IASB業績報告プロジェクト(1)
MOさんからコメントをいただきました。いつもすみません。
Segment Aは、当期純利益をとりあえず残す前提で、まず包括利益の表示方法を明確化しようとしたものであり、最終的に当期純利益を残すかどうかはSegment Bで決定される予定になっています。したがって、今回の暫定合意で当期純利益が残っているのは当然のことで、Segment Bの結論がこれと異なったものになる可能性はまだ残っているものと考えられます。
日経の記事を鵜呑みにしてはいけないと常に肝に銘じているのですが、今回もそうですか。いや、最近の動向を英文でチェックする作業をしていなかった、私の怠慢によるものでもあるのですが・・・
今回の決定事項
反省のもと、今回のIASB UPDATEが出ているようなので、早速見てみますと、日経の大はしゃぎが嘘のように、業績報告プロジェクトについてはほんの片隅に数行載っているだけです。
The Board discussed its tentative decision to require a single statement of recognised income and expense. The Board expressed its view that a single statement presenting all income and expenses is the conceptually correct presentation. However, it decided that the Exposure Draft of Proposed Amendments to IAS 1 Presentation of Financial Statements would allow the presentation of income and expenses in a single statement or in two statements (an income statement and a statement of recognised income and expense that would begin with profit or loss for the period). The Basis for Conclusions to the Exposure Draft will make clear the Board’s preference for a single statement. All other tentative decisions of the Board in relation to Segment A of the project will be included in the Exposure Draft
これだけです。あくまで業績報告書は1つにまとめるのが理想だけど、まあ今回は2つでもいいよ、そんなニュアンスが伝わってきます。
ところで、1つと2つの違いは何かといいますと、上の文章から「2つの報告書=従来の損益計算書+損益計算書上の当期純損益を出発点に有価証券評価差額等を加えた包括利益計算書」(かなり補足していますが)というのが読み取れます。「2つの報告書」では明らかに当期純損益は表示されることになります。
では「1つの報告書」では当期純損益は表示されないのか?それは現在日本として阻止すべきものなのか。日経が言うとおり、2つの報告書が認められたのは日本の勝利なのかというところなのですが。
プロジェクトの経緯
ここで、そもそもこのプロジェクトの経緯に立ち戻りますが、本プロジェクト当初はIASBが理想とするかなり画期的な(そして作成者側から見れば、かなり奇抜な)業績計算書の提案をしてきたのですが、なかなか周囲の理解を得られず、プロジェクトが立ち往生してしまった経緯があります。
こういったとき、プロジェクト自体が頓挫しないようにする常套手段として、まず各国が合意できるところからやっていきましょう、理想を目指すのはそれ以降にしましょう、という態度をIASBはよくとります。今回もまさにそのようで、合意できるところからやりましょうというプロジェクトがSegment A、理想を目指しましょうというプロジェクトがSegment B、その2つにプロジェクトが分割された経緯があるようです。
(次回へ続く)
(参考文献 Performance Reporting)
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 日興の不正会計課徴金5億円命令(1/6 日経)(2007.01.17)
- 12月の新聞記事より(3)(2007.01.09)
- 12月の新聞記事より(2)(2007.01.08)
- 12月の新聞記事より(1)(2007.01.08)
- 米、過剰規制を見直し・企業改革法緩和へ(12/1 日経)(2006.12.01)
Comments