(旧版です)

アビタス元経営者の宣伝本ですが、試験の全体像を掴むには良い本です。USCPA取得者からすれば、まあこれくらいだったらなんとかなるかもしれない、という錯覚(これ大事)を得るための本です(笑)

公認内部監査人資格認定試験対応 内部監査基本テキスト〈第4版〉

著者:水島正、衞藤秀三郎
https://www.amazon.co.jp/dp/4502350419/

試験範囲を網羅した本です。正直、使いやすいともわかりやすいとも思いませんが、類書がほぼないので使わざるを得ません。持ち歩くには分厚いので、著者に失礼と思いながらも章ごとにバラバラにして持ち歩いて使ってました。(以下「基本書」とします)

Abitus CIAコース MCカード ver9.0

PartⅠ2冊、PartⅡ2冊、PartⅢ4冊 計8冊

非売品ですが某CtoCマーケットプレイスで入手しました。書き込みがやたらとあり(ただし問題文にはなし)一部剥がれかけた中古の代物が12,000円でしたが、当時新品30,000円前後で出回っていたので飛びついてしまいましたが、これなしでは合格できませんでした。使い方は後ほど。なお入手したのはMCだけでテキスト本体は入手しませんでした。特段のポリシーではなく、単なる節約です。(以下「MC」とします)

公認内部監査人(CIA)試験対策Webアプリ

https://cfo-navi.com/cia-app/

これも問題練習用です。スマホアプリなのでどこでもできるという利点がありますが、5,000円/月のサブスクですので、勉強が長期間に渡ると地味に効いてきます。期間をうまく限定して使えればいいかと思います。

勉強法(Part1・Part2)

本気ではない頃は最初に挙げた2冊をぱらぱら眺めるだけでしたが、当然それでは何も身につきませんでした。特にこの年齢になると、ただ読むだけでは記憶に残らないんです 若い頃との違いをひしひしと感じました。

 

ざっくりいうとPart1、Part2は内部監査の理論と実践、Part3は監査をする上での一般知識といったものです。どちらを先にやったほうがいいかは諸説あるようですが、監査とは何なのかを叩き込まれるPart1、Part2を同時進行で進めていくのが効率良いと思います。

 

Part1、2はIIA(The Institute of Internal Auditors:内部監査人協会)の基準書に始まり、基準書で終わるというのが定石です。まずは基本書の巻末にある基準書をものにすることから始めました。が、そもそもとっつきにくい英語で書いてあるものを、とっつきにくい日本語で翻訳しているので、何を言っているのかはよくわかりません。長年経理やっててJ-SOXに携わってた人間でもそうなのだから、多分初学者は面食らうでしょうね。まずは理解よりは体に叩き込むことにしました。

 

でも、ただ読んでいるだけでは全く頭に入らない。この年齢になると(しつこい)、ただ読んでいるだけでは全く染み込みません。こういうのは受験のときから問題集形式でしか覚えられなかった私の特性かもしれません。

生成AIを活用した問題集作成

ここで救世主が現れます。生成AI。大学受験の頃やUSCPA受験の時より遥かに進化したIT環境。年齢のことはこれでカバーできたのかなと思ってます。

【準備フェーズ】問題データの作成


私のメインの使い方は下記のとおりです。

  1. 基準書をテキスト化(IIAのウェブサイトから入手可能)してExcelのA列に入力
  2. キーワードとなる単語を記号化([B]、[C]など)し、B列以降に正解を配置

例:

内部監査の使命


内部監査の使命は、[B]で[C]な、[D]、[E]および[F]を提供することにより、組織体の[G]を高め、[H]することである。
リスク・ベース 客観的 アシュアランス 助言 洞察 価値 保全


どの単語を穴埋め対象にすべきかはあまり深く考えませんでした。目的としては単語の暗記というよりは、目で追うだけでは頭に入りにくくなったおじさんが、目と手と両方使って理解しようとしたということに近く、文章を読んで理解するために穴埋め問題集の式をとったという感じです。

【実装フェーズ】AIによる学習システムの構築

あとは生成AIにお任せです。

 

