信託拠出の年金資産 株高「返還益」計上認めず(9/7 日経)
:企業が株高で大幅な積み立て超過になった年金資産の一部を取り崩し、利益計上する会計処理が認められなくなる。日本公認会計士協会は近く、企業が信託制度を利用して年金向けに積み立てた資産の返還益を、原則認めない会計ルールの草案を公表する。2005年3月期から適用する方針。信託の活用は、退職給付会計の導入で顕在化した年金積み立て不足の解消策。安易な利益計上は企業会計の透明性を損ねると判断した。伊藤忠商事など返還益計上を決めていた企業は計画変更を迫られそうだ。
:既に伊藤忠や丸紅が2005年3月期の単体決算で、年金資産の返還に伴い,140億-150億円の特別利益をそれぞれ計上する方針を発表している。しかし、外部に積み立てた会計上の年金資産を取り崩すだけで利益計上できると、本業に関係ない部分での業績底上げが可能になる。会計士協会は決算の透明性を高めるため、返還益を認めないことにした。
日経(13版)一面に堂々と載っていました。それほどのことかという気がしないでもないですが。。。
以前こちらやこちらで取り上げた年金資産の返還にかかる利益計上のお話です。
返還された部分が利益であることは疑いないかと思います。株価が上昇して含み益が増加しただけならまだしも、返還義務のない150億円という現金が実際に入金されるのですから、これは利益が実現していると考えていいと思います。
もっとも、この利益を一時で認識するか、何年かにわたって認識するかについては確かに議論がありそうです。退職給付債務がらみのいわゆる含み損益は残存勤務年数にわたって認識するのが原則であり、この場合だけ一時的に利益認識するのは違和感があるという感覚はわからないでもありません。この場合は、おそらく現金/退職給付引当金という仕訳になります。引当金が増加するということは、未認識債務が減少するわけで、将来の負担軽減という形での利益認識となるのであろうと思われます。
とはいえ、実際に現金150億という形で入金があり、とくに使途制限がないのであれば、それを素直に一時の利益とするという考え方もあながち間違っているとは思えません。
会計士協会は2005年3月から新ルールを適用させようとしているようですが、丸紅や伊藤忠がプレスリリースをしてからルールを変更するというのはどうなのでしょうか?丸紅などが無理な解釈をしているのであれば問題ですが、屁理屈をこねているというレベルではないですし、おそらく事前に関与している会計士との相談の上決定したことであると思います。また、経営財務誌上でも利益認識可能である場合を示しています。ゲーム最中にこの技を使うと宣言したばっかりに、突然その技が反則になるのではおちおちゲームなどやってられない気がしますが。
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