« May 2005 | Main | July 2005 »

国税庁が達成すべき目標に対する実績の評価に関する実施計画

平成17事務年度 国税庁が達成すべき目標に対する実績の評価に関する実施計画

国税庁が達成すべき目標に対する実績の評価は、中央省庁等改革基本法第16条第6項第2号において「府省の長は、‥‥‥‥(中略)‥‥‥‥実施庁が達成すべき目標を設定し、その目標に対する実績を評価して公表すること。」とされていることから、財務大臣が行っています。今般、国税庁が7月からの新しい事務年度を迎えるに当たり、「平成17事務年度 国税庁が達成すべき目標に対する実績の評価に関する実施計画」(以下「実施計画」といいます。)を策定しましたので公表いたします。

「国税庁が達成すべき目標」などというから、てっきり、TDK申告漏れ213億円・東京国税局や、ソニー、海外子会社との取引で214億円申告漏れ指摘のように、訴訟リスク覚悟の上でノルマを達成するために当局が喧嘩せざるを得ない・・・というような姿をとっさにイメージしたのですが、どうもそうではないようで、もっと大きな話として国税庁としての政策目標を3つの実績目標とそれにぶら下がるいくつかの指標に分けて管理して行こうという話のようです。以前からやっているのですね。不勉強ながらまったく存じませんでした。

もう少し詳細を見ていくと、実績目標、業績目標、業績指標、参考・モニタリング指標など、似たような言葉が頻出していて若干構成がわかりにくいきらいがあるのですが、おおむね以下の通りのようです。

まず実績目標が以下の3点

実績目標1 内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収
実績目標2 酒類業の健全な発達の促進
実績目標3 税理士業務の適正な運営の確保

業績目標とは、上の実績目標をブレークダウンしたものにあたり、11点あります。

業績目標1-1-1

租税の役割、納税意識の重要性や税務行政について、広く国民各層から理解・協力を求めます。また、国民の意見・要望等を聴取し事務の改善に努めます。

業績目標1-1-2
納税者の視点に立った適切な情報の提供に努めます。また、問い合わせや相談に対して迅速かつ的確な対応に努めます。

(長いので中略)

業績目標2-1

消費者の視点に立ち、酒類製造業者及び販売業者の活性化に向けた諸施策に取り組んでいきます。

業績目標2-2

未成年者飲酒防止等の社会的要請、酒類業界を取り巻く環境の変化に対応した行政を推進します。

業績目標2-3

酒類の製造及び販売業免許について、酒税法その他関係法令を適正に適用し迅速な処理に努めます。

とまあ、ここまでが定性的な表現。未成年飲酒防止とかまで国税庁のミッションとなっているのかどうかはよくわかりませんが、そうだとすればそのミッションは果たされていない、というかまさにmission impossibleそのものかとも思えます。

そして、以下の業績指標、参考・モニタリングが定量的な指標となります。

業績指標とは「客観的に測定可能な定量的・定性的な指標として、目標の達成度を測定するために設定される指標」とのことで、要はこの指標により目標の達成/未達が決まるということのようで、20項目が指定されています。

1-1 KSKシステムの一部オープンシステム化の開発・運用
1-2 国税の広聴活動に関する評価
1-3 租税教育に関する評価
1-4 苦情の3日以内の処理件数割合
1-5 来署納税者の好感度
1-6 国税の広報に関する評価
1-7 国税庁ホームページへのアクセス件数
1-8 税務相談室における面接相談の満足度
1-9 税務相談室における電話相談の満足度
1-10 e-Taxの利用満足度
1-11 国税庁ホームページ「確定申告書等作成コーナー」へのアクセス件数
1-12 国税庁ホームページ「確定申告書等作成コーナー」の利用満足度
1-13 「更正の請求」の3か月以内の処理件数割合
1-14 所得税還付金の6週間以内の処理件数割合
1-15 納税証明書の15分以内の発行割合
1-16 「異議申立て」の3か月以内の処理件数割合
1-17 「審査請求」の1年以内の処理件数割合
2-1 酒類自動販売機(従来型機)の設置状況
2-2 酒類の製造及び販売業免許の標準処理期間内の処理件数割合
3-1 税理士会への説明会等の評価

租税関係については①アンケートによる好感度調査、②サイトへのアクセス件数、③納期短縮 におおむね分類されるかと思います。

来署納税者の好感度はおおむね8割前後で推移しており、接客態度はなかなかの評価を上げている模様。できれば今度は、被調査会社に対して調査官の好感度をアンケートしていただきたい。気の小さいやつを怒鳴り飛ばすなとか、くぁwせdrftgyふじこlpな!とか、うむ、考えてみればアンケートになど書けないな、そんなこと。

それよりやはり、どうも気になるのは酒税関係のところ。「酒類自動販売機(従来型機)の設置状況」?従来型機とは、「未成年者のアクセスの防止が可能となるよう技術的改良がなされた酒類自動販売機以外の酒類自動販売機」だそうだ。酒を自動販売機で買わなくなってからかなりの年月がたちますが、最近は身分証明がないと自動販売機では酒が買えなくなってしまっているのでしょうか?いやそうだとしても、自動販売機を置くような昔ながらの酒屋はどんどん姿を消していき、24時間営業の酒類販売可能なコンビニとなってきており、自動販売機の数自体指標としてどうなのか?という疑問があります。

またそんなものをそもそも国税庁が先頭になって指導すべきなのか?やはり気になるのであります。

| | Comments (4) | TrackBack (0)

公認会計士・監査法人の社会的使命の遂行に必要な環境整備について(会計制度監視機構)

てなわけで、読ませていただきました。

公認会計士・監査法人の社会的使命の遂行に必要な環境整備について

読んでみた感想ですが・・・、まあ、突拍子もないことは言っていない反面、あまり新味がないな、というのが正直な感想。

提言1は、結局会計士一人一人の質を上げましょうというところに尽きるわけであり、反対する道理がないような提言ですし、提言3の組織形態の見直しについても常々言われてきたこと。LLCが法的に設立可能になれば、当然俎上にあがってくる話でしょう。

提言2も、言い古されていながら、クライアント(って私たちですが)との利害対立となるところです。ただ、米国について言わせていただければ、私のような者でも合格するような試験を通ってきた人たちの$/時間が本当に質に見合ったものなのか、そして日本と比較にならない訴訟リスクを抱える米国と監査報酬を単純比較していいのか、という辺りを今後検討していただければありがたいです(提言は「欧米」になっていますが、「欧」の監査事情はよく存じませんので、もっぱら米国につき述べさせていただきました。