古い話なのでプロンプトは残っていないのですが、「A列の文字列を問題文として表示し、[B]以降の値を入力させてB列以降の解答と照合、正解ならTrue、誤答ならFalseを表示するVBAを作成してください」そんな漢字でした。

 

その後、何度もプロンプトを改良していきました。私のプログラミング能力では表現しきれない部分は、AIに頼りながら直接修正。最終的には以下のような機能を実装しました:

 

  • 1回間違えた問題には黄色マーク
  • 2回以上間違えた問題には赤色マーク
  • 正解したら色を解除
  •  

これにより、苦手な項目を効率的に復習できるようになりました。

 

またMCの解説や基本書の記載が理解できないこともしょっちゅうです。その場合も生成AIを頼りました。問題文と選択肢をそのままぶっ込んでAIに解かせてその解説を読むのもまた勉強になります。

 

ただAIは常識人なので、CIAの変態的な選択肢に対応できずに誤答を出すことも稀によくあります。(ただ正答率は上がっていったような気がしますのでAI自体どんどん進歩してるのかと思います)が、誤答を読むことも勉強になります。

 

【運用フェーズ】日常的な学習サイクル

このEXCELファイルをクラウドに突っ込んでおけば、家からでも職場からでもアクセスできます(本当はスマホやiPadでもアクセスできるようにしたかったんですが…VBAだったもので…このへんがわいの限界…)。

 

最初はIIAの基準書を問題集化してMCを解いていったのですが、それだけでは解けませんので、解けなかった問題の解説文や、基本書の該当部分などを同じようにワークシートに突っ込んでいき問題集化していきました。こうして何周かしているうちに、9割くらいの正解率になります。

 

穴埋め問題の形式をとることで、受動的な読書が能動的な学習に変わる。これは私の学習スタイルかもしれませんが、年齢を重ねるほど、この「手を動かす」プロセスが重要になると実感しました。この時代に勉強できてよかったと思います。

 

勉強法(Part3)

ビジネス理論・IT分野

Part2までは2024年7月までに合格しましたが、Part3は2025年3月でした。この間人事異動があり、予想より長く経理のポジションをいただけることになり、やや監査へのモチベーションが弱くなったことに加えて、仕事でいろいろあり心身ともに疲れてしまっていたことなどがあります。

 

Part3はシラバスを見ていただければわかるのですが、非常に範囲が広く、真面目にそれぞれの分野の基礎から学んで理解して問題を解けるようになる、というプロセスを踏んでいては膨大な時間がかかってしまいます。結局、頻出分野の暗記という手段を取らざるを得ず、私にとってはやや退屈な作業でした。いやビジネス理論やIT会計の各論を学ぶPart3の方が楽しいと言われる方もいらっしゃいますが、個人的には監査とはこういうものだと学んでいる時間の方が好きでした(役に立つかは別問題ですが)。

 

とはいえ私の問題集の勉強法ではやることはあまり変わりません。目的が若干暗記寄りになるだけです。ビジネス理論やITはこれでなんとか乗り切りました。補助的にITパスポートの参考書やオンライン問題集を併用しましたが、役には立つものの、スコープも目的も違う感じなのであまりそちらにのめり込まない方がいいかもしれないです。

会計科目の注意点

さて、ビジネス理論やITのあと残ってるのはなんでしたっけ?ああ会計ですね笑。回答できて当然(というと偉そうですが単に手が回ってなかった)の感覚でぶっつけで問題を解いたら7割程度しか解けずかなり焦りました。

 

原因は原価計算の基本的なところを結構忘れていたり、英語の直訳がトンチキだったり、設問の設定が経理側からするとかなり甘く「その回答を引き出したいならその質問はおかしい」という問題が結構多かったことだと思ってます。合格するにはそういった問題形式に慣れる必要がありますので、会計専門家の方もあまり油断せず臨んでいただければと思います。まあ慣れの問題だと思いますが。

