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腹の定まったフリのしかた

「米国の資本主義の凄さは、危機に際してのこうした自浄作用にある。資本主義の暴走に対する制御装置が働くのだ。少なくとも制御装置を働かせようという社会的な強い意志が発揮される(少なくとも制御装置が働いていると見せかけようとする)」(会計戦略の発想法 p136)

前回引用した木村剛氏の著書の一部ですが、似たような表現は別のところにもあります。

「ここで早房氏が唱えている常識を、建前論と割り切ることなく、「会計」のあり方を追求している(あるいは追求するフリを懸命にしなくてはならない)欧米諸国と、この程度の基本常識すら「常識」として普及していない日本の間には、かなりの距離感がある」(同著p64)

ここで言う「常識」とは一言で言うと粉飾決算はいけない、ということなのですが、ここでも「追求するフリを懸命にしなくてはならない」という表現が見られます。個人的には粉飾決算の誘惑という本音は日米で変わることはないと思いますので、「フリをする」という表現は実にリアルに感じます。

などと考えていたところ、当の木村氏がゴーログ(いや失礼、コラムでしたか)< CSRを語る前に、内部管理体制を整備せよ [コラム] >で、「フリをする」を以下のように使っています。

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(1) 不祥事が発覚したことに対して、当局や業界団体が、お題目ばかりの実態や実務を無視したキレイゴトのルールを策定する。
(2) 日本企業は新組織を立ち上げたりしてルールを遵守するフリをするのだが、腹の中では「人の噂も75日」を決め込む。
(3) 結局、実効性がない対応に終わるため、同様の不祥事が再び発生する。
(4) 世論の批判に迎合するかたちで、死刑宣告のような厳しい罰則ルールを導入する。
(5) ところが、現実的には厳しい罰則を適用する腹が定まっていないため、少なからぬ日本企業は再び遵守するフリをするだけに終わる。
(6) 結局、同じような不祥事が発生し、当該企業の経営者が退陣することで幕引きする。
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ここは粉飾決算に限った話ではないのすが、先ほど引用した論調と並べると、フリをすることは日本も欧米も変わらないようなので、上の論調は日本企業だけに当てはめるのは一見矛盾するようにも見えます。では、上の論調で日本と米を決定的に分けるのはどこかというと、

:腹が定まっていないため

ここですね。これは国家レベルの話になりますが、エンロン事件に端を発しそれを75日で終わらせることなく、短期でSOActを仕上げてしまい、多額の予算を割いてSECの要員を増員して、膨大な手間隙(と金)がかかる内部統制報告書を要求する。この「腹の定まったフリのしかた」には素直に感嘆してしまいます。まあこれも程度問題なので手放しで礼賛するわけではありませんが。

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