ちなみに、今日機構のサイトを見たところ更新されており、経営会計士の資格認定試験を行うようです。  「企業経営に参画的な役割を果たす人のための会計」とのことです。私にゃ関係ないですが(笑)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

会計制度監視機構よりコメント

以前「会計制度監視機構 監査の質向上へ提言(6/7 日経金融)」の中で、

アピールする場なのであれば、ぜひ提言の全文をweb上で公開していただきたいですね。

と記述したのに対し、有限責任中間法人会計制度監視機構事務局殿よりコメントが届きました。

弊機構について取り上げていただきまして、ありがとうございます。弊機構のURLをご案内いたします。
今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。

http://www.aob-jimu.jp/

とのことです。

こちらこそ、ご回答いただきありがとうございました。

この機構、メンバーを見ますと、加古先生、平松先生、若杉先生といった企業会計審議会の常連メンバー、森重委員長は確か旧センチュリー監査法人のトップ、渡辺先生は確か野村證券出身、そして木村剛さん、斎藤産業再生機構社長、斎藤TAC社長といった実業界の方というバランスをとっているようです。
野村先生という方は失礼ながら存じ上げなかったのですが、商法ご専門のようです)。

で、提言の内容ですが・・・

すみません、夜中ですので日を改めて読まさせていただきます。
(また宿題がたまっていく・・・)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

さらに恥ずかしい報告

映画「HITCH」(邦題:最後の恋のはじめ方)を見てまいりました。

が、

劇中、さえない男の代表として出てくる男が使用しているマグカップに
AICPA(American Institute of Certified Public Accountants)のロゴが・・・


_| ̄|○



まあ、その彼も電車男も、ハッピーエンドですからいいんですけどねぇ・・・

| | Comments (2) | TrackBack (0)

新聞小説の恐怖と戦う日々~大崎善生(6/24 日経夕刊)

新聞小説を始めることになった

それは結構。現某紙連載の老害垂れ流し小説など蹴散らしていただきたい。きっと他紙なんでしょうけど。

それよりも、
ともかく、何であれ、何はともあれ、頑張ろう。秋に生まれてくる予定の、子供のためにも。

って、ことは、高橋和さん、おめでたですか!?
そんな報道聞いたことがなかったんですが・・・

とにかく、おめでとうございます。
秋というのがいつか分かりませんが、電撃的引退の時には既に分かっていたのでしょうか?

引退の時には、子供に対する普及に努めたいようなことをおっしゃっていたかと思うのですが、これにご自分のお子さんが加われば、それはすばらしいことかと思います。

これからも大変でしょうが、ぜひいつの日かまた将棋祭り等、ファンの前に姿をあらわすようになってください。
ご無事な出産をお祈りしております。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

FASB Issues Accounting Standard That Improves the Reporting of Accounting Changes as Part of Convergence Effort with IASB

FASB Issues Accounting Standard That Improves the Reporting of Accounting Changes as Part of Convergence Effort with IASB


The Financial Accounting Standards Board (FASB) has issued Statement No. 154, Accounting Changes and Error Corrections, a replacement of APB Opinion No. 20 and FASB Statement No. 3. The Statement applies to all voluntary changes in accounting principle, and changes the requirements for accounting for and reporting of a change in accounting principle.

Statement 154 requires retrospective application to prior periods’ financial statements of a voluntary change in accounting principle unless it is impracticable. Opinion 20 previously required that most voluntary changes in accounting principle be recognized by including in net income of the period of the change the cumulative effect of changing to the new accounting principle. Statement 154 improves financial reporting because its requirements enhance the consistency of financial information between periods.

USCPA試験頻出(私の当時ですが)の「会計処理の変更」に関する扱いに関して、取り扱いが変わるようです。

従来の会計処理は、三浦CPA officeのページに詳しく書いてあります。会計処理の変更によるインパクトは

会計処理変更による期首のR/Eの影響額を(Net of Taxで)P/Lの一区分として当期の利益に加減します。(例え変更が期中に行われたとしても期首の影響額がCumulative effectとなります) P/Lの表示位置は"Extraordinary items"の後になる。

と書いてあります通り、一部の例外を除いて、影響額をP/Lの一項目として記載し、その影響を当期の損益として一括で計上する扱いが採られていました。

上記一部の例外とは、工事完成基準と工事進行基準間の変更、棚卸評価計算をLIFO(後入先出法)からそれ以外の方法に変更する場合などで、過去の財務諸表を遡及して変更し、当期の財務諸表は期首の剰余金を変更するという扱いでした。

今回、国際会計基準との収斂(コンバージェンス)を目指す上で、米国側が歩み寄り、取り扱いを変更することになりました。それは、いままで例外的な扱いであったものを原則的な扱いにするということです。今後はどのような会計処理の変更でも原則として過去の財務諸表から遡及修正することになります(但し、会計基準の変更によるもので、その変更後の会計基準に別途の定めがあるような場合は除くようですが)

2005年12月から適用とのことなので、受験生の方は要注意です、もっとも基準が簡単になるので、受験にとっては朗報でしょう。

一方、実務家としては、この処理はかなりの力作業を強いるもので、また難題が増えたと言うことになるでしょう。いろいろな開示資料で10年間の損益など開示している場合がありますので、この遡及修正にはかなり頭を悩ませるのではないでしょうか。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

恥ずかしい報告

_| ̄|○

映画 「電車男」 見に行ってしまいました・・・

_| ̄|○

しかも、「ほろっ」としてしまいました・・・

_| ̄|○

でも、一番恥ずかしかったのは・・・・

冒頭電車男が履いていた靴が、普段私が休日に履いている靴とそっくり・・・

_| ̄|○

| | Comments (5) | TrackBack (0)

【読書】僕のなかの壊れていない部分

18日のエントリどおり、週末は引きこもり状態だったわけなのですが、そんな中呼んでいたのがこちら

白石一文さんの小説は読んでていつも疲労感を覚える。「一瞬の光」然り、「すぐそばの彼方」然り。(「不自由な心」は短編集なのでそれほどでもないが・・・)。

出てくる主人公がみんな「疲れる」人物なのである。頭脳明晰のエリート中のエリートで、偏屈者で、時として暴力的で、なんだかんだ理屈をつけて他人を見下すことにより自らのプライドを守っている、それでいてなぜか女性にはもてる(ここが一番腹立つ)。