受験結果

そんなこんなでなんとか3科目とも1回の受験でなんとかすることができました。なにせ1回の受験料がそこそこお高いので、短期間で合格することができてかなり助かりました。この試験、合格の場合「合格」としか表示されないので正直どれだけの正答率だったかはわかりません。Part1、2はそうはいっても普通に合格点であったと思いますが、Part3の出来は正直いってわかりません。満点をとったとはとても思えませんが、余裕があったのかギリギリの合格だったのかはわからないです。少なくとも自信満々ということはなかったです。

合格後の感想

なんとか全科目取得したCIAですが。メインの目的だった「脳の訓練」については、下記の点からしても確実に効果があったと感じています。

  • 学習する習慣を戻すことができた
  • 新しいことを理解する力が維持できた
  • 生成AIを新しい学習ツールとして使いこなせるようになった

生成AIを使用する学習スタイルは、私にとって新鮮でした。若い頃のように「読めば覚えられる」わけではなくなった今、生成AI(Claudeが主でした)に問題集を作らせ、解説を求め、理解を深めていく。この手法がなければ、おそらく挫折していたと思います。

 

ちなみに、この勉強法は2024年のものです。生成AIの進化は目覚ましく、この記事を書いている2025年末の時点では、もっと効率的でスマートな学習方法が可能になっているはずです。こんなドヤ顔で語っていることはきっとすでに陳腐化しているのでしょう。

 

では得た知識が役に立ったかというと……正直、まだわかりません。現時点で内部監査の仕事には就いていないので、資格として直接役立ってはいません。ただ、今後そういった職務に就く可能性は十分あるので、無駄にはならないと思っています。USCPA受験時に監査論を学んだことが今の職務にはかなり役立っているので、内部監査も考え方を叩き込んだことはきっと役に立つはずです。はずです…

 

と自信なげなのは、この記事を書くために記憶を掘り起こす過程において、自分が学んだことがかなり飛んでいることに気づいたからです。実務で使っていないので仕方ないのかもしれませんが、上記の試験勉強方法はあくまで短期的な試験に効果的ということであって、長期的に身につけなければならないものについては邪道だったのかもしれません。

 

前途ある若い方は手を抜かずに王道を歩みましょうね。おじさんとの約束だよ!

2025.02.02

同人誌

以前このような記事を書きました。

「まずなにか書いてみよう~『チ。』にインスパイアされて」

 

この分の冒頭で

「本記事はゆる会計Advent Calendar 2024への投稿となります」

との記載がありますが、この「ゆる会計アドベントカレンダー2024」が書籍の形になっております。

 

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拙文はともかく、決してゆるくない方が密度の濃い話をしておりますので、もしどこかで見かけることがあればお手にとっていただければと思います。

こうした御縁で下記の本も入手することができました。

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注文し受け取りに言ったのは横浜のメロンブックス

(公式の写真)

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いままで同人誌というものにはあまり縁のなかった私にはそれなりにハードルが高い店ですが(笑)

なんとかゲットすることができました。

 

しかし、まだ全部は目を通せてはいませんが、こうして(たぶん)儲けもなしに物好きな(失礼)出版をして、自らのノウハウを惜しげなく公開し、経理業務の発展に協力していただく姿勢は本当に頭が上がりません。自分も少しは貢献しないとなあと思わせてくれる人たちがいるのはありがたいですね。ちょっとは頑張ろ。

 

 

 

2025.01.19

ブラジルに行ってきました

といっても、もう一ヶ月経ってしまって、もはや本当に行ったのかどうかも記憶の彼方なのですが…

12/9-10 NRT-ORD-GRU トランジット含め27時間

12/10-12 サンパウロホテル泊

12/13-15 GRU-ORD-NRT トランジット含め29時間

という記録が残っているし、

地元の珈琲屋や

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焼きそばUFOのセールや

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ラーメンを売ってるすき家

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の写真が残っているから、行ったことには間違いない。

でもね、このへんは無理やり一人の時間をひねり出したためなんとか散歩できたのであって、スケジュール上ほぼほぼ仕事でだれかとつきっきりで、食べたものもろくに撮れてないし、そもそも一人でスマホ持って出かけるな、盗られるぞ、と散々脅されてきたので、仕事以外の記録がほとんどないのよねえ。言うてホテルの周りはそこまで治安悪い感じではなかったんだけど、それでも駐在員の方の窃盗被害はよくあるみたいなので、まあ無事帰ってきたのでよしとしますか。

