SO法と牛の全頭検査
休筆宣言しておきながら、あっさり復帰です。パソコンの修理期間中にうまく会社の代パソをせしめることができましたので。
で、本題。krpさん、Lotusさんが、コーポレートガバナンスのコストについて論じています。その中のコメント
:②(経営者:krp注)からすると「SECこそSO法の有効性についてアテストしてくれよー」と思うのではないか、という気がします。
ですが、実はSEC規則公表の際に、コストベネフィット分析は一応為されています。こちらを参照下さい。Benefitについては定性的な決まり文句が並んでいたり、Costでは会社あたり91千ドルという金額に疑問があったり、Auditorのアテストレポートの金額がコスとに含まれていなかったりと、Lotusさんが求めるアテストのレベルには程遠いかと思いますが、一応やっていることは評価してもいいかなと。
SECが規則を公表する際は、その規則のあとにこういったコストベネフィット分析が添付されているのが通例のようです(SEC規則に常に目を通しているわけではないので、絶対そうなのか、あるいは根拠法などがあるのかどうかはよく知らないのですが)。コストに見合わない規制は行わないという考えが徹底していることの現われかと思います。こういう国に、牛を全頭検査しろなどと要求するメンタリティーを理解しろなどということがそもそも無理なことなのでしょうね。
:今のSO法の妥当性はさておき、エンロンやワールドコムの事件を踏まえて、このようなスピードで企業から不満が出るほどの厳しさの法律を作るところがアメリカのすごいところだな、という点は本当に感心しています。
この点は本当に尊敬できます。目を見ては言えませんけど。
いまや竹中氏のブレーンの肩書きよりもゴーログ主催者といったほうが名が通る木村剛氏は著書「会計戦略の発想法」でこのように言っています。
「米国の資本主義の凄さは、危機に際してのこうした自浄作用にある。資本主義の暴走に対する制御装置が働くのだ。少なくとも制御装置を働かせようという社会的な強い意志が発揮される(少なくとも制御装置が働いていると見せかけようとする)」p136
このような趣旨の論調はいろいろな方の文章で見られるのですが、「見せかけようとする」という表現が独特でかつ秀逸で、かっこ内の文章があることによって説得力がかなり増しています。この「見せかけようとする」力は確かにかなり日米差があると思います。こんなことやったってしょうがないじゃないかと米国も本音では思っているのでしょうが、この「自浄作用があると見せかける」力のほうが大きいのでしょう。
とここまで書いて、これはさっきの牛の話と立場が逆なのではないか、とふと思いました。ってことは、そもそも牛肉の全頭検査による安心感のBenefitと資本市場の信頼性のBenefit計算に大きな日米差がある、ということでしょうか。
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