そして、もっと疲れるのが、その疲れる人物の中に、自分の片鱗が投影できること。

もちろん、彼らほど頭脳明晰ではないし、エリートなんてとんでもない。多少偏屈かもしれないが彼らほどとは思っていないし、精神的には多少暴力的かもしれないが肉体がついていっていない、彼らほど理屈っぽくなければ、プライドも高くない(つもり)。そして、何よりも(以下ry)。冷静に考えれば、彼らと性格や境遇が似ているわけではない。

でも、なんというか、自分の性格のレーダーチャートがあるとすれば、その頂点をさらに限界まで引き伸ばせばこんな感じになるのかなと。自分をデフォルメした姿が見てるようなのが実にこう、鬱なのだ。

白石さんの小説の書評を見ると、主人公に全然共感できない、というのを散見する(心なしか女性が多いような・・・確かに男性優位的な表現が垣間見えることがある)。私とて共感のレベルにあるわけではないが、なんとなく心境は理解できている気がする(事実彼の小説を4冊も読んでいるわけですし・・・文庫だけですが)。うーむ、私も周りからあんな偏屈屋に見られているのだろうか。それは由々しき事態だ。

そんな彼、今回の主人公「僕」もほとんど壊れている状態から「壊れていない部分」をなんとか残せそうな希望が見えてきたところでこの小説は終わるわけです。結局最後まで壊れなかったのは、人とのつながりのおかげ。

思えば、最近はそのつながりに自分が感謝することが、かなり少なくなっているような気がします。感謝を忘れると本当に全て壊れてしまうことになるのでしょう。いろいろ自戒させてくれる一冊でした。だから疲れるんですけどね。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

ひねもすのたりのたりかな

うーむ。土日のネタがない(笑)

もともとこのブログは全然会計ネタではないところから始まって、てきとーなことを書いて行こうと思っていたのですが、てきとーなことを書いているブログはいっぱいあるし、てきとーなことを私以上に面白く書ける人間はごまんといる、てなわけで多少の差別化をしようと思い、平日には会計ネタを書き始めることにしたわけですよ。で、休日にはてきとーなことを書き続けようかと。どうせ少ししたら、この手のネタを書き始める人が続出するであろうから、早く始めたことだけをとりえにしようと思って。1年以上たったけど、会計関係のブログは予想したほどは増えていない(知らないだけかも)。まだ多少の差別化はできているか。

しかしながら、最近平日に肩の力を入れすぎたせいか、土日に肩の力を抜いててきとーな文章を書こうとするとこれが書けない。肩の力が抜けすぎて文章を書こうという気にいたらない。ついに罹ってしまったか、燃え尽き症候群(1年遅いって、しかもそんな人気ブログじゃないし・・・)。

あまたのビジネス系ブログ。中身の濃いブログは、オフタイムの文章もうまい。さすが。こういうことのバランスのとり方は見習わねば。

最近出向して、通勤時間、勤務時間とも若干短くなり、平日の睡眠時間は確実に増えています。それでも土日が妙に眠い。ブログに限らず、最近は土日引きこもり状態。

確かに、最近は午前中子供の勉強を見てやることになっているので、午前中疲れるのも事実。動けるのは午後からだし、午後になると子供はさっさと友達と遊びに行ってしまうし、かみさんの買い物に付き合ってもしょうがないか、って感じの消極的引きこもり。

とはいえ、出向直前は土日どちらか出勤することが多かっただけに、土日引きこもれるのはそれはそれで幸せなことなのかなと思ってみたり。うん、きっとそうなのだ。しばらくは無理に遊ばず、無理に学ばず、心と体の命ずるままに休日を過ごそう。そうしよう。

というわけで、こんなどうでもいいてきとーな文章を書きたかったということで。あーすっきりした。

 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

国際会計基準 欧州に浸透

朝一ですが、この表現は見逃せない。

国際会計基準 欧州に浸透

国際会計基準(IAS)が今年1月から欧州企業に義務付けられ、株価や企業経営に影響を与える例が目立ち始めた。従来の各国基準とコストや負債の考え方が異なるため、利益など企業業績が変わり、株価が乱高下するケースも相次いでいる。ただ、市場の透明性向上で欧州株式市場にはプラスの効果も出ている。

 <以下Webになし>
英通信大手ボーダフォン・グループはIASによる前中間期の業績を開示。英国基準では大幅な赤字だったが、45億ポンドの黒字となった。企業買収にからむのれん代の処理を減損会計に一本化し、利益操作につながりかねない毎期の償却を廃止したからだ。IAS導入は、「買収に積極的な企業では利益の押し上げ要因になっている」(投資銀行UBS)という。

「企業買収にからむのれん代の処理を減損会計に一本化し、利益操作につながりかねない毎期の償却を廃止したからだ。」って、それは偏見。確かに償却した場合、償却年数の設定で利益は変わりようがありますが、反面いったん決めてしまえば、恣意的操作はしにくくなります。

一方、減損会計のほうは所詮将来のキャッシュフローというきわめてあやふやなもの基準に判定しますので、前提の設定次第で、金額が大きく変わり、また認識時期についても大きく変化します。

「買収に積極的な企業では利益の押し上げ要因になっている」、だからこそ、三木谷楽天社長が賛成しているのです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

産業構造審議会新成長政策部会

産業構造審議会新成長政策部会
経営・知的資産小委員会中間報告書(案)の公表について

産業構造審議会新成長部会経営・知的資産小委員会(委員長:池島政広 亜細亜大学・亜細亜大学短期大学部学長)では、本年2月から、人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク、ブランド等の財務諸表上には現れてこない「知的資産」を活用した経営の意義と現状の整理、今後それを促進していくための方策について(とりわけ開示のメカニズムを中心に)検討を行ってきた。これまでの小委員会での検討の結果を中間報告書(案)として取りまとめ、パブリックコメントに付することとなった。

47thさんの記事で紹介されていた報告書です(あちらの更新ペースが速く、はるか下のほうへ行ってしまいましたが・・・)。47thさんは、「 いかん、揚げ足どりばっか・・・」と、揚げ足取りを厳に謹んでいらっしゃるようなので、大部分が揚げ足取りで構成されている当ブログにおいて取り上げてみようかと思います。

まず、本筋とは関係ないのかもしれませんが、気になったのが以下の部分ですね。

個々の企業レベルにおいて、こうした「知的資産」が適正に認識され、管理され、経営戦略の中に組み込まれることによって、本当の意味で「選択と集中」が可能となり、企業において、ひいては経済全体として、限られた資源が有効活用されることとなるから、企業における知的資産経営が推奨されるべき。