 

で、行った証拠がもう一つ。24時間以上食っちゃ寝の機上生活を往復、3日間の送り迎えありの通勤を続けた結果、帰日後の血糖値が見事に爆上がりして主治医に大目玉食らったこと。やっぱり運動って効果あるのね。

 

 

2025.01.02

明けましておめでとうございます

いつもであれば2日か3日に山籠りから帰ってきて紅白の録画を見るところなのですが、今年の大晦日は某温泉簡易宿でテレビを見ながら過ごすという軟弱な年末年始を過ごし、元日には富士山を観ながら帰浜し、本日鶴岡八幡宮と近所の社にお参りし年が明けました。

というわけであけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。

本年は出向に過ぎないとはいえ職場が変わることになりました。この歳でまだ経理として使っていただけるのは光栄の極みなのですが、半年やってみて気づいたことは、自分は思ったほど仕事が好きなわけではなさそうだということ☺

いや、今まではいろいろ文句言いながらも自分は仕事が好きなのだと思っていたんですが、案外ストレスにも弱いし、責任逃れもするし、ポジショントークもするし、なんか自分の嫌な一面を意識付けられた年でもありました。

とはいえこの歳で(しつこい)自分を見つめ直せたことは、この時期にあった海外出張(またいずれ書きます)も加えて、いい経験であったと思います。年末年始の山籠りおよび温泉三昧でStay Foolish してきましたので、また心機一転がんばりたいと思います。

今までは正月の抱負みたいなことも考えてきたような気がしますが、守れた例がないので今年は考えません。適度に旅に出て、適度に酒と食を嗜み、適度に推し、目の前食いつないでいければ満点の気持ちで生きていきたいと思いますので、本年もお付き合いのほどよろしくお願いします。Img_3643 Dsc_00912_original Dsc_0081_original Dsc_0075_original_20250113203001

2024.12.22

まずなにか書いてみよう~『チ。』にインスパイアされて

本記事はゆる会計Advent Calendar 2024への投稿となります。ゆる会計なのでゆるく引き受けてしまったら、直前でこれでもかとばかり密度の濃い作品を浴びせかけられて激しく後悔しております。何かを引き受けるには適切な懐疑心をもって行うことの重要性を改めて噛み締めています。

 

魚豊さんの『チ。-地球の運動について-』をご覧になっている方はいらっしゃいますでしょうか。界隈では3年前に話題になった漫画らしいのですが、漫画界に疎い私は本年になってNHKのアニメ化により初めて知った情弱です。

 

とはいえ、そんな熱烈に観ていたわけではないのですが、とある回の台詞がちょうどブログのネタを探していた私にビビビッと来た(死語)のでした    




(加工処理ご容赦ください…)

原文は「文字はまるで奇跡ですよ(中略)でも…本当に文字はスゴイんです、あれが使えると時間と場所を超越できる。200年前の情報に涙が流れることも、1000年前の噂話で笑うこともある。そんなの信じられますか?私達の人生はどうしようもなくこの時代に閉じ込められてる。だけど文字を読むときだけはかつていた偉人たちが私に向かって口を開いてくれる。その一瞬この時代から抜け出せる。文字になった思考はこの世に残って、ずっと未来の誰かを動かすことだってある。そんなのまるで…奇跡じゃないですか。」です。

1.時間と場所を超越できる

実はアドベントカレンダーの仕組みがよくわかってなくて、書くスペースがどこかにあるものかと思っていましたら、よく読むと場所は自力調達とこと。noteのアカウントはありますが投稿数ゼロのところに書くのもみっともない。あとはここしか…ということで、すっかり錆びついた鍵を探し出してきて、開かずの扉を開きました。

最終投稿2013年ですか。トモスズキさんは後に岸田政権の新しい資本主義をサポートする書籍を出されていますが、そもそも新しい資本主義も岸田さんもどこかへ行ってしまいましたね。

