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繰り延べ税金資産に上限(8/26 日経)

金融庁は2006年3月期から大手銀行を対象に、将来還付される税金を帳簿に計上する「繰り延べ税金資産」を制限する規制を導入する。資本金など中核的な自己資本に占める割合を段階的に引き下げ、08年3月期には20%を上限とする。自己資本を実態よりも大きく見せていると批判が強い同資産の計上に歯止めをかけ、財務の健全性を確保する。

繰り延べ税金資産が規制の上限を超える場合、金融庁は銀行法に基づいて是正を促す。改善しなければ行政処分に踏み切る可能性もあるとしており、各行が自己資本戦略の練り直しを迫られるのは必至だ。

05年3月期の大手7グループの平均比率が26%程度だったこともあり、これを下回る20%が妥当との判断を固めた。

会計の話ではなくて、金融機関規制といった行政上の問題ですので、私は門外漢なのですが、会計畑から見ると、非常に奇異な話ですね。

繰延税金資産といえども、会計上はあくまで資産です。将来に向かって便益を提供するという定義には合致しています。将来の税額を減少させるわけですから。ただし、いったいいくら減少するのか、という計算が実務上は不可能であるため、将来の利益計画とか、過去の実績とか、そういったもので合理的に見積もるという実務を行っているわけです。

自己資本の金額が、そりゃ多いほうが経営は安定しているのでしょうが、この金額自体、将来の税金の減額効果とは全く無関係なわけです。資本の大きさと、将来支払うべき税金の金額とは相関関係はありませんから。本来繰延税金資産を自己資本の何%まで規制するのというのはナンセンスです。

それを、残高によっては行政訴訟の対象とするというのは、一般企業で言えば棚卸資産の業界平均が自己資本比率の26%だったからこれを20%に削減しないと行政措置の対象とするぞ、と言われるくらい奇異なことに感じます。

最初に断ったとおり、あくまで行政上の話であるので、会計上の繰延税金資産の残高算定とはあくまでリンクしないはずです。その辺のことが皆さんわかっていればいいのですが、会計士の判断が引っ張られたりとか、また会計士が独自の判断をした場合判断が甘いといわれるとか、そういった誤解を生じかねないのが気がかりです。

#どーでもいいですが「繰り延べ税金資産」という表記が気持ち悪いのは私だけでしょうか?
(会計上は「繰延税金資産」)

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