とありますが、この「選択と集中」、この報告書上ではひとつのキーワードのように使われていますが、いつからそんな絶対善みたいな価値になったのでしょうか?確かに今流行のキーワードのひとつではあるかもしれませんが、それを役所が未来永劫正しいように扱うのはどうかと。

例えば「ペンタゴン経営」などという言葉がもてはやされていたのは、そんなに昔の話ではないような気がします(といった時点で年齢がばれますが)。この選択と集中をキーポイントとした指標を公開するという施策は、あたかも20年前に「各社のペンタゴン経営度を開示しなさい」という施策を行うことと同じような違和感を覚えます。

また、そもそもこの報告書は誰向けに作られるのでしょうか。この点に関しては、

 企業が持続的成長・発展を重視した知的資産経営を行ったとしても、その価値観や行動が市場をはじめとするステークホルダーによって共有され、評価されなければ、企業の自主的な行動は続かない。このため企業の知的資産経営を市場等のステークホルダーあるいは社会全体が理解し、適正に評価して、企業の経済的価値に反映されるようになることが必要である。

このような問いを投げかけた場合、「ステークホルダー」という非常に便利な言葉を使ってその点は煙に巻くのが常套手段ですが、ステークホルダーとは幅広い概念であるがゆえに、ステークホルダー間の利害も相反する場合があるわけでして。

例えば開示項目例にある「原価の変化に対する出荷価格の弾力性」については、以下のような記載が考えられます。

○○○石油
「原価の変化に対する出荷価格の弾力性について」
当社は売上原価の大部分を占める原油価格の高騰があった場合には、その価格を速やかに末端価格に反映することにより、消費者から確実に対価を徴収すべく、各サービスステーションに対する指導を強化しております。

なんて記載をすることになってしまいますが、こんなことをステークホルダーの一角を占める消費者に向けてを書けということになってしまいます。

それにそもそも業種・会社を問わず(と読めるのですが)

共通指標群(第5頁の表参照)を可能な限り記述 


信憑性確保のための比較可能性などが最低限確保


しておきながら、

いわば「点取り競争」をすることには意味がない


といわれると。数値を出しても説明責任は問いませんよということですか?
それなら出すほうとしてはは楽ですが、そんな数値に意味ありますかね?全業種統一する必要も???ですが。

ま、そんなことはいっていても、結局日経やらダイヤモンドやらが単純に上から並べた順位表を掲載し好き勝手なコメントをして、それに対して会社は説明に追われる、というのが目に見えてきますが。

で、指標の例とされているものが、また突っ込みどころ満載なわけで・・・

いかん、この報告書だけで一週間くらいはネタが持ちそうなんですが。
とりあえず、今日のところはここまでに。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

「中小企業の会計に関する指針」(公開草案)の公表について

「中小企業の会計に関する指針」(公開草案)の公表について

当委員会では、中小企業が計算書類を作成するに当たり、拠ることが望ましい会計処理や注記等を示すため、中小企業の会計に関する指針について検討を行ってまいりましたが、平成17 年6月9日の委員会において標記の公開草案の公表が承認されました。なお、平成18 年度内の施行を目途に立法作業が行われている会社法において、取締役と共同して計算書類の作成を行う「会計参与制度」の導入が予定されておりますが、本指針は、とりわけ会計専門家である会計参与が計算書類を作成するに当たって拠ることが適当な会計のあり方を示すものです。

中小企業の会計のあり方に悩んでいるのは日本だけではないようで、例えばIASB(国際会計基準審議会)では、こちらでプロジェクトの進捗状況を紹介しています。ここで取り上げられているDiscussionPaperは昔当ブログでも紹介しました。
こちらのプレゼン資料を読む限りでは、2008年適用を目標として動いているようです。

また米国でも米国公認会計士協会がプロジェクトを立ち上げ、レポートしているようです(未読ですが)。

こんな状況下で公開された草案ですが、日本特有の事情として、会計参与の存在があげられます。
今般の商法改正で会計参与制度が認められましたが、実際に利用するのは非公開会社がほとんどと考えられます。非公開会社の会計基準としては商法のほか、いくつかの団体で指針が出ていますが、一般的に公正妥当と認められるほど浸透しているかというと、必ずしもそうではないかと思います。会計参与がどのような基準に従ったら責任を問われないか。もちろん、上場企業なみの会計基準に従うのがベストですが、それではコストがかかりすぎる。じゃあ、何に従ったらいいの、ということで草案が公表されたということで、策定を急ぐ特有の事情が日本にはあります。

では、内容はというところなのですが、時間切れですのでまた後日
(といって、後日ぜんぜんフォローしていない記事がいくつもあるのですが・・・)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

四半期決算義務付け2008年度にも 詳細開示もとめる(6/11 日経)

四半期決算義務付け2008年度にも 詳細開示もとめる(6/11 日経)

金融審議会(首相の諮問機関)はこれまでの年二回の決算開示に加え四半期ごとにさらに二回の決算開示を法律で義務付ける方針を固めた。

金融審の「ディスクロージャー作業部会」が七月中に最終報告を取りまとめる。金融庁は来年の通常国会で証券取引法を改正、2008年度決算にも新制度を導入する考え。証取法で開示を義務付けることでウソの開示をした場合には五年以下の懲役または五百万円以下の罰金が科される。

証取法の開示対象に加えるにあたり、会計士による監査も義務付ける。迅速な開示を促すため、あまり手をかけずにチェックする簡易型の監査を導入する。金融庁は公認会計士が使う「監査基準」を見直し、四半期決算の監査手続きを定める。

四半期終了から開示までの期間は四十五日以内とする。

「ウソの開示」とか「あまり手をかけずチェックする」とか、いまいち表現がこなれていないような気がします。まあそいう話は置いておくとしても

そうですか、やはりやってしまいますか。四半期開示の義務化。しかも「あまり手をかけずにチェック」するレビューの義務付け。内部統制監査の義務付けと併せ、まるで今後合格者が拡大する公認会計士の食い扶持・・・いや、こういう話も置いておきましょう。

しかし、現在東証などの自主ルールで開示している四半期の決算報告なのですが、法律で義務付ける必要があるのでしょうか?確かに四半期決算で虚偽の報告をしたとしても法的に問われることはないのでしょうが、それでも東証の上場廃止基準には該当するはずです。これはすでに大きな抑止力になっていると思うのですが、まだ不足ですか?そりゃ確かに東証の自主規制なので、情報開示のレベルにはそれぞれの差が出てくるのかもしれませんが、それも会社の個性。開示に消極的な会社は買わなきゃいいのですから。自然淘汰に任すということはできないのでしょうか。

