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【本】裏帳簿のススメ」(岡本吏郎)

Lotus21
もてはやされる裏金・裏帳簿の落とし穴


: 「裏金・・・」「裏帳簿・・・」などの書籍が売れているそうです。早速、書店に出掛けて確認しました。要は、まじめに納税している者は愚かで、自分の会社(零細企業)を守るために所得分散などをしたほうがいい、税理士は何もわかっていない、上手に銀行融資を受けるためには裏テクニックが必要、などといった内容でした。零細企業存続のためなら「手段を選ばず」という趣旨でしょう。
 確かに、切羽詰った資金繰りという現場では、このような考えかたもあるのでしょうが、読後感はあまり良いものではありませんでした。

:ともかく、節税がもてはやされるということは、景気が回復してきている証拠です。それはそれで良いことですが、どんな手段を使っても勝てばいい、他人を欺いた方がトク、という風潮にやるせなさを感じるのは私だけではないはずです。 (Y)


私が読んだのは「裏帳簿のススメ」(岡本吏郎)のみなのですが、この本に関しては、上の趣旨とは異なることを言っているかと思います。

「裏帳簿」、「合法的裏金」などというどぎつい表現はどうかと思いますが、この本の趣旨は税務申告用に作成した損益計算書、貸借対照表は経営の役には立たない。本当に経営に活かし、本当のキャッシュの状態を示すような財務諸表を作成する必要がある、ということにあるかと思います。他人を欺こうなどとは書いておらず、至極まっとうなことを言っていると思います。

もともと、財務諸表というものは多くのステークホルダーに対しての情報提供機能を目的として作成されています。米国の、いわゆる「概念フレームワーク」と呼ばれる、FASB概念基準書第1号の24項では、財務諸表の利用者として、以下を想定しています。

出資者、与信者、仕入先、将来の投資者及び債権者、従業員、経営者、取締役、得意先、証券アナリスト及び財務アドバイザー、証券ブローカー、証券発行引受業者、証券取引所、弁護士、エコノミスト、税務当局、監督官庁、立法機関、経済新聞および報道機関、労働組合、商工団体、ビジネス調査機関、研究者、学生、その他一般大衆

このような多岐にわたる利用者のうち、「投資者および債権者ならびに彼らに助言する者」が最も重要であり、そののニーズに焦点をあわせることが、他の利用者にとっても一般的に有用であるとしています。

つまり財務諸表とは投資者のニーズに合わせた作られたものであり、他の者のニーズを必ずしも最大限満たすものではないということです。したがって、多岐なニーズに合わせるためには財務諸表がいくつも必要になるということになります。

この本では、公開会社を想定していないため、投資者の存在を前提としておらず、法的に作成義務のある財務諸表として、税務申告に必要となる財務諸表を想としています。しかしながら税務申告のニーズを満たす財務諸表は国家の税収最大化を目的としたものであり、必ずしも経営に役立たない。経営者のニーズに合わせた財務諸表、すなわち「裏帳簿」の必要性について著者は説いているわけです。

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