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2商社が年金資産の返還

伊藤忠、年金積み立て大幅強化 141億円の返還受ける(7/14 日経)

:伊藤忠商事は13日、同社が設定する厚生年金基金などが抱える年金資産の積み立て超過部分の一部141億円を、同日付で基金などから返還を受けたと発表した。

:日本の会計基準では、年金資産の返還を受けると利益計上できる。・・・本業と関係ない年金資産の取り崩しで利益を増やせるだけに、議論を呼びそうだ。

:米国基準を採用している連結決算では、年金資産の返還などの概念がない。単体での会計処理は連結決算に影響しない。連結決算では年金資産の増加に伴って年金費用が減るだけで業績予想には折込済み。

丸紅に年金資産返還 今期積み立て超過で(7/15 日経)

:丸紅は14日、年金資産で生じた積み立て超過額の大部分の150億円を6月29日付で厚生年金基金から会社本体に現金で返還を受けたと発表した。・・・2005年3月期の単体決算で150億円の特別利益を計上する。

:米国基準を採用している連結決算への影響はなく・・・

記事を見ると、また日本の会計基準の不透明性で米国基準が健全であるかのように読み取れるのですが、必ずしもそうとは言い切れない面があります。

(なお、以下は推測です。まるで勘違いしているかもしれません)

日本基準では、「・・・年金資産が企業年金制度に係る退職給付債務を超えることとなった場合には、当該超過額を資産及び利益として認識してはならない」と規定されています(退職給付に係る会計基準注解1)。

(まず、年金上の数理債務を即時償却する場合を仮定します)
これは、どういうことかというと、例えば退職給付債務が100であるのに対して、運用がよくなって年金資産が120になったとすると、退職給付関係でネット20の資産があることになりますが、日本基準ではこの20を資産計上して、利益計上することはできません。それは「一般的に年金資産の払い戻しには制限があることから、企業への当該超過額の払戻しが行われない限り、これを利益として認識することができないこととした(退職給付に係る会計基準の設定に関する意見書 四4)」からだそうです。

逆にいえば、企業への当該超過額の払い戻しが行われれば、利益として認識することができるといえるわけで、この2社はこれに基づいて利益計上したものと思われます。

一方米国基準にはこのような制限は、なかったように記憶しています。したがって、20の資産計上がそのまま利益計上されることになります。したがって、20の利益は既に計上されており、本体に現金を返還したとしても、それにより利益計上が行われることはありません。米国基準では影響がないというのはそういう意味であると思われます。

なお、実際には数理債務は即時償却されるわけではありません。上記では20の利益計上が行われると書きましたが、実際にはその20が数年間にわたって利益計上することになるかと思います。したがって、例えば償却期間が5年である場合、最初の1年で利益計上できる金額は4となります。ここで年金資産の返還が行われた場合、日本基準では20の利益が計上されるのに対し、米国基準では4だけの計上が行われることになり、結果として米国基準の方が保守的になるのは確かです。


余剰の20の会計処理
米国基準→償却期間5年の場合、1年間に4ずつ資産計上する
日本基準→資産の返還がなされない限り資産計上はされない。

つまり、年金資産に余剰が生じた場合の会計処理については(資産の返還というイレギュラーな事象がないかぎり)むしろ、日本基準のほうが保守的であるといえるのです。この2社の事例をとって日本基準をあげつらって批判することは、あまりに一面的な見方であると思います。

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