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コンテナ船 収益計上 進行基準に(9/1 日経金融)

商船三井はコンテナ船の収益計上をより市況の動きに合わせた方法に見直す。収入、費用とも期中に発生した分を計上し、航海を終えた時点で認識する処理方法から改める。長い航路では航海が一か月を越える場合もあるうえ、荷動きの需給によって運賃も変動している。「業績への反映をより実態にあわせる」考えで、2006年3月期の下期から採用する。

「複合輸送進行基準」と呼ばれる会計処理に移行する。船に積むコンテナ一個単位で、輸送の経過に応じて収益を認識する。運賃や荷動きといった海運の市況の動きと業績をより一致させながら、事業の運営や管理でも即応性を高める。複合輸送基準は日本郵船も採用している。

収益の計上基準はなかなか難しく、商売の性質によっても異なってきますので、業界特有の収益計上基準というのも当然ありうるかと思います。「複合輸送進行基準」とは初耳でした。

日本郵船はすでに採用しているとのことなので、有価証券報告書の重要な会計方針を調べてみると、以下のように記載されています。


(5)海運業収益及び費用の計上基準
コンテナ船
 貨物運賃及び運航費については、主として個々の貨物の輸送期間の経過に応じて計上する複合輸送進行基準を採用している。
コンテナ船以外
 貨物運賃並びに運航費及び短期傭船の借船料に加え、運航船に係る船費及び長期傭船の借船料並びにこれらに対応する貸船料については、主として発港地から帰港地を一単位とする航海完了基準を採用している。

コンテナ船とそれ以外の違いが私にはよくわかっていないのですが、記事から察するにコンテナ船の航海は1ヶ月もかかるような長期のものであり、航海終了まで収益計上を伸ばしていると、業績を適切に反映しないので、輸送期間の経過に応じて損益を計上するということです。日本からアメリカまで60日かかるとして、3月1日に船積みしたものに関する損益については3月31日現在で約半分の期間が経過していますので、損益に関しても半額を計上しようということのようです。

米国などでは、収益の認識規準がかなり厳しくなっており、顧客に対する役務の提供が完了することが完了することが必須要件となっているようですが、この会計処理はそのような動きには逆行することになりますね(もっとも米国で工事進行基準が廃止になったわけでもないかと思いますので、必ずしも必須ではないのかもしれません。この辺は最新動向を追いきれていません)。

また、海運市況を業績に反映させるとのことですが、コンテナ一個単位の運送料が、船積みしてからも変わるということなのでしょうか?もし変わるような不確実なものであれば役務提供完了まで収益計上しないのが原則のような気もします。

といろいろ書きましたが、単に海運業を知らないために収益計上規準が理解できていないということなのだと思います。識者の方いらっしゃいましたらご鞭撻いただきたくお願いします。

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「経済・政治・国際」カテゴリの記事

Comments

お久しぶりでお邪魔します。会計士補のユマです。
詳しくはないのですが、私は少し海運会社の往査メンバーに加わった経験もあるので、その時の経験から考えた事を書き込みさせて下さい。会社の全体像はまだよく分かっていないので、不正確な部分がありましたらご容赦ください。

航海期間の長い外航船は、「日本→アメリカ」のように2地点だけを結んで完了するより、例えば「日本→台湾→シンガポール→インドネシア→タイ→フィリピン→日本」などのように多数の寄港地を巡りながら一周してまた戻ってくるといった経路が多いように見受けられます。「複合輸送進行基準」という名称から察するに、もし決算日にこの船がタイ・フィリピン間の洋上にいたとしたら、翌期に日本に帰ってくる航海完了時まで待たず、日本~タイの航海で荷揚げした部分の収益・費用については当期の業績として計上する、…という意味ではないでしょうか?

↓運賃は、実際に去年はかなり派手な動きだったようです(表に出ているのはコンテナ船ではありませんが…)。「海運市況の業績への反映をより実態に合わせる」というのは、こういう月単位・週単位で価格が激しく変動している時期に、航海完了基準を適用して「2004年4月~2005年3月期」と言いつつ実態が1,2ヶ月遅れで「2004年2月~2005年1月」くらいの決算発表を5月に行っていては、投資情報としてかなり“古い情報”になってしまう―――ということではないかと思います。

http://www.mol.co.jp/ir-j/ippan/market.html

Posted by: ユマ | 2005.09.13 at 08:37 PM

ユマさん、お久しぶりのコメントありがとうございます。
いまだに年齢確認つきの自動販売機を使ったことがありません。

さて、海運業の事情につき教えていただきありがとうございました。不正確があるかもとのことですが、なんとなく事情は理解できたような気がします。

ただ、ユマさんがおっしゃるとおりだとすると、荷揚げが終わった時点で計上することのほうがむしろ当然のなのでは?。逆に上の航路でタイ~フィリピン間の運搬契約の売り上げが日本に船が戻るまで計上できないとすればそちらのほうがおかしいような気がします。

