リース会計、「例外」廃止へ(9/6 日経)
企業会計基準委員会は近く、ほぼ一年半中断していたリース会計の見直しに関する審議を再開する。特定のリース資産を貸借対照表(バランスシート)に計上しなくてよいという現行の「例外規定」を廃止する方向で、2005年度中に新基準を取りまとめる方針だ。ほとんどの上場企業が例外規定で会計処理しており、新基準が導入されると、総資産が膨らむ。
リースで調達した設備を資産計上すると、決算では減価償却費が発生する。こうした場合、税務当局は減価償却費を費用として認め、企業がリース会社に毎月支払うリース料を費用として認めなくなる可能性がある。
ASBJがのどに刺さったとげを、強制的に取り払う手段に出るようです。リース会計については国際的な整合の立場からは例外規定が常に問題視されていたものの、産業界の反発は根強く、会計基準の改訂は遅々として進んでいなかったのですが、ついに動き出すようです。
このリース資産のオンバランス化の反対論としてよくいわれる税務上の扱いの問題についてですが、私はいまいち理解できていません。
記事では減価償却費が損金となり、リース料は損金とみなされなくなる、と書いていますが、例えば、「リース取引の会計処理および開示に関する実務指針」の設例にある仕訳を引用しますと、リース資産をオンバランスした場合の初年度の中間期として
(借)リース債務 3,947
支払利息 2,053
減価償却費 4,800
(貸)現金預金 6,000
減価償却累計4,800
という仕訳が紹介されています。
現状のリース会計(例外処理)では支払った6,000がリース料として会計処理され、それがそのまま税務上も損金となります。これがリース資産(およびリース債務)をオンバランス化しますと減価償却費+支払利息で6,853が初年度上半期に費用となります。このように通常は初年度の費用についてはオンバランス化した場合のほうが費用増となることが多いかと思います(ただし、定率法を採用している場合のみ)。もっとも当局はこの会計処理を税務上認めないかもしれませんが、それであれば従来どおり6,000を損金として申告調整すればいい話かと思います。
したがって、税務上少なくとも不利にはならないのではないかと思っているのですが。。。
これも私、わかっていませんでしょうか?
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Comments
こんにちは、いつも参考にさせていただいています。
私、治郎と申します。以前リース会社に勤務していたことがあります。リース会計の問題は下記のリンクにあるように、事務負担の増大によるユーザーのリース取引忌避、ひいては事務代行会社的な存在であるリース会社の存在意義というような問題ではないでしょうか。日本のリース会社は未だにその殆どをファイナンスリースに頼っていると思いますので。私の知識も間違っているかもしれませんが。
http://www.leasing.or.jp/
Posted by: 森下治郎 | 2005.09.07 10:20 AM
治郎さん、はじめまして。
コメントありがとうございました(遅くなってすみません)
おっしゃるとおり、事務負担というのが大きな要因であるかと思います。ただし、退職給付会計や、減損会計のような事務負担が巨大で、かつコンサルを入れないと計算も難しいような会計基準がすでに導入されていますので、リース会計のみ事務負担で対抗するのはやはり弱いのかと思います。
Posted by: KOH | 2005.09.10 09:24 PM
仰るとおりですね。退職給付会計や減損会計の事務負担は膨大そうですね。私は会計士ではないのですが、その大変さは類推できます。いつも参考にさせていただいておりますので、今後とも宜しくお願い致します。
Posted by: 治郎 | 2005.09.12 10:59 AM
こんにちは。
ああ、これで暗記の負担が一つ減りそうです(笑)
といっても、来年度の試験は、
現行のリースで行くだろうと思いますが。
例外を推す論拠として、
「注記による開示が十分なされており
情報が適切に開示されないという批判は当たらない」
というものがありましたが、
あまり説得力のあるような無いような意見ですね。
関係ないですが・・・・
Posted by: wankora | 2005.09.12 09:59 PM
wankoraさん、こんにちは。
「注記の開示情報で十分」というのは、もっともで、確かに用は足りるのですが、通常一般投資家は注記読まないんですよね。ROAや有利子負債残高など補正前の数値が報道されますからね。いまのように「どっちもあり」(といっても片方に極端に偏っていますが)という状態は比較可能性から言っても問題ありと思います。
Posted by: KOH | 2005.09.13 01:43 AM