200-400億円の利益上乗せ 石油元売り各社今期 原油在庫評価で(8/20 日経金融)
:石油元売各社の2005年3月期の連結経常利益は原油の在庫評価の影響で200-400億円程度、利益が押し上げられそうだ。原油高で期初の安値在庫を取り出すことになり、実際の原油の仕入れ価格よりも売上原価が低くなる。ただ、石油製品の一部は利幅が減少しており、利益は実態以上にかさ上げされていると言える。
:ただ、各社は「数年間の市況変動の間で相殺される損益」として、在庫評価の影響を除いた”実質経常利益”を開示している。石油製品などの販売でどれだけ利益を得たかという実力が表れることから、アナリストも重視する。
石油元売の在庫評価といえばかつては後入先出法(LIFO)が主流だったかと思います。文字通り、後から入れたものを先に出すと擬制する方法、すなわち買ったらすぐ出庫すると推定する方法であり、売上原価は時価に限りなく近いものになります。しかし、結果として残っている棚卸資産は、何十年も前に取得した価格で評価されることになります。
一般にB/Sを重視しているといわれる国際会計基準では、従来からLIFOを例外的なものと考えてきました。そして最新の改訂ではLIFOの適用は不可となりました。このような動きを踏まえ、元売各社はLIFOの適用を中止し始めました。
(別の意図があったという指摘はとりあえずおいておいて)
かわって適用されている総平均法は、期首在庫の取得価額と、期中の取得価額の平均で期末在庫の評価を行う方法です。これでは期末に原油価格が上昇すると、棚卸評価額は膨らむことになり、売上原価が減少し、損益が改善することになります。
会計基準で認められている方法であり、「かさ上げ」というのは言い過ぎのような気がしますが、一方で会社自身が「実質経常利益」なるものを開示し、受け手側のアナリストもそれを「実質」と捉えているのであれば、みなが「かさ上げ」であることを認めていることになりますね。
もっともこの「実質経常利益」の算出方法の詳細はよく分かりません。このアナリストレポートのグラフの注1を見ると、継続してLIFOで計算した結果を「実質」といっているように読めます。また昭和シェルでは「カレントコストオブサプライベース」なるものを使用しているようです。これは一応シェル本体のページに解説があるのですが、
CCS - Current cost of supply: a stock-valuing method by which stocks are valued at prevailing prices (replacement cost) to avoid gains/losses from price variability which may influence financial performance. Also known as RC: replacement cost. See also FIFO, LIFO
replacement costって、原油の場合は時価であるかと思うのですが、それでは在庫を時価で評価していることになり、avoid gains/losses from price variabilityとは成らないのではないでしょうか。なんか勘違いしていますかね?
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