しかしまあ過去ログを改めて読み返してみるとまあ好き勝手にイキっておりますなあ。他人が大沢たかおの笑顔(画像略)で観ていると思うと余計恥ずかしい。でもそういう過去の自分の時代感と向き合える。いまなら画像や動画でできるしそのほうがシンプルなのかもしれませんが、学習曲線の傾きがすっかり水平線になってしまった自分みたいな年齢と境遇の者にとって、かつて自分が考えていた思考をたどるのはやはり文字が一番のような気がします(老害)。若気の至りを記録しておくことは将来の自分と対話することでもあるのです。

2.200年前の情報

歴史から学べるのはもちろん文字があるからですが、これは当たり前の話なので割愛しますね。

3.口を開いてくれる偉人たち

普通に暮らしていても偉人(注:ここでは生きている人を前提としています)が自分に向かって口を開いてくれることはなかなかないのですが、自分の文章が公開されていればそれが縁でコミュニケーションが始まるのは実際にあり得ることです。今考えれば錚々たる方々の当時のブログにトラックバック(死語)していたことが恥ずかしいです。

もちろんそのためには、ある程度相手にしてもらえる文章を書くことが必要になって来るのですが、そのへんの機敏はまず書くことを積み重ねることでついてきます。となれば書き始めるしかないですよね。 

4.未来を動かす

最近でも何らかのキーワードで検索すると10年以上前の自分のブログが引っかかることがあり、なんとも懐かしい気持ちになることがあるのですが、ということは見知らぬ誰かが昔の自分の文章を検索して行動を変えることがある、すなわち未来を動かしていることになります。どうしよう、いまさらびくびくして来た。本当に奇跡かもしれない。まして今この時代。自分の書いたものは生成AIに食われて未来の人間を新たな形で動かすことになるのです。

5.そして奇跡

なんて、「チ。」に煽られて文字による媒体について書いてきましたが、さっきも書いた通り音声でも動画でもいいのかもしれません。会計アドカレ参加者みたいに一万字を超える文章をすらすら書いてしまう変態はごく少数で、私含め幼少時から作文が苦手な人が多いことも知っています。しかし、いやだからこそここは文字にこだわりたい。ヨレンタにインスパイアされたオクジーの如く、少しずつでも文字を書いてくれる人が増えるといいなと思いながら書いています。そして書いていて感じたのは書く習慣が減ってかつ齢を重ねると、本当に書けなくなってきます。若くして会計系に携わる方々、まず記録してアーカイブすることから始めてはいかがでしょう(着地)。

 

2013.02.05

トモ・スズキ氏の講演

トモスズキというオックスフォード大学の日本人学者がいらっしゃいます。私のようなアカデミズムの端にもかからない位置にいる者にとっては海外で活躍されている学者の方の名前には疎いのですが、この方が実務家にも名前が知られるようになったのは昨年金融庁に提出されたオックスフォードレポートによるものです。

http://www.fsa.go.jp/common/about/research/20120614.html


そもそも当時の反IFRSの象徴となっていた自見金融大臣(当時)時代の金融庁の委託研究ということでいろいろ物議をかもしました。

金融庁が「詐称」を容認した学者
http://d.hatena.ne.jp/isoyant/20120903/1346598255

「オックスフォード・レポートに異議あり(週刊経営財務)」 
http://ivory.ap.teacup.com/kaikeinews/5551.html


まあ、経歴詐称かどうかは(JICPAやその構成員にとってはともかく)私にはさしたる問題ではありません。少なくとも試験に受かって監査法人に勤務していたことは事実のようだし、退会後どう名乗っていたかについてはあまり興味がありません。

むしろ、こういったものが出てきた背景や方法論(実証会計はもちろん、制度会計系の論文とも随分毛色がちがう)に興味を持ちました。今回たまたま末席に入れてもらっている学者さんの研究会に参加させていただくことができ、講演を聞くことができました。私の筆力ではうまくまとまりませんのでメモを断片的に流すことでお許し下さい。


