« August 15, 2004 - August 21, 2004 | Main | August 29, 2004 - September 4, 2004 »

生協の出資金

以前のエントリで、IFRIC が協同組合の出資金の取り扱いについての公開草案を公表したしたことを書きました。そのなかで例として、生協の出資金を取り上げましたが、事実生協がこの取り扱いについて検討をしているという記事を見かけました。

古時計日記・ブログ版
:ブログ版のネタとしては重めでふさわしくないかもしれない
が,本家サイトで取り上げるような分量にはならないので,
こちらに書いておく。生活協同組合,すなわち生協が国際会
計基準(IAS)の基準変更に揺れているという。


:IASの新基準では出資金について,償還に制限や特別な条
件が付与されていても,約束がされていれば資本の部に整理
するのではなく,すべて負債の部に整理すると定義された。
(中略)

:日本でIASを採用しているのはごく一部のマニア企業だけ
であって,良くてもFAS基準。もっとも,FASとIAS
を統合する動きが加速していることもあって今後IASが事
実上の標準となる可能性は高い。だからといって,日本国内
にとどまる企業や団体がIASに気を取られる必要はないだ
ろう。

私も日本にはほとんど関係ない会計基準であると思っていただけに、生協が実際この基準を検討しているというのは正直驚きでした。

こと生協に関してはここで述べられている通りかと思います。生協はグローバルに資金調達をするわけではありませんし、出資者にしても神奈川生協と米国の生協の財務諸表を見比べて出資を検討するというわけではありませんので、出資者側から見ると国際会計基準の動向を気にする必要はないかと思います。

ただし、取引先や銀行のような債権者から見た場合、上場している小売企業との財務体質を比較したいというニーズは確かにあるのかもしれません。そのニーズを考えると、国際会計基準の動向は全く無視できないのかなという気もします。そういう意味では、この会計基準(まだ公開草案の段階ですが)は生協という組織がかかえる問題点を突きつけたものであると言えるのかもしれません。

(参考)東大生協の財務書類

| | Comments (0) | TrackBack (0)

退職給付債務 割引率500社が下げ 運用好転でも慎重姿勢(8/25 日経金融)

:2004年3月期に退職給付債務の割引率を引き下げた上場企業が、全体の3分の1以上の500社強にのぼった。同期に割引率を変更した企業522社のうち大半の513社が引下げだった。前期は株高などで年金資産の運用環境が好転したが、企業の多くが長期的な運用を楽観視していないことの表れといえる。

いえ、表れとはいえません。

:割引率の引下げは退職給付債務の増加要因となる一方、運用が低迷しても企業にとっての不測の費用につながる積立不足を小さく抑えられる利点がある。運用環境が良好ななかで割引率引下げが相次いだのは業績下振れリスクを減らしたいという企業の思惑の表れともいえそうだ。

いえ、ですから表れとはいえませんて。

この記者氏、「期待収益率」と、「割引率」を完全に混同しているようです。

退職給付会計上、年金資産の予想運用益は退職給付費用から控除されることになっており、その値は期首の年金資産残高に「期待収益率」を乗じることによって求められます。「期待収益率」とは「各事業年度において、期首の年金資産について合理的に期待される収益額の当該年金資産額に対する比率をいう」とされています。要はこの1年間の運用でどれだけの利率の運用が期待できるかということです。

この「期待収益率」については、「保有している年金資産のポートフォリオ、過去の運用実績、運用方針及び市場の動向等を考慮して算定する」とされています。したがって「運用環境が好転」すれば、引き上げの検討がなされます。また、高めに設定して運用が低迷すると「企業にとっても不測の費用につながる積立不足」が増加することになります。予想値をもとに実態より高めの運用益を計上したわけですから、その分は将来の「業績下振れリスク」ということになるわけです。

一方「割引率」とは将来支払うべき年金費用の総額を現在価値に割り引くことにより退職給付債務を計算するために使用される率です。これは「安全性の高い長期の債券利回りを基礎として決定」することとされ「一定期間の債券の利回りの変動を考慮して決定することができる」と規定されています。一定期間とはおおむね5年以内をいうと定められています。
割引率が低くなると必然的に退職給付債務は増加します。歴史的低金利の中、この増加を最低限に抑えるべく、多くの企業は過去5年の平均利回りを使用し、割引率を高めに維持してきました。しかしながら、低金利がここまで長期化すると、多少最近の国債の利率が上がったからといっても、平均値を取るとむしろ金利は下がっているという状況になっています。したがって割引率を上げるなどという話は未だ検討の対象外となっているかと思います。すくなくとも「株高などで年金資産の運用環境が好転」したからといって、割引率には何の影響も及ぼしません。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

米企業改革法でコストアップ 監査報酬、9社で最大 ソニー最多35億円(8/24 日経金融)

:ニューヨーク証券取引所に上場する主な日本企業が2003年度に監査法人に支払った監査報酬を調べたところ15社中9社が前年度に比べ増えた。財務サービスなどを含む監査報酬総額ではソニーやトヨタ自動車など6社が10億円を超えた。米国では2001年のエンロン事件以降、上場企業の監査に対する政府や市場の視線が一段と厳格になり、日本企業も監査などに多額のコストをかけている実態が浮き彫りになった。

:日本公認会計士協会が、証券取引法に基づく監査を受けた企業3300社を調査したところ、2002年度の監査報酬額は平均2013万円だった。米国と日本では企業規模や集計範囲などに違いがあるものの、日本企業の監査報酬は全体として米国より低い水準に止まっている。

「ニューヨークに上場するような日本企業」の平均と単なる日本企業の平均を比較するのはあまりに乱暴であるとは思いますが、そういったところを大幅に割り引いたとしても、監査報酬の水準が低いことは事実であるかと思います。

日本の監査報酬については、前にも何回か書いたかと思いますので、今回は置いておきます。今回は各社の開示を備忘録的に書いておきます。(表は一部フォーマットを変更しています)

ソニー
March 31, 2004.

