IASBとFASB 業績報告で共同組織(11/29 日経金融)
国際会計基準理事会(IASB)と米財務会計基準審議会(FASB)は企業の業績報告の枠組みを考えるため、外部の学識者などで構成する共同の助言組織を発足する 。新しい利益概念である「包括利益」などが検討項目に含まれ、日本の会計基準にも強く影響する。世界の二大会計基準を作る両機関が協調することで、会計統合論議が加速する可能性がある。
最大の焦点になっているのは「包括利益」と呼ばれる利益概念。企業の長期保有の株式の時価変動を利益に反映させる考え方で、昨年までIASBが経営の透明性が高まるとして導入を目指した経緯がある。ただ、FASBは長年使い慣れた当期利益の継続利用を崩さず、日本を含む産業界からの反発も相次いだことで、棚上げを迫られた。
2005年に欧州上場企業に強制的に適用が求められている国際財務報告基準(IFRS)。そのIFRSを設定する機関であるIASBと米国の会計基準設定機関であるFASBが共同歩調をとるというニュースです。IASBとFASBは2002年の合意以来既に共同歩調をとっており、一見とくに目新しい動きでもないように思えます。
しかしながら、業績報告に関しては米国とIFRS側ではスタンスを異にしています。上記の記事では若干不正確ですが、米国にも既に包括利益の概念はあります。しかしながら米国では従来の損益計算書のほかに包括利益計算書を作成する必要があります(双方をあわせて1つの表にすることは認められていますが)。位置付けとしては、包括利益はあくまで旧来の当期利益の補完的な使われ方をしています。一方IFRSでは従来の損益計算書での計算結果である当期利益の概念をそもそもなくしてしまい、包括利益を業績のメインの数値と位置付けようとしています。しかも旧来の損益計算書のフォーマットをドラスティックに変えるものであり、各方面からの反発も相当あったようです。当初は2005年の強制適用にあわせて新しい業績報告のフォーマットを導入するはずだったのですが、現在はまだ導入の目処は立っていません。
IASB側でも独走しすぎた反省もあり、改めて各国の代表を集めて意見集成を行おうとしているのでしょう。日本国内の財務報告に超短期に影響を与えるものではないですが、全世界的にどのような財務報告のフォーマットが望まれているかについて議論するわけですから、今後の動きに注目したいと思います。
なお、この件に関するプレスリリースはこちら。 日本からは松下電器産業の山田浩史氏、法政大学の八重倉孝教授がメンバーとなっているようです。
(written on Dec.5)
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