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開示資料よどこへ行く?(2)

改めて、

企業統治 チェック厳しく 金融庁3年後にも新ルール(6/2 日経)

不正対策は十分か。経営統合の決断で適正な手順を踏んだか、経費をきちんと管理しているか--- ガバナンス(企業統治)へのチェックを強めるため、金融庁がルール作りを進めている。西武鉄道やカネボウの不祥事を受けた動きで、財務に影響を及ぼす経営上の課題について監査法人が幅広く点検する仕組みを導入する。最短で三年後には上場企業に新ルールが適用される見通しだ。

まず、「経営上の課題」を「監査法人が幅広く点検」するという記載がすごい。あたかも監査法人がマッキンゼーややボストンコンサルティングにとってかわるような表現。これは完全にAuditを超えてConsultingの世界ですので、独立性の要件が損なわれてしまいます。

この記事は、おそらく内部統制監査について記載したものと思われます。内部統制監査は「企業が財務諸表を作成する手続きが適正に行われているか」をチェックするものです。経営課題をチェックしたり、コーポレートガバナンスの適正性を検討したりすることも確かに内部統制の一分野ではあるかもしれませんが、今回導入しようとしているのは(そして米国のSOX法で規定しているのは)あくまで、財務諸表を作成する手続きに関してのチェックです。内部統制監査の基準については、現在企業会計審議会で審議中ですが、審議で使用している素案が公表されています。それによると、経営者は「財務報告に係る内部統制の有効性を自ら評価」し、監査人は「経営者が行った財務報告に係る内部統制の有効性の評価結果が適正であるかどうかについて・・・意見を表明することにある」とのことです。まず、経営者が財務諸表を作成する上での手続きがしっかりしているかを評価し、その評価に対して監査人が意見を述べるという形式をとることになります。

あくまで監査人の職務は「企業が出してきたもの(通常は財務諸表、この場合は内部統制報告書?)」について、意見を述べることにあるわけで、経営上の課題にあれこれ口を出すかのような表現は誤解のもとです。監査人はそのような訓練・教育を受けていませんし、世間もそこまでは求めていないかと思います。

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