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退職給付債務 割引率500社が下げ 運用好転でも慎重姿勢(8/25 日経金融)

:2004年3月期に退職給付債務の割引率を引き下げた上場企業が、全体の3分の1以上の500社強にのぼった。同期に割引率を変更した企業522社のうち大半の513社が引下げだった。前期は株高などで年金資産の運用環境が好転したが、企業の多くが長期的な運用を楽観視していないことの表れといえる。

いえ、表れとはいえません。

:割引率の引下げは退職給付債務の増加要因となる一方、運用が低迷しても企業にとっての不測の費用につながる積立不足を小さく抑えられる利点がある。運用環境が良好ななかで割引率引下げが相次いだのは業績下振れリスクを減らしたいという企業の思惑の表れともいえそうだ。

いえ、ですから表れとはいえませんて。

この記者氏、「期待収益率」と、「割引率」を完全に混同しているようです。

退職給付会計上、年金資産の予想運用益は退職給付費用から控除されることになっており、その値は期首の年金資産残高に「期待収益率」を乗じることによって求められます。「期待収益率」とは「各事業年度において、期首の年金資産について合理的に期待される収益額の当該年金資産額に対する比率をいう」とされています。要はこの1年間の運用でどれだけの利率の運用が期待できるかということです。

この「期待収益率」については、「保有している年金資産のポートフォリオ、過去の運用実績、運用方針及び市場の動向等を考慮して算定する」とされています。したがって「運用環境が好転」すれば、引き上げの検討がなされます。また、高めに設定して運用が低迷すると「企業にとっても不測の費用につながる積立不足」が増加することになります。予想値をもとに実態より高めの運用益を計上したわけですから、その分は将来の「業績下振れリスク」ということになるわけです。

一方「割引率」とは将来支払うべき年金費用の総額を現在価値に割り引くことにより退職給付債務を計算するために使用される率です。これは「安全性の高い長期の債券利回りを基礎として決定」することとされ「一定期間の債券の利回りの変動を考慮して決定することができる」と規定されています。一定期間とはおおむね5年以内をいうと定められています。
割引率が低くなると必然的に退職給付債務は増加します。歴史的低金利の中、この増加を最低限に抑えるべく、多くの企業は過去5年の平均利回りを使用し、割引率を高めに維持してきました。しかしながら、低金利がここまで長期化すると、多少最近の国債の利率が上がったからといっても、平均値を取るとむしろ金利は下がっているという状況になっています。したがって割引率を上げるなどという話は未だ検討の対象外となっているかと思います。すくなくとも「株高などで年金資産の運用環境が好転」したからといって、割引率には何の影響も及ぼしません。

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