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「包括利益」純利益と並列開示認める(11/18 日経)

世界百カ国で利用されている国際会計基準(IAS)を作る専門家組織は十六日、保有株など資産の時価評価を反映する「包括利益」と呼ばれる新しい業績報告書の導入に際し、現行の損益計算書との並列開示を容認することを決めた。包括利益に開示の一本化を目指してきたが、純利益を経営指標として重視する欧州や日本の産業界に配慮した。

十六日の国際会計基準理事会(IASB)で合意した。公開草案の開示を経て2007年にも導入を目指す。

包括利益が定着すれば企業経営者は資産の効率化への配慮を一段と迫られ、持ち合い株の売却などの加速につながる可能性がある。IASと米会計基準は将来的には包括利益への一本化を目指しており、産業界との意見調整が一段と難航する場面もありそうだ。

「包括利益」とは、「純利益」+「時価評価損益」という説明がなされます。要は1期間にどれだけ資本の部が増減したか(出資と配当を除く)を表す指標であるということができるでしょう。

では、日本の基準でそれがわからないかというと、そんなことはなく、純資産の増減内容を見ればある程度わかります。今後会社法施行に伴い、「株主資本等変動計算書」が開示されるようになると、よりそれがわかるようになるかと思います。「包括利益」の内容については現状IASとそんなに大きな違いはなかったと記憶していますので、「包括利益」の開示自体にはそんなに抵抗はないはずです。

むしろ、日本が抵抗しているのは「純利益」の概念を廃止することにあるかと思います。経営成績を測る方法として今まで慣れ親しんできた「当期純利益」が今後表示されず、わけのわからない「包括利益」で経営者が評価されることには、当然抵抗を示すことになるわけです。

と、これだけの言い方だと只の古い経営者のエゴにしか聞こえませんが、問題は利用者のほうも「当期純利益」を一定の指標として認めており、「包括利益」にはさして興味を示していないように見えることです。少なからぬ実証研究が「当期純利益」と株価の価値関連性の高さを示す一方で、「包括利益」と株価の価値関連性が低いことを示しているようです。
(参考文献 10/24日経 経済教室 徳賀京大教授稿)

また日本のみならず、欧州産業界からも反発があるようです。「包括利益は投資家にも企業にも重要なデータとは言えない」とネスレの財務責任者が反発しているようです。
(参考文献 11/18日経金融)

さらに記事ではIASと米国が導入を推し進めているように読めるのですが、米国でも包括利益が支持されているのかというと必ずしもそうでないように聞いています。(これはソースがありませんが・・・)

こうしてみると、じゃあいったい誰が包括利益のみの財務諸表を欲しがっているのか、というのがよく見えなくなってきます。理論的には包括利益のみほうがすっきりし、貸借対照表との関係もわかりやすくなりますが、理論的にわかりやすくてもニーズがない財務諸表の導入を強引に進めることはできなかった、ということなのでしょう。

IASのサイトではまだこの件に関しては出ていないようですので、どのような方向付けがされたのかは正確にはよくわかりません。出次第読んでみたいと思います。

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「経済・政治・国際」カテゴリの記事

Comments

今回の(というより、しょっちゅうではありますが)日経の記事は、背景の理解に不正確な部分があるように思います。

IASBの業績報告プロジェクトは、Segment AとSegment Bに分けられており、今回暫定合意が行われたのはSegment Aのほうです。
Segment Aは、当期純利益をとりあえず残す前提で、まず包括利益の表示方法を明確化しようとしたものであり、最終的に当期純利益を残すかどうかはSegment Bで決定される予定になっています。したがって、今回の暫定合意で当期純利益が残っているのは当然のことで、Segment Bの結論がこれと異なったものになる可能性はまだ残っているものと考えられます。

今回の暫定合意のポイントは、one statement方式(末尾は包括利益になる)に統一する方向がIASBの多数意見だったのを、政治的妥協としてtwo statement方式(損益計算書と包括利益計算書を分けて作成)も認めることにした点です。Segment Bでもtwo statement方式が採用されるのであれば、必然的に当期純利益が残ることになりますが、one statement方式でも
当期純利益を残すことは可能です(最終行は包括利益であっても、途中経過として当期純利益を表示することは可能)。
いずれにしても、two statement方式を認めるのはSegment Aに限定した決定のようですので、Segment Bの方向性はまだ白紙の状態と見るべきではないかと思います。

Posted by: MO | 2005.11.21 at 10:33 PM

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(当社発行メールマガジン『CFOのための最新情報』(2005/11/21号)より抜粋) 国際会計基準は、「包括利益」を最終利益とする新しい業績報告書の導入を検討していましたが、「純利益」を最終利益とする現行の損益計算書も開示を認める方針が決まりました。 詳....... [Read More]

Tracked on 2005.11.23 at 11:10 AM

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