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会計士試験、来年度から衣替え(8/25 日経金融)

公認会計士試験が、来年度から新しくなる。社会人など多様な人材の確保を目指し、一次から三次まで三段階ある試験を、一段階に簡素化するなど受験しやすくするのが特徴だ。・・・実際の試験を担当する金融庁傘下の公認会計士監査審査会、脇田良一委員に準備状況や狙いなどを聞いた。


-新試験に向けたムードは。
「実はあまり盛り上がっていない・・・」

-原因は。
「はっきりした原因は分かっていない。・・・制度変更に伴い、今年受けずに来年に持ち越した人もいるだろう。業界の先行きを暗く見られたかということを最も危惧している。(ここ数年の監査の厳格化の流れの中で)会計士の立場が非常に厳しいということが分かり、消極的にさせたという点だ。」

「もう一つは米国の公認会計士資格の取得に流れているのではないか、米国の会計士を格好よいと思う若者心理があるのかもしれない。米国会計士の取得者も日本の監査法人に勤める分には問題なく、監査証明業務、つまり(監査意見に)サインしなければ日本の会計士と同じことができる」

-現実は厳しいが思い描く理想像は。
「これからの会計士は会計的センスだけではなく、教養豊かで国際的、法律的センスもなければいけない・・・会計士は簿記のチェックだけではだめで、経済的動向とか、哲学的に見てどれが正しいか判断しないといけない。そのときには能力を見てよい資質のある人を選ぶ試験がよい。」

-簡素化したことは逆に質の低下につながらないか。
「そうならないように工夫する。・・・単に試験をやさしくする為ではない。短答式と論文式の試験からなる二次試験を知識の量を問う試験から考える試験に変える。証券取引法や租税法を試験科目に加え、実務に沿ったものにする。」

いやぁ、面白かったので長々と引用してしまいました。脇田委員は受験者数が一千人減少したと嘆いておられます。会計士資格の裾野を広げるための試験制度改革であったはずなのですが、今のところ当てが外れているようです。

原因がはっきりしないらしいですが、私などから見るとひとえに将来像がまだよく見えないことに尽きていると思います。まずこの試験の難易度はどれくらいなるのか、人生を投げ打つくらいなのか、片手間でできるのか、会計大学院はめしの種にはならないらしいし。人生を投げ打つくらいであれば、その後の自分のキャリアはどうなるのか、どう見ても行き当たりばったりにしか見えない監査法人の採用はどうなるのか、社員になるまで面倒見てくれないのであれば、その後企業に就職するだけの手に職はつくのか。企業はそのキャリアを評価するのか?目先に就職がある人や、既にキャリアを持っている人が挑戦するだけの価値があるのかどうか、私などですら皆目見当がつきません。これでも目指そうとするかたはチャレンジングな人材でしょうが、もともとどちらかというと保守的な方々が集まる業界ですので、チャレンジングな色彩を帯びてくると、受験者が減るのが当然でしょう。今後内部統制監査の導入などを考えると、業界の将来は決して暗くないはずなのですが、そのあたりを全くアピールできていないのが原因ではないでしょうか。というか、いままでそんなことをアピールする必要がなかったのに対し、今後はもっとそれが必要ということではないでしょうか。

なお、米国公認会計士のせいにするのは、大いにお門違いであります。米国公認会計士についても、一時期のようなブームは既にありません。米国公認会計士が「格好いい」と思って受験する人はいるかもしれませんが、そのような層はそもそも旧来の日本の公認会計士受験者層とはかぶりません。双方を二者択一で悩んだという方を私はほとんど知りません。両天秤にかけるにはあまりにも負担量がつりあわないからです。むしろ試験が簡略化したのであれば、米国公認会計士側から日本の公認会計士へとシフトする動きのほうが自然なはずですが、そのような動きにもなっていないようですね。

また、監査法人に勤めるのは問題ないと語っていますが、確かに法的な問題はありません。ただ実際には監査法人の採用については日本の公認会計士が優先してなされており、一時期それだけでは足りない時期に米国公認会計士を気まぐれに大量採用したりして、監査法人内では必要な教育体系がとられておらず(つまり公認会計士二次試験を通過していることを前提で教育体系が組まれていますので)、いろいろ悲惨なことも耳にしています。もちろんそこをうまくやっていける人がどんどんキャリアをつめるということもあるのでしょうけど。

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Comments

ひょんなところから、貴サイトを知りました。

旧制度から新制度に移行した組です。
はっきり言って、何も変わっていません。
勉強量も、内容もほぼ同じままです。
むしろ、税法が加わったり、
実務経験もないのに、実務的な出題が多くなる、
と言われて、とまどっている最中です。

幸い、講師の人たちが、
試験を作る側の中枢に近い人たちなので、
それを頼りに、信じてやっていくしかありません。
ただ、学ぶ過程で、
会計士の将来は決して暗くないと感じるようになりました。
(そう思わないとやっていられない、という側面もありますが)
それに対するアピールが足りない、というご意見には同意です。

Posted by: wankora | 2005.09.04 08:42 AM

はじめまして、
ブログ訪問ありがとうございます。

私しゃ、しがないUSCPAなので、日本の会計士試験に意見するなどおこがましいのですが、税法が入ったり、会社法が大改正したりと、なかなか対応するのが大変な時期であろうとご推察します。
今は過渡期と思って、がんばってください。

北京からシベリア鉄道が夢ですか。
私がいろいろ調べた頃は満州里経由とウランバートル経由とあったのですが、今はどうなっているんですかね。私は通常通りロシアの東岸から乗りましたが。

それでは、今後ともよろしくお願いします。


Posted by: KOH | 2005.09.06 01:20 AM

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