棚卸資産の評価基準に関する論点の整理(3)
【論点3】低価法適用時の時価
時価としては、正味実現可能価額と、再調達原価を中心に検討がなされています。
正味実現可能価額は、要は予想される売価(売却コスト控除後)であり、国際会計基準で採用されている方法。再調達原価は、同じものを取得しようとしたらいくらかかるかという金額で、米国基準の基本となり、また日本の税法においても採用されています。
収益性の低下、という基準で判断するんであれば、正味実現可能価額が一番整合するのでしょう。ただ、あくまで取得原価基準という枠を外さないであれば、再調達原価という考え方もあるでしょうし、なんと言っても実務的にはそのほうが楽。法人税法との調整も不要だし。
【論点4】洗替え法と切放し法
洗替え法とは、前期にいったん切り下げた簿価を、次期には取得価額まで戻し、改めて時価の下落を判定する方法で、切放し法はいったん切り下げた簿価は元には戻さず、次期には切り下げ後の簿価と時価を比較し、時価の下落を判定する方法です。
これも国際会計基準では洗替え法が採用されており、米国基準では切放し法が採用されており、議論が分かれるところかと思います。低価法が任意で適用されている日本基準においては両方が認められています。
論点3と同じように、収益性の低下という基準で判断するんであれば、収益性が回復した場合に簿価の切り上げが生じることは否定できないと考えられます。ただし、固定資産の減損や有価証券の減損では損失の戻入が認められておらず、それとの整合が問題になると考えられます。
この点については、固定資産やや有価証券では、損失の発生の可能性が高い場合に限り減損を認識するため切放し法と考えられる、としています。
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