・私はもともと南伊豆で生まれて、周囲はほとんど大学に行かないような環境に育った。ずっと哲学をやりたかったが、カネにならないので、まず公認会計士となって、監査法人に勤務して資金を貯めてオックスフォードに渡った。

・現地では哲学をやっていたが、指導教授が通常以上にオリジナリティを要求するタイプであったので、過去の経験も踏まえてこの分野での研究も行うこととなった。

・このようなレポートを提出したため、日本では反IFRS派と見られているが、必ずしもそうではない。この手のレポートは以前に中国やインドでも出しており、中国ではコンバージェンスを勧めているし、インドでは8基準のカーブアウト前提のコンバージェンスを推奨している。国によって環境は異なる。

・とくにIAS41(農業)については東南アジア諸国のプランテーション産業にとっては大問題。公正価値評価をして価値を持ち上げて成長とともに価値が低減していく会計モデルは資金の源泉がない時期から配当のプレッシャーとタックスの不確実性をもたらすもので産業をダメにしてしまう。

・これから世界的に問題となるのは中国とインドでありだからこそレポートの対象とした。、正直言って日本の状況にはあまり興味がなかった。日本は今のままでも問題ないので(注:世界における存在感はもうないので、というニュアンスのようにも聞こえましたが)。それを動かしたのは某経済団体と某省からの訪問者。


・私の研究手法は見ていただければ分かる通り、ステークホルダーを網羅的に洗い出し、分類し、細かくインタビューを重ねていく。その積み上げを分析して書くというもの。研究方法にバイアスが入りかねない等の問題点は本人である自分が重々承知している。

・今回のレポートについても、反IFRSのバイアスが入っているのではないかという批判があるのは承知している。ただ一言言わせてもらえれば、あらゆる努力をしてIFRSにサポーティブな意見を集めようとしたが、なかなか集まらなかった、というのが現実。

・しかしながら2006年にIFRSをテーマに論文を募集したケースがあったがさっぱり集まらなかった。これは適用事例が積み上がっていなかったからだが、データ数値を収集して分析する実証的研究だけでほんとうにいいんですか?

・もともと投資家保護という概念は100年前の英国において銀行のために作られたもの。当時は投資家である銀行がビジネスチャンスを見つけてきた。銀行の繁栄が企業の繁栄であり、英国の繁栄であった。現在保護すべき投資家は誰ですか?ビジネスには興味がない短期投資家は保護に値するんですか?

・個人的には中国ではイノベーションは起きないと考えている。まだ日本のほうが継続的にイノベーションを行う土壌があると考えており、もっと投資家の資金を長期的に振り向けるようにならないか、というのが課題認識。

・今後の日本のIFRS導入についてはもっとコンセンサスを重ねていけばいいという立場。(どのような概念でコンセンサスが形成されると思うのか?という問いに)現実は何らかの形で誰かが決断を下すのだが、それに向けてのプロセスそのものが目的となりうると考えている。

・投資家向けの会計が全てではない。例えば企業が全く環境問題を顧みないような国において、環境費用を開示するというのはどうだろう。コストは殆どかからず、環境対策を促進する効果があるのではないか。そういった情報提供の役割を期待している。

日本語前提の講演ですが、熱くなってくると突然英語となる熱血講演でした。
哲学系という観点から現在の金融資本主義に疑問を持ち、IFRSはその先棒を担いでいる、というお立場かと思います。

私とは必ずしも立場を同じくしませんが、日本では守旧派と見られかねない意見がIFRS発祥の地英国在住の日本人学者から出てきた意義は小さくないと思います。もう少し自分の意見を考えなおしてみるきっかけになりそうです。

2011.12.30

冬休みに読みたい第三者委員会調査報告書

@tnihei先生はじめ何人かの方々が挙げていたものをメモとして…

年も押し迫ったこの時期にホント久しぶりの更新であります。

昨年ほど出席はできなかったものの、今年も怪しい研究会には何度か参加させて頂き、学習させて頂きました。その中で取り上げられることが多かった第三者委員会による調査報告書。今年もいろいろなことがありました。印象に残ったものを10点挙げる、という企画です。

