会計士協会 販売用不動産の監査基準厳格化 「減損会計逃れ」を防止(6/1 日経新聞)
:日本公認会計士協会(奥山章雄会長)は、企業が持つ販売用不動産の監査基準を厳しくした。従来は不動産の時価が簿価を50%以上下回った場合に限って損失処理させる対応にとどまっていたが、所有区分を固定資産から流動資産に移し変える際にも減損会計による処理手続きを新たに義務付けた。これで固定資産の減損会計逃れを狙った区分変更は事実上できなくなる。
おそらくこれは、4月上旬に出された、【監査委員会報告第69号「販売用不動産等の強制評価減の要否の判断に関する監査上の取扱い」の改正について】を指しているのかと思います。なぜこの時期に突然記事になったのかよくわかりません。
もともとこの「監査委員会報告第69号」とは、販売用不動産の価格が下落した際の扱いを定めたものです。販売用不動産ですから、不動産会社等が販売するために保有している棚卸資産としての不動産が対象です。企業会計原則には、「時価が取得原価より著しく下落したときは、回復する見込があると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額としなければならない。」ともともと書いてありますので、これをちゃんと適用しているかしっかり監査しなさいね、というのがこの報告の最初の趣旨です。
この報告後、これを適用されたらたまらんということで、時価の下落した販売用不動産を固定資産へと振替える処理が横行したようです。この振替についてもこの報告では「監査人は、販売用不動産等及び固定資産の保有目的の変更に際しては、変更時点において取締役会等によって承認された具体的かつ確実な事業計画が存在していることを確かめるとともに、その変更理由に経済的合理性があるか否かを検討する必要がある。」との歯止めを設けていますが、逆にいえば合理的理由さえ整えれば振替可能ということだったのでしょう。当時は固定資産の減損会計の導入の動きこそ見えたものの、適用はまだ先という雰囲気でしたので、とりあえず当座しのぎに固定資産に振替えることが可能であれば、評価減は免れ得たことになります。
今般固定資産に関して減損会計が適用されることになります。固定資産である不動産を棚卸資産に振替えるときは、減損損失の計上の要否を確認して、必要であれば減損損失を計上した後に振替なさいということになり、減損会計逃れを防止しようというのが今回の改訂の趣旨のようです。固定資産なら減損損失計上の必要があり、棚卸資産ならば評価減の必要がない案件というのがどれだけあるのか、私にはよくわかりませんが、振替の乱用を防止するという意味では当然の規定であると思います。ただ、減損会計強制適用までまだ間がありますので、その間に乱用される可能性はありますね。
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