欧州と会計基準共通化 日本側の対応問題多い(12/9 日経金融)
国際会計基準を作る国際会計基準理事会(IASB)の上部組織である評議委員会の田近耕次氏(監査法人トーマツの元会長)が今月末で2000年5月から努めている評議委員の任期を終える。国際基準と同等の水準と認められない限り、欧州連合(EU)は域内で日本基準の利用を認められなくなる。国際会計基準と日本のかかわり方などについて聞いた。
「日本はEUとの間で、基準を認め合う『相互承認』をしようと共通化の論議に手を挙げた。しかし、日本側の対応は問題ばかりだ。企業の合併・買収(M&A)会計など主要なテーマにはなかなか手をつけようとしない。自分の主張は譲ろうとせずに、共通化論議のテーブルにつく形だけつくろうとしている。」
「日本のように、自分の都合で線引きするようでは議論は進まない。国際基準と米基準は徹底的に共通化する方向で動いている。日本は国際ルールから外れるばかりで先行きが本当に心配だ。本気で共通化する意思があるのかないのか、二者択一を迫られる場面があるだろう。」
「日本経団連の姿勢にも失望している。IASB側の提案に反対論ばかり唱えている。IASBの運営費の一部を負担していることを交渉材料にするのだとしたら、残念でならない。評議委のなかには『日本は違う世界』という印象が強まっている。日本でも米基準を利用している企業は多く、産業界全体が基準の共通化に反対しているとは思わない。」
ちょっと引用が長くなってしまいましたが、IASBの評議委員会の日本代表が、かなり辛辣に吼えています。国際会計基準の動向の現場にいらっしゃる方の話ですから真摯に受け止めるべきなのでしょうが、いまいち納得行かない部分があります。
まず、「主要なテーマにはなかなか手をつけようとしない」とのことですが、この手の共通化議論の場合、まずやりやすいところから手をつけていくのはある意味当然の手法だと思います。事実、米国会計基準と国際会計基準が統一の方向で動いていることは事実ですが、その方向を宣言したノーウォーク合意は2002年。それから2年経っていますが、統合のアウトプットは確かにいくつか出ています。しかしながら、その内容は言葉尻の統一といったイメージのものが多く、本格的な統合はまだまだこれからといったところ。
まして、日本基準の場合はさらに差が大きいわけで、それを統合しようとするのは膨大な作業です。 確かに形作りの面は多分にあるでしょうが(と、以前も私が書きましたが)とにかくやれることからやっていく姿勢を評価すべきであると思います。
また「自分の主張は譲ろうとせず」といいますが、国際協議に自分の主張をもっていくのは当然のことであるかと思います。事実IASでの金融商品会計基準の最近の議論では最強硬のフランスの意向を無視できない状態になっていますし、業績報告、いわゆる包括利益プロジェクトでは、多数の国の反対の末早急な導入は見送られています。もちろん何でも反対では見放されるでしょうが、譲るべきところと譲れないところを明確にしていくことは必要でしょうし、そのためにもまずやれることからやっていくべきであると思います。
そして、「米基準を利用している企業」がIASBとの共通化に反対していないというのは、短絡的な議論かと思います。米国がIASBと統合の方向は合意しながらも、まだそれが達成できたわけではないですし、また米国基準の策定については日本企業は口を出せませんが、IASBに対しては意見表明の場があるわけですから、どんどん言いたいことは言っていくべきであると考えますし、「運営費の一部を負担」は当然そういった面も含んでいるのですから。
(written on Dec.12)
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