『だれが「本」を殺すのか』(佐野眞一)とリスク情報開示(その2)
:上場するには、東京証券取引所の審査を受けなければならないんですけど、けっこう厳しい審査だった。そのときリスク開示を求められたんです。例えば再販制(「定価」販売制度)とか委託販売制がリスクになると。
上場する際に金融庁に提出する「有価証券届出書」では、上場しようとしている企業が抱えているリスクに関する情報を記載する必要があります。
具体的には「事業の概況等に関する特別記載事項」といわれるもので、IPO用語集の言葉を借りますと、以下のように説明できます。
「事業の概況等に関する特別記載事項」のことをいい、リスク情報ともいわれる。株式を公開するにあたっては、自社の事業内容等を投資家に対して開示する必要がある。特に株式公開時に作成する有価証券届出書や公募等の勧誘に際して用いられる目論見書には「事業の概況等に関する特別記載事項(いわゆる「リスク情報」)」を記載しなければならない(平成16年7月以降は項目名が「事業等のリスク」となる)。リスク情報は、その名のとおり投資家の判断に重要な影響を及ぼすおそれのある投資上のリスクを記載したものである。なお、内閣府例の改正により、平成16年3月期決算からは有価証券報告書においても、リスク情報(「事業等のリスク」)の記載をしなければならないこととなった。
上記の通り、昨年度からは既に上場している企業が提出する「有価証券報告書」においても事業等のリスクの開示が求められています。もっとも、これについては始まったばかりなので開示内容については未だ手探りの状態が続いているようです。
角川ホールディングスの有価証券報告書では、再販制度および委託販売制度について、下記の通りリスク情報を記載しています。
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(2)再販制度について
当社グループの製作・販売している書籍、雑誌等の著作物は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(以下「独占禁止法」という)第23条の規定により、再販売価格維持契約制度(以下「再販制度」という)が認められております。
再販制度とは、一般的にはメーカーが自社の製品を販売する際に、「卸売業者がその商品を小売業者に販売する価格」「小売業者が消費者に販売する価格」を指定し、その価格(「再販売価格」という)を卸売業者、小売業者にそれぞれ強制する制度であります。独占禁止法は、再販制度を不公正な取引方法の1つであるとして原則禁止しておりますが、著作物ついては再販制度が認められております。
公正取引委員会は平成13年3月23日付け「著作物再販制度の取扱いについて」において、「競争政策の観点からは同制度を廃止し、著作物の流通において競争が促進されるべき」としながらも、「同制度の廃止について国民的合意が形成されるに至っていない」と指摘しており、当面、当該再販制度が維持されることとなっております。当該制度が廃止された場合、業界全体への影響も含め、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)委託販売制度
法的規制等には該当いたしませんが、再販制度と並んで出版業界における特殊な慣行として委託販売制度があります。委託販売制度とは、当社グループが取次及び書店に配本した出版物について、配本後、約定期間内に限り返品を受け入れることを条件とする販売制度であります。
当社グループではそのような返品による損失に備えるため、会計上、期末の売掛債権を基礎として返品見込額の売買利益相当額を、返品調整引当金として計上しております。よって、返品率等の変動により、当社グループの経営成績に影響が出る可能性があります
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