なお、順不同であります。また事の性質上リンク先がいつまで持つかわかりませんのでご了承の程を。


2681(株)ゲオホールディングス

私はまだ未読でありますが、不正支出、内紛、インサイダーとなかなか話題が途切れなかった対象会社。


7733オリンパス(株)
要約版
その1
その2
その3
別紙

すでに語り尽くされていますので解説は省略しますが、5分冊という前代未聞の数量とともに、「経営中心部が腐っており、その周辺部分も汚染され、悪い意味でのサラリーマン根性の集大成であった」と突然感情を吐き捨ててしまうところが、いろいろな苦労を伺わせます。

2140クラウドゲート(株)

旧テラネッツです。経営陣主導で循環取引を行い上場審査対応やら損失補填対応を行ったとのこと。監理銘柄(審査中)


3731(株)京王ズホールディングス

常勤監査役が主導でいろいろやっていた案件。まさか監査役がと思っていたら後に7733が出てきてもう監査役制度への信頼が激しく減退。ただこうとも
「反面、渡辺監査役は、本件不正行為等に関する裏帳簿ともいうべき詳細なメモを作成していたので、当調査委員会としても不正行為の解明に渡辺メモの果たした役割には一定の評価を与えるとしてもその責任は軽減されるものではない。」


3880大王製紙(株)

これも解説不要。ただ、これも不正会計の範疇に入れられる場合が多いのですが、単なる横領であり会計の問題とされるのは甚だ不本意。ただむしろその調査の過程で発生した御曹司貸付金以外の問題のほうが会計的には興味深く。12/29付の改善報告書では下記のようにどう見ても嫌味としか思えない文章が放たれています(会社サイトでは未upの模様)

「当社は、一般に公正妥当と認められた会計基準に則って適正な会計処理を行うため、会計基準等で明確になっていない会計処理や会計上の見積り等の判断を伴う事象について、長年にわたって、監査法人と積極的に相談・報告し、監査法人の理解を得て会計処理を行ってまいりました。この結果、これらの相談や報告が、監査法人から適正意見を得るためのものとなり、監査法人の見解に依存し、当社で一般に公正妥当と認められた会計基準に則っているかどうかの判断を怠るようになっていたと考えております。」


9508九州電力(株)

これも会計ネタではないので多くは語りませんが、下記が異色ですなあ

「第三者委員会は、企業不祥事により信頼を失墜した組織の委託により、第三者の有識者等による中立的、客観的な立場からの調査を行うことを目的として設置されるものであり、その調査結果に対して、委託者である会社側が反論を公表するなどということは、調査結果に明白な瑕疵があるという場合でない限り、通常はあり得ない。ところが、九州電力は、当委員会の調査結果に関して「当社の見解」の公表を行うなどして反論を行った。」

3781株式会社 DPGホールディングス

「DPG は SP との株式交換契約の検討に際し、デュー・デリジェンスを実施していない。未実施の理由としては(i)株式交換を平成 21 年 12 月末までに完了するためには残された時間が限られていたこと(ii)チャイナクイック事業の話を持ち込んだのが DPG の代表取締役である松田氏と親しい間柄であった CVC の代表取締役である C 氏であったことが挙げられる。」


6660株式会社インネクスト

売上前倒しや循環取引の手口についてかなり詳細に報告しているのにもかかわらず、公表前に会社があぼーんとなってしまい、なんとも間の悪いタイミングでの公表となってしまった案件。

「なお,本調査報告は 2011 年 9 月 8 日の時点で完成に至ったが,対象会社が 2011 年 9月 9 日付で破産手続開始申立を行ったことにより対象会社に対する提出に遅れが生じたものである。」

3777TLホールディングス(株)


法律事務所が調査したら子会社が勝手に売り飛ばされていましたという顛末。でも支配力がなくなったことには変わりないから連結財務諸表に影響はありませんということ。

5856(株)東理ホールディングス

これについてはいろいろありますが、むしろ無罪判決が衝撃
「被告の行為に任務違背があり、東理HDに財産上の損害を加えたと認定するには合理的な疑いを入れる余地がある」

«国会決議が後発事象?について

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