運賃の動きが派手さの件はわかりました。要は航海完了基準だと、現在の相場の売上高が何ヶ月か後に計上されることになり、それは必ずしも投資家が知りたい情報にはならない、ということですね。

勉強になりました。ありがとうございました。


Posted by: KOH | 2005.09.14 at 01:54 AM

KOHさま、お返事ありがとうございます。
副社長さんのコメント(下の方)でも自ら航海完了基準を「旧態依然とした」とおっしゃっているように、今の通信・情報処理技術では帰港まで損益を計上しない方がおかしく、むしろ進行基準を採用するのが当然なのでしょう。

http://www.mol.co.jp/unabara/topvision_0408.html

ただ、おそらく郵船・三井・川崎など主要な海運会社が誕生し発展していった100年ほど前には、日本もしくは外国の大きな港がある都市に到着するまで 荷動きの実態や発生費用の集計が把握不可能だったのだと思います。(モールスの電報で延々と数字を送信するのは正確性に劣るし、そもそも安全な航行のためにある電信をいちいちそんな連絡に使っていては船員もかなわないでしょうし。)
航海完了基準が現実的な会計方針として実務に定着し、戦後の海運業準則(…かな??)でもそれが原則処理として踏襲され、エアメール(やっぱりeメールに比べると格段に遅い)やFAX(細かい数字は読みづらい)が普及した後でも一種の簡便法として利用され続けたのでは?…と想像してみたりします。きっとIT化で荷動きのコンピュータ管理システムが整い、いよいよもう完了基準を続けるには時代遅れになり過ぎたのでしょう。

あと、コンテナ船とそれ以外の船の違いについてですが、フェリーや国内貨物便のように航海時間が短いものは完了基準でもほぼタイムラグがなく、また外洋船でも石油タンカーのようにアラブから日本まで特定の荷物だけを運ぶ専用船等は 一隻にいろいろな荷主の貨物を載せて各地で陸揚げ・積み込みを行うモザイク的なコンテナ船とはちがい 結局 最終目的地に着くまでに提供が済む輸送役務が存在しないため、進行基準の対象としないのかな?と思っています。

Posted by: ユマ | 2005.09.15 at 02:00 AM

度々すみません。後から思い付いたので補足します。
今まで完了基準でずっときていたのは、航海が終わった時点で運賃収入と運航費用をまるまる計上したほうが金額が明白で、船員の給金や管理費など個々の貨物に紐付けされていない共通費を按分しなければならない進行基準とちがって原価計算的な恣意性も介入しないという利点があったからかも知れません。

Posted by: ユマ | 2005.09.15 at 10:16 AM

ユマさん、コメントありがとうございました。
(遅くなってすみませんでした)

会計はそもそも、航海に出る船に出資した人々に結果報告をすることをミッションとして始まったとよく言われます。そう考えると航海完了基準というのはもっとも由緒ある会計処理方法であったということになるのでしょうね。

いままでの話を聞く限りでは、進行基準があるべき姿といえるでしょう。ただ、おっしゃるとおり損失繰延の恣意性が介在する余地は大きくなるわけで、会計士の判断に最終的には依拠することになってしまいます。ここでもまた会計士さんの悩みどころが増えるわけですな。

Posted by: KOH | 2005.09.19 at 11:07 PM

個人投資家であり、CPAではありませんが、投稿させて頂きます。
海運大手3社の第2四半期と第3四半期の決算をベースに、コンテナ船セグメントの売上高経常利益率の推移を3社間で比較すると、そこに大きな差があることから、収益計上基準に差があるのではないかと思い、ネットで調べているうちにこのブログを見つけました。
商船三井は06年3月期下期に「航海完了基準」から「複合輸送進行基準」に変更した結果、運賃市況は下落局面であったが為に、第3四半期の売上高経常利益率が大幅に落ち込んでいます(収益は大幅増)。
また業界3位の川崎汽船は、やはりコンテナ船に限って、「積切出帆港基準」という独特の基準を採用しているようです。収益と費用の認識のタイミングとしては、「積切出帆港基準」が一番早いようです。
その結果、コンテナ船の運賃下落局面において、川崎汽船は大手3社の中で真っ先に売上高経常利益率の悪化に見舞われ、上位2社に先駆けて中間決算時に通期予想を下方修正しました。上位2社は3ヵ月後の第3四半期決算発表時に、やはり通期予想を下方修正しています。

Posted by: Arahata Tetsuya | 2006.03.07 at 12:42 AM

arahataさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

「積切出帆港基準」というのもあるのですね。
要は出帆港に貨物を積んだ時点で収益計上ということでしょうか?役務の提供が済んでいないので、一般的な感覚からは収益計上が早いような気もしますが、これも会計慣行として認められているのでしょうね。

Posted by: KOH | 2006.03.08 at 01:29 AM

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