実際に制度化されたときの問題は、中間決算との兼ね合いをどうするかですね。現在の中間監査は監査の位置づけにはなっていますが、「多少手をかけて」(しつこい?)チェックする程度のもかと思います。したがってこのままの状態で導入されると、四半期はレビュー報告書、中間期は中間監査報告書、年間では監査報告書が出ることになります。それぞれ手続が異なり、保証水準が異なる。これは混乱するなぁ。

しかし、45日以内ですか・・・

お盆くらい休ましてくれよ・・・・・

 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

企業負担大きい2007年問題 海外子会社の連結 煩雑に(6/9日経金融)

会計基準の2007年問題が注目を集めている。欧州連合(EU)ないで資金調達する日本などの域外企業は07年から、国際会計基準または同等性を認められた基準の採用を義務付けられる。欧州証券規制委員会(CESR)は四月下旬、日本の会計基準との同等性に関する中間報告をまとめた。日本企業はどんな対応を迫られるのか。

-親会社の会計基準にも国際基準を採用しようという動きは。
「いくつかの上場企業からは、複数の財務諸表を作成する手間や投資家の利便性などを考慮し、全面的に国際基準へ切り替えたいという相談が寄せられている。欧州の取引先を多く抱える日本電波工業は日本企業で唯一、国際基準を採用している。今後こうした動きが広がるだろう。」

これもまた、ずいぶん誤解を招く記事ですなぁ。

現在の証券取引法上は、(当たり前のことですが)日本企業は原則として日本の会計基準に従った財務諸表を含んだ有価証券報告書を提出する必要があります。一部米国基準に従った連結財務諸表を開示している企業がありますが、それは米国で株式を公開している(あるいはかつて公開していた)企業に対してのみ認められているのであり、勝手に米国会計基準に従った連結財務諸表を有価証券報告書に含むことはできません。

連結財務諸表(6/17修正)規則 第八十七条  
米国預託証券の発行等に関して要請されている用語、様式及び作成方法により作成した連結財務諸表(以下「米国式連結財務諸表」という。)を米国証券取引委員会に登録している連結財務諸表提出会社が当該米国式連結財務諸表を法の規定による連結財務諸表として提出することを、金融庁長官が公益又は投資者保護に欠けることがないものとして認める場合には、当該会社の提出する連結財務諸表の用語、様式及び作成方法は、金融庁長官が必要と認めて指示した事項を除き、米国預託証券の発行等に関して要請されている用語、様式及び作成方法によることができる。

まして、国際財務報告基準に関しては特段の規定がありませんので、たとえ欧州で国際会計基準を使用して上場していようとも、日本の規制当局において認められる余地はありません。

記事にある日本電波工業は確かに国際財務報告基準に準拠してアニュアルレポートを作成し、監査法人から適正意見をもらっているようですが、これはあくまで自主的な対応であり、通常の決算では日本基準に従った財務諸表を作成しています。「複数の財務諸表を作成する手間」をかけているのであり、「全面的に国際基準へ切り替え」るのは現在の法令上(米国に上場でもしない限り)不可能ではないかと思います。

ところで、国際財務報告基準で適正意見をもらうためのAudit feeはどのくらいかかるのか。
営業報告書(12p)を見ますと、保証業務に対する報酬が.36百万円に対して、監査報酬(商法と証取法含めて)29百万円となります。この差額が限りなくそれに近いのでしょうか。(あくまで想像にすぎませんが)

| | Comments (2) | TrackBack (0)

経営情報開示義務 「将来リスク」追加へ EU検討

経営情報開示義務、将来リスクも対象・EUが検討

:欧州連合(EU)は欧州市場に上場する日本など域外企業に対し、2007年から追加的な企業情報の開示を義務付ける検討に入った。EUは企業の情報開示ルールの統一を進めており、域外企業にもそれにあわせた開示を求める。日本企業の場合、将来発生する経営リスクの開示義務が新たに加わりそうで、金融庁は欧州での日本企業の起債コストが増えるとして見直しを要請している。

(以下webにはなし。)
:検討案のなかで、日本企業に追加開示の対象になりそうなのが「将来発生事項」の開示。例えば子会社の経営破綻のリスクなど、経営陣が先行きの経営に重要な影響を与えると考える事項を文章で明示させる。EUが本決算と中間決算毎に経営報告書に記載を義務付ける方針なのに対し、日本では現在任意となっている

え、「任意」なんでしたっけ?
昨年度から有価証券報告書の開示項目として「リスク情報」(手許に資料なく正確な用語は失念)が加わったかと思うのですが、それとはちがうんですか?

まあ、確かに英語での開示は義務付けられていはいませんが。。。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

会計制度監視機構?

会計制度監視機構 監査の質向上へ提言(6/7 日経金融)

元日本公認会計士協会副会長の森重栄氏など財務や会計問題の専門家で構成する民間団体「会計制度監視機構」は6日、監査の品質向上のための環境整備を求める提言をまとめた。粉飾決算など企業の不祥事が頻発する中、監査法人への期待は高まっている。独立した立場から品質管理体制の強化や監査報酬の引き上げを提言した。

「提言」の詳細な中身はよくわかりませんが、まあ通常言われていることのようです。
それはそうと「会計制度監視機構」、ってあなた誰です?

ぐぐってみたところ、当記事関係以外で最初にヒットしたのがここですが、会合がKFiで行われるというくらいの情報しかありません。

ん?KFi?ひょっとして、

さらに辿ると、こんなところや、こんなところこんなところまで踏んでしまいました。

どうやら某人気ブロガーが音頭をとって立ち上げ(対談中でそのようなことを言っている)、委員長代理を務めている(現任かどうかは確認取れていませんが)団体のようですね。こちらでは本人とTAC社長との対談中で、日本の会計のステータスが低く発言力が弱いので、アピールする場を設けたのだ、という趣旨のことが述べられています。

アピールする場なのであれば、ぜひ提言の全文をweb上で公開していただきたいですね。機構独自のサイトがないのであれば、ぜひゴーログ上でお願いいたします。あそこはトラックバックするのに手続がいろいろ面倒そうなので、ここでひっそり訴えたいと思います。(すでにどこかで公開されていたら申し訳ありません。)


 

| | Comments (1) | TrackBack (0)

開示資料よどこへ行く?(2)

改めて、

企業統治 チェック厳しく 金融庁3年後にも新ルール(6/2 日経)