Yen in millions     2003    2004

Audit Fees      1,690 2,118
Audit-Related Fees(1) 38   284
Tax Fees(2)        822 970
All Other Fees(3)    1,925 150
--------------------------------------------------------------------------------
4,475 3,522


トヨタ

2004 2003
Audit Fees (1)      1,606 1,284
Audit-related Fees (2) 407 64
Tax Fees (3)       768 621
All Other Fees (4) 97 696
Total 2,878 2,665


どちらもコンサルティングフィーが激減しているかと思ったら、PWCがコンサル部門をIBMに売ったことが原因のようです。

オリックス
FEES PAID TO PRINCIPAL ACCOUNTANT

AUDIT FEES

In fiscal 2003, our auditors (including Japanese and overseas affiliates of KPMG AZSA & Co. (Formerly Asahi & Co)) billed us ¥528 million for direct audit fees. In fiscal 2004, our auditors billed us ¥522 million for direct audit fees.

AUDIT-RELATED FEES

In fiscal 2003, our auditors billed us ¥43 million for audit-related services, including services related to due diligence. In fiscal 2004, our auditors billed us ¥62 million for audit-related services, including services related to due diligence.


TAX FEES

In fiscal 2003, our auditors billed us ¥80 million for tax-related services, including tax compliance and tax advice. In fiscal 2004, our auditors billed us ¥62 million for tax-related services, including tax compliance, and tax advice.

ALL OTHER FEES

In fiscal 2003, our auditors billed us ¥19 million for other products and services which included primarily consulting services. In fiscal 2004, our auditors billed us ¥1 million for other products and services which included primarily consulting services.

| | Comments (0) | TrackBack (0)

200-400億円の利益上乗せ 石油元売り各社今期 原油在庫評価で(8/20 日経金融)

:石油元売各社の2005年3月期の連結経常利益は原油の在庫評価の影響で200-400億円程度、利益が押し上げられそうだ。原油高で期初の安値在庫を取り出すことになり、実際の原油の仕入れ価格よりも売上原価が低くなる。ただ、石油製品の一部は利幅が減少しており、利益は実態以上にかさ上げされていると言える。

:ただ、各社は「数年間の市況変動の間で相殺される損益」として、在庫評価の影響を除いた”実質経常利益”を開示している。石油製品などの販売でどれだけ利益を得たかという実力が表れることから、アナリストも重視する。

石油元売の在庫評価といえばかつては後入先出法(LIFO)が主流だったかと思います。文字通り、後から入れたものを先に出すと擬制する方法、すなわち買ったらすぐ出庫すると推定する方法であり、売上原価は時価に限りなく近いものになります。しかし、結果として残っている棚卸資産は、何十年も前に取得した価格で評価されることになります。

一般にB/Sを重視しているといわれる国際会計基準では、従来からLIFOを例外的なものと考えてきました。そして最新の改訂ではLIFOの適用は不可となりました。このような動きを踏まえ、元売各社はLIFOの適用を中止し始めました。

別の意図があったという指摘はとりあえずおいておいて)

かわって適用されている総平均法は、期首在庫の取得価額と、期中の取得価額の平均で期末在庫の評価を行う方法です。これでは期末に原油価格が上昇すると、棚卸評価額は膨らむことになり、売上原価が減少し、損益が改善することになります。

会計基準で認められている方法であり、「かさ上げ」というのは言い過ぎのような気がしますが、一方で会社自身が「実質経常利益」なるものを開示し、受け手側のアナリストもそれを「実質」と捉えているのであれば、みなが「かさ上げ」であることを認めていることになりますね。

もっともこの「実質経常利益」の算出方法の詳細はよく分かりません。このアナリストレポートのグラフの注1を見ると、継続してLIFOで計算した結果を「実質」といっているように読めます。また昭和シェルでは「カレントコストオブサプライベース」なるものを使用しているようです。これは一応シェル本体のページに解説があるのですが、

CCS - Current cost of supply: a stock-valuing method by which stocks are valued at prevailing prices (replacement cost) to avoid gains/losses from price variability which may influence financial performance. Also known as RC: replacement cost. See also FIFO, LIFO

replacement costって、原油の場合は時価であるかと思うのですが、それでは在庫を時価で評価していることになり、avoid gains/losses from price variabilityとは成らないのではないでしょうか。なんか勘違いしていますかね?

| | Comments (0) | TrackBack (0)

「金融監督庁からの緊急通達」と題するダイレクトメールを受け取った方はご注意下さい。

16.8.12 「金融監督庁からの緊急通達」と題するダイレクトメールを受け取った方はご注意下さい。

「金融監督庁」ってのがなんとも。。。。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« August 15, 2004 - August 21, 2004 | Main | August 29, 2004 - September 4, 2004 »