西武社長、東証上場廃止を謝罪――ジャスダック上場に総力
:その上で「株主の利便性と投資家保護を最優先するため、ジャスダック市場への上場申請を開始する」と述べた。「当社株を市場で取引できなくなる期間を可能な限り短縮するため、2005年3月期末までのジャスダック上場の実現を目指す。体制整備や上場申請準備に会社の総力をあげて取り組む」という。
既に旧聞に属し、さんざん語り尽くされているところではありますが。。。。。
この記事を見まして、感じたのは自分の発想の貧困さでした。東証があるならジャスダックがあるさ、このような発想は私の平凡な頭脳と常識の範囲を出ない思考法からは出てくるものではありません。この提案をした方は「世話になっている弁護士」(日経金融11/17)とのことで、この常識にとらわれない発想に感服するものであります。
と、思いきや
:「もし、ジャスダックに上場申請すると言い出したら、どう対応しよう」。西武の東証上場廃止の流れが決まった先週末、ジャスダックを運営する日本証券業界の首脳はこんな「アタマの体操」をしていた。(日経金融11/18)
とのことなので、識者には考えうるシナリオだったと言うことですね。
さて、この発表後、株価は急進したらしいですが、いろいろな意見を見る限りでは、「本末転倒」、「脱力」といった評価が一般的のようです。私個人としては、私の世代ならきっと知っている堤義明氏の名言をここに送りたいと思います。
「やりたいのなら、どうぞ」
さて、「どうぞ」とは言っても、今回赤っ恥をかかされたジャスダック側の審査が通らなければ再上場は不可能です。これについては、
ジャスダック社長「西武鉄道上場、法令違反解決が先」
西武からはジャスダック側に直接、上場意向は伝えられておらず、現時点で市場運営者として発言する立場にないと強調した上で、「証券会社や監査法人の指導のもと、会社側がコーポレートガバナンス(企業統治)や情報開示体制の課題を解決するのが先決。上場はその先の話で(年度内の上場意向の発言は)順序が逆だ」と話した。また、「上場の準備は引受証券や監査法人が進め、上場申請するかどうかは彼らが判断する」との見方を示した。
と、(私の感覚で見て)極めて常識的なことが語られています。
さて、実際の(形式的な)上場基準ですが、Grande’s Journal に詳しくまとめられています。
ただし、
:・監査意見
「直前2事業年度の監査意見を必要とし、かつ直前期は無限定適正であること」
についてですが、これについては個人の会計監査人の無限定適正意見が既に出ています。今回の訂正報告書の範囲は、あくまで監査対象外の部分であったはずなので、この無限定適正意見というのは今でも有効であると考えます。したがって(しつこいようですが、形式的には)上場申請にあたっての新任の会計監査人の新たな意見は必要ないのではないでしょうか?
ただ、実際には上場申請にあたっては、財務諸表マターについても新たにデューデリをぎりぎりやることが想定され、そういったことに今まで意見表明してきた個人の会計監査人が耐えられるかというと、実務的に困難なように思えます。
では、結局名前があがっている中央青山監査法人が2期分の財務諸表に対し意見表明をすることになるとすれば、1からの監査を2年分やって適正意見を表明するまでにどれくらいかかるかということです。私は監査実務者ではないので、見積もることは困難ですが、とてもじゃないけど2005年3月上場に間に合わすことなど無理であることは想像に難くありません。そもそも虚偽記載が原因で上場廃止となった会社の監査を引き受けること自体かなりのリスクを背負い込むことになりますので、そのリスクを治癒するためには、かなりの監査手続が必要でしょう。
事実、この件に関して西武側から中央青山に対するラブコールと、この記事に呼応した中央青山叩きはよく見かけるのですが、中央青山側の公式見解はもちろん出ていませんし、私の見る限り中央青山側に立った憶測記事すら見かけていません。
これは、上場とは関係なく、個人の会計士ではコンプライアンス上問題があるから大手監査法人に変更するという意味合いで中央青山側にオファーがあったものの、即時の上場申請の話は中央青山側にとって寝耳に水で、すったもんだしている最中であると私は憶測しているのですが、実際のところはどうなのでしょう。
(written on Nov.21)
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