不正対策は十分か。経営統合の決断で適正な手順を踏んだか、経費をきちんと管理しているか--- ガバナンス(企業統治)へのチェックを強めるため、金融庁がルール作りを進めている。西武鉄道やカネボウの不祥事を受けた動きで、財務に影響を及ぼす経営上の課題について監査法人が幅広く点検する仕組みを導入する。最短で三年後には上場企業に新ルールが適用される見通しだ。

まず、「経営上の課題」を「監査法人が幅広く点検」するという記載がすごい。あたかも監査法人がマッキンゼーややボストンコンサルティングにとってかわるような表現。これは完全にAuditを超えてConsultingの世界ですので、独立性の要件が損なわれてしまいます。

この記事は、おそらく内部統制監査について記載したものと思われます。内部統制監査は「企業が財務諸表を作成する手続きが適正に行われているか」をチェックするものです。経営課題をチェックしたり、コーポレートガバナンスの適正性を検討したりすることも確かに内部統制の一分野ではあるかもしれませんが、今回導入しようとしているのは(そして米国のSOX法で規定しているのは)あくまで、財務諸表を作成する手続きに関してのチェックです。内部統制監査の基準については、現在企業会計審議会で審議中ですが、審議で使用している素案が公表されています。それによると、経営者は「財務報告に係る内部統制の有効性を自ら評価」し、監査人は「経営者が行った財務報告に係る内部統制の有効性の評価結果が適正であるかどうかについて・・・意見を表明することにある」とのことです。まず、経営者が財務諸表を作成する上での手続きがしっかりしているかを評価し、その評価に対して監査人が意見を述べるという形式をとることになります。

あくまで監査人の職務は「企業が出してきたもの(通常は財務諸表、この場合は内部統制報告書?)」について、意見を述べることにあるわけで、経営上の課題にあれこれ口を出すかのような表現は誤解のもとです。監査人はそのような訓練・教育を受けていませんし、世間もそこまでは求めていないかと思います。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

紺屋の白袴

紺屋の白袴
〔紺屋が自分の袴は染めないで、白袴をはいている意で〕専門としていることについて、それが自分の身に及ぶ場合には、かえって顧みないものであるというたとえ。髪結い髪結わず。医者の不養生。

・・・この諺以上のコメントが浮かびません。

SEC内部統制ぜい弱(6/7 日経金融)

米会計監査院(GAO)は、米証券取引委員会(SEC)に対して初めて実施した会計監査で、SECの内部統制システムに「ぜい弱な点がある」という報告をまとめた。監査対象は2004年度で、会計処理自体には問題ないという。

GAOはSECが会計書類の作成手順を定めた基準を文書化していないことを重視。財務諸表の作成過程で不正を防ぐための内部統制システムが十分整備できていないと指摘した。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

開示資料よどこへ行く?

上場企業、クレーム件数など経営の舞台裏開示を――経産省が導入促す(6/5 日経)

経済産業省は上場企業に対し、経営実態や成長戦略を細かく開示する「知的資産・経営報告書」の作成を促す。客単価の推移や受けつけたクレームの数など有価証券報告書ではわからない経営関連指標の公開も求め、投資家が企業の将来性を判断する目安にする。開示基準案を10日にも公表し、まずは企業による自発的な導入を目指す。

開示基準案は産業構造審議会(経産相の諮問機関)の委員会が決める。環境報告書や知的財産報告書と同様に法的な義務ではないが、積極的に開示すれば投資家からの信頼が高まる利点を説明して企業に導入を呼びかける。東京証券取引所も前向きに評価しており、開示ルールに将来盛り込むことを視野に入れている。

企業統治 チェック厳しく 金融庁3年後にも新ルール(6/2 日経)

不正対策は十分か。経営統合の決断で適正な手順を踏んだか、経費をきちんと管理しているか--- ガバナンス(企業統治)へのチェックを強めるため、金融庁がルール作りを進めている。西武鉄道やカネボウの不祥事を受けた動きで、財務に影響を及ぼす経営上の課題について監査法人が幅広く点検する仕組みを導入する。最短で三年後には上場企業に新ルールが適用される見通しだ。


「経営上の課題について監査法人が」チェックしたり、「経営の舞台裏」を開示したり、日経だけ読んでいると、いったい有価証券報告書(有報)含めた開示資料は、いったいどこに行ってしまうのか、わけがわからなくなってしまいます。注意深く読まないとミスリーディングになってしまいますね。


まず、「舞台裏」の開示についてです。開示されないからこその「舞台裏」であって、開示されてしまってはそれはすでに「舞台裏」ではないのではないか、という屁理屈のひとつも言いたくなります。知的資産情報については開示不足ではないか、との指摘は確かによく耳に入ってきますが、その「知的資産」の内容が、客単価とかクレーム件数となると、「知的資産」の範疇からは大きくはみ出ているような気がするのですが(それとも私が「知的資産」を狭く解釈しすぎ?)。どちらにせよ「知的資産」→「舞台裏」という感覚がよく分かりません。

それでも、投資家が望む情報がなかなか入手しづらいという事実があるのであれば、METIが音頭とってひな形作るのもいいかもしれません。ただ47thさんのところにあるように「企業の経営に関する情報の開示は、企業側にしてみれば知らせたい情報を市場等(のステークホールダー)に伝えることによって、その将来的な価値創造の可能性についてより高い評価を得ることにあり、」と言われると、そうかな?と思うわけで。なぜなら、企業というものは自分が伝えたい情報はあの手この手を使って開示するのがいわば本能だと思うからです。

私の分野で行けば、一時期pro-forma損益というのが流行りました。リストラ費用を除いたEPSとか、いろいろ前提条件をつけた数値ですね。

日本では通常投資判断に使用される指標に経常利益というものがありますが、これは最終利益から特別利益、特別損失を控除したものです。一時のリストラ損失などは通常特別損失に分類されるため、経常利益という指標に含まれないことになります。

一方、米国基準ではそもそも特別損益という概念がありません。いや、正確に言うと異常損益(extraordinary loss/profit)という概念がありますが、この範囲は非常に限定されており、通常使用されません。例えば、こちらで見られるとおり、2001年の同時多発テロ関係の損失すらextraordinaryと認められないとの結論が出ていますので、じゃあ何がいったいextraordinaryかというと該当するものなどほとんどないということになります。

これでは、当然一時のリストラ費用などextraordinaryとなるわけはなく、通常の損益に含めて表示しなければなりません。それでは投資家に一時的損益悪化の誤解を与えるということで、pro-forma損益、つまり一定の仮定のもとに置いた数値の開示を行ったわけです。もちろん、通常の会計基準に従った損益は開示するのですが、それをことさら目立たないように、そしてプレスリリース等では主にpro-forma損益についてのみ触れるという実務が行われていたようです。

エンロン破綻→SOX法制定という流れの中、この問題も槍玉に上がり、2003年1月のSECのルールにより、GAAPに従わない数値を開示する場合は必ずreconciliationを付すように定められました。

このルール対応で個人的にいろいろ大変だったため(謎)、例示が長くなってしまいましたが、要は企業が開示したい情報については別にMETIの助けを借りんでも企業は何とかして開示しようとするものだ、というのが言いたかったわけで、自分の伝えたい情報が投資家に伝わらないと嘆いている企業があれば、それは単にPRIRの巧拙の問題に過ぎないのではないでしょうか?そして伝えたい情報の偏りを修正するのが規制当局の役割ではないでしょうか?というのが私の疑問なわけです。

長くなってしまったので、もう一つのネタについては別途。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

ニチイ学館・寺田社長、監査報酬の返還請求へ――担当の中央青山に、決算訂正問題で。(5/28日経)

ニチイ学館・寺田社長、監査報酬の返還請求へ――担当の中央青山に、決算訂正問題で。(2005/05/28)

ニチイ学館の寺田明彦社長は二十七日、二〇〇四年九月中間期の連結業績を訂正した問題で、会計監査を担当する中央青山監査法人に対し、昨年度分の監査報酬の返還を求める方針を表明した。同日都内で開いた決算説明会で明らかにした。監査法人の交代は「考えていない」と否定した。

まあまあ社長さん。すごく気持ちはわかる。わかるけど、

ちょっと落ち着きましょうよ。

半期報告書を提出する前に、なにか書類にサインしませんでしたか?
ご本人に記憶が無くても、「経営者による確認書」を会計士に提出しなければ、普通会計士は監査報告書にサインしてくれませんので、何らかの形で社長さんのサインを求める手続がとられているはずです。

その「経営者確認書」には、「財務諸表等の作成責任は経営者にあることを承知しております」って書いていませんか?社長さんのサイン入りで。ですから、財務諸表が間違っていたら、それは社長さんの責任なんですよ。残念ですが。

それでも、昔だったら内々に返還に応じる、または「来期の監査報酬で勉強しまっせ」という監査法人もあったかもしれませんが、現在は監査報酬は商法計算書類や有価証券報告書でガラス張り。非を認めたことがバレバレになってしまいます。監査法人もおいそれとは返還に応じないでしょう。非を認めたら、今度は投資家の訴訟が待っているでしょうし。

公の場で拳を振り上げてしまった以上、監査法人側も売られた喧嘩を買うしかないでしょう。こんな状態で監査契約の継続などできるのでしょうか?

| | Comments (0) | TrackBack (0)

金融庁、会計基準の同等性について物申す

CESR(欧州証券規制当局委員会)の「特定第3国会計基準と国際会計基準(IAS)との同等性に関する助言案」へのパブリック・コメント・レターの発出について

1.金融庁は、5月27日付けで、CESR(欧州証券規制当局委員会:EU加盟各国の証券規制当局で構成)が2005年4月27日に公表した「特定第3国会計基準と国際会計基準(IAS)との同等性に関する技術的助言案」に対して、パブリック・コメント・レターを発出しました。

4.今回の金融庁のパブリック・コメント・レターは、我が国会計基準のIASとの同等性が認められるための取組みの一環として、引き続き、国内の関係者と緊密な連携を図りつつ、我が国会計基準に求められている一定の補完措置の解消や縮小に向けて、CESRの助言案に対して意見を述べるため、発出したものです。

金融庁の原文はこちらになります。CESRの案が公表されてからの1か月で、(お役所が)これだけのコメントを纏め上げるのはなかなか大変であったと思います。そして、日本語版

24. 我々は、CESRが我々の見解を真剣に考慮してくれるとありがたく思う。

に代表されるような出来栄えであるため、最初から英文で作り上げて、あとでやっつけ仕事で日本語訳をしたようです。事実、このコメント内で、

It would not be easy for non-English countries like Japan to make comments on such technical and voluminous papers as the CESR Draft. We hope that CESR will pay due attention to this matter in the future.

などと、愚痴をこぼしています。

茶々入れはこれくらいにして、内容を見て見ます。

まず Ⅱ.Positive Comments on the CESR Draft において、日本基準の同等性を大筋で認めてもらったことを評価しています。その上で Ⅲ.Major Problems of the CESR Draft: Significant Differences and Remediesとして問題点を3点挙げています。

(1) Problem regarding the General Approach of the CESR Draft
(2) Problem regarding Remedies
(3) Problem regarding Assessment of Significant Differences

(1) をサマリーすると、

We cannot help but have the impression that the CESR assesses technical differences as significant differences not in view of the real world outcome of investor behavior (see paragraph 7) but in view of
accountants. 

・・・

The CESR should, fully in line with the Concept Paper, focus its assessment only on truly significant differences from the viewpoint of investors.

・・・

Residents in Japan issued foreign bonds of approximately 5.1 trillion yen in 2004, and almost 90 percent were issued in the EU capital markets.

The CESR should take a practical outcome-based approach by seriously considering what kinds of impact the CESR's rather theoretical assessment would have on the behavior of market participants, namely economic impacts.

「われわれは投資家を相手にしているのであって、会計士の言うことなど聞きたくない。 細かいこと言わんと、重要なところだけ見てればいいんだよ。あんまり理屈ばかりこねると、5.1兆円の9割を調達している日本が市場から出て行くけど、それでもいいんだな?」


(2)は

Supplementary statements in the form of pro-foma statements would result in forcing Japanese issuers to prepare two sets of financial statements and thus cause huge costs and burden for issuers.

There is a also concern with large costs and burden to be caused by additional quantitative disclosure requirement under the remedies of Disclosure C. In particular, additional disclosures of net of tax effect of the differences on the profit and loss or on the shareholders' equity under Disclosure C would cause no less burden than Supplementary statements

The CESR should strictly limit applications of additional quantitative disclosures and supplementary
statements, and in principle limit remedies to Disclosure A or Disclosure B.

「追加情報って簡単に言うけど、結局2つ財務諸表作るのとそんなに変わんないよ。またDisclosure Cだって、財務諸表作ってみないとインパクト分かんないし。そんなことやってられないっちゅーに。DisclosureAかBで勘弁してちょうだいよ。」

(3)
There are many items which are assessed as significant differences despite the fact that the differences are technical in substance and would not be significant for investor decisions. The detailed comments on each item are provided as attached.

「あんたらが重要だと騒ぎ立てている項目の中でも、実質的に大差ないものがいっぱいあるよ。添付した表を見てごらん」

とまあ、あえて意地悪く意訳するとこんな感じでしょうか。あまり分のある戦ではないような気がします。

とはいえ、日本はあえて自ら民間による企業会計基準委員会を立ち上げ、最善と思われる会計基準を制定しているわけですから、国際会計基準との違いがその会計基準の質を落としているのだと指摘されれば、堂々と反論する義務があります。今回即座に反論したことは当然の行為だと思いますが、その内容が「会計士の言うことは聞きたくない」「負担に耐えられない」などでは、弱いのではないかと思います。自らの会計基準の正当性を主張することがまず先決ではないでしょうか。 特に「but in view of accountants」のくだりは、経団連が言うことではあっても金融庁が言うことではないはずです。

(これも追記)

と、ここまで思ってから改めて調べると、企業会計基準委員会も同日にコメントを出しているようです。当然お互い連絡とりながらやっているはずですが、あえて相手のコメントについては言及していないようです。政治的な動きは金融庁、理論的反論は企業会計基準委員会という役割分担をしているようですね(こちらはまだ読んでいませんが)。

ちょっと長くなってしまったのでまた後日。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

会計監査 不正発見に重点 会計士協会、来年から

会計監査 不正発見に重点 会計士協会、来年から(5/31 日経夕刊)

日本公認会計士協会(藤沼亜起会長)は2006年度から、企業経営者による不正を見抜くことに重点を置いた会計監査の手法を導入する。カネボウの粉飾決算をはじめ、会計士が経営者の不正を見逃す事例が相次いでいることを問題視。経営者の置かれた状況から不正が疑われる場合には、抜き打ち検査なども行うようにする。国際基準に沿う形で監査の質を高め、財務諸表の信頼性を確保する。

 会計士協は現在、監査手続きの世界標準である国際監査基準(ISA)に国内ルールを合わせるよう、全面的な改定作業を進めている。06年度末までの完了を目指しており、不正発見に関する手続き導入もその一環。

 従来の監査は不正発見を義務づけておらず、企業の作成した財務諸表に誤りがないかを確認する点を重視していた。このためカネボウのように、経営者が意図的に虚偽の資料を提出すると、不正を見抜くのが難しいとの指摘もあった。


監査基準そのものについては、あまり詳しくはないのですが、記事を読むと、現在会計士は不正発見になんら手立てを設けていないように見えます。が、監査基準等を読む限り決してそんなことはないと思うのですが。これでいったい何が変わるのか、どなたかご教授いただければ幸いです。

以下、記事に対する現在の監査基準ですが、

新ルールは、企業や経営者を取り巻く環境が粉飾決算といった不正を生む、リスクになる、との考え方に立つ。企業や経営者の置かれた状況次第では、会計士に疑いの目をもって監査することを徹底させる。

「監査人は職業的専門家としての正当な注意を払い、懐疑心を持って監査を計画し、実施しなければならない。例えば、以下の事項や状況を識別し、評価する際に、懐疑心を高めることが重要である。
・ 不正又は誤謬に起因する財務諸表の重要な虚偽の表示の可能性を高める事項(例えば、経営者の個性、統制環境に対する経営者の影響、業界の動向、事業活動の特性、、財務の安定性)・・・」(監査基準委員会報告第10号 不正及び誤謬 第12項)

新規事業・製品の失敗、重要顧客の倒産、敵対的買収をめぐる争い、あるいは内部管理体制や企業統治の不備など、不正を生むかねない要因を具体的に把握。それらが発生した際の影響を分析し実際の監査で不正を見抜く手掛かりにする

前記監査基準委員会報告第10号(以下単に第10号とします)での付録1には「不正リスク要因の例」として、数多くの項目を挙げており、「監査人は、識別した不正リスク要因に対応するために、不正及び誤謬による財務諸表の重要な虚偽の表示を発見できるように、実証手続きに関する監査計画を策定し、実施する実証手続き、実施の時期及び範囲を決定しなければならない・・・」(同24項)と規定しています。

例えば、業績が改善している事業でも、市場全体では競争が激化し本来は収益環境が厳しい、と会計士が把握していれば、何らかの不正が行われている可能性を疑った監査が可能になる。

第10号付録1では、「業界の動向に関連する要因」が不正リスク要因の大項目の2番目に掲げられており、「激しい競争によりマージンが低下したり、市場が供給過剰になっている」という状態は、不正リスク要因であることを明確にしています。

また、子会社の内部管理体制が不十分とわかっていれば、子会社で不正が発生する恐れがあるとして、監査に時間をかけ、不正を発見しやすくなる。

内部統制の弱い部分に監査時間をかけるのは、監査の基本中の基本かと思うのですが・・・

仮に、監査における資料収集や内部告発などで何らかの疑惑が浮上した場合は、通常の監査手続きを中断。抜き打ちによる在庫の検査や、取引先も含めた調査をするなど、不正発見に努めさせる。

第10号付録2では、不正リスクがある場合の監査手続きとして「予告なしに事業所を往査するか、又は特定の監査手続きを実施する。例えば、前もって監査人が参加することが伝えられていない事業所の棚卸に立ち会い、あるいは抜き打ちで現金を実査する。」とあります。(確かに取引先の調査については微妙な問題がありそうですが・・・)

長々と書いてきましたが、結局この記事では、今の基準の何が問題なのかがよくわかりません。記事に載っている例は、今の基準でもできそうなことがほとんどのようです。できたことをやってこなかったのだとすれば、それは運用の問題かと思いますし、そうではなくルールの不備が問題なのであれば、もっと何が新しくなるのか、明確にしてほしいと思います。

まあ、素人の感想ですので、実際に監査されている監査法人の方々には自明のことなのかもしれませんが・・・

(追記)
とまあ、ここまで書いてUPしようと思っていたのですが、こんなん3月31日付で出ていてたんですね。
(そんな日に出されてもフォローできません・・・)

監査基準委員会報告書第27号「監査計画」、同第28号「監査リスク」、同第29号「企業とその環境の理解及び重要な虚偽表示リスクの評価」、同第30号「評価したリスクに対応する監査人の手続」、同第31号「監査証拠」及び同第5号「監査リスクと監査上の重要性」(一部改正)について

無知をさらけ出すようで、UPしていませんでしたが、すぐフォローできる余裕もありませんので、やはりこのままUPさせていただきます。記事では何が新しくなったのかよく分からない、ということには変わりませんから。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« May 2005 | Main | July 2005 »