改正企業会計基準第2号 「1株当たり当期純利益に関する会計基準」ほか
企業会計基準委員会(以下「当委員会」という。)では、会社法(平成17年法律第86号)の公布及び企業会計基準第4号「役員賞与に関する会計基準」等の会計基準等を当委員会が公表したことに伴い、当委員会が平成14年9月25日に公表した企業会計基準第2号「1株当たり当期純利益に関する会計基準」(以下「改正前基準」という。)及び企業会計基準適用指針第4号「1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針」(以下「改正前適用指針」という。)並びに平成15年3月13日に公表した実務対応報告第9号「1株当たり当期純利益に関する実務上の取扱い」(以下「改正前実務対応報告」という。)について、所要の改正を行うために検討してまいりましたが、平成18年1月24日の第97回企業会計基準委員会において、標記の企業会計基準(以下「改正基準」という。)、企業会計基準適用指針(以下「改正適用指針」という。)及び実務対応報告(以下「改正実務対応報告」という。)を承認しましたので公表いたします。
こちらは、確定基準の公表です。
会社法施行、ストックオプション会計基準、そしてそれにかこつけた純資産の定義の変更など、激動しています貸借対照表の右下部分。その激動にあわせて、1株あたり純利益(以下EPS)の計算も整理しましょう、という改正です。
新旧対応表も公開されています。読んで見ると一見大量ですが、ほとんどが用語の修正であり、実務で変わるところはそう多くないはずです(ここでの実務はあくまで「計算」の実務という意味です)。
実務的に変わるところは、次の部分かと思います。
①役員賞与の扱い
従来(といってもここ2年くらいですが)、EPS計算における分子となる「純利益」からは役員賞与の額を控除していました。もともとEPSの趣旨は、株主が自分たちに配分されうる利益がどれくらいあるかを計算することにあります。役員賞与の支払額は会計上の純利益には費用として含まれていませんでした。株主が配分を期待できる額の中に、明らかに役員に渡ってしまい、配分されない金額があるのは不都合であることから、EPSの計算に当たっては、純利益の金額から役員賞与の額を控除していたわけです。
今回の会社法改正、および会計基準の改正により、役員賞与は明確に会計上の費用として認識されることになりました。すなわち「純利益」の計算に最初から含まれることになったため、今までやっていた調整が不要になった、というわけです。
②純資産の定義
先般の会計基準の改訂により、「純資産」の定義が変更されました。「株主資本」「評価・換算差額等」「新株予約権」「少数株主持分」との4区分に区分されることになりました。1株あたり純資産を算出するに当たって、純資産の額から「新株予約権」および「少数株主持分」を控除することになりました。もともと「純資産」に含まれていないものですので、この部分については影響はありません。ただし「純資産」の計算に含めることになった「評価・換算差額等」の中に「繰延ヘッジ損益」が含まれており、これは従来純資産に含まれていない部分であったので、この部分のみが従来との連続性がないことになります。
③未公開子会社のストックオプションの扱い
潜在株式調整後のEPSを計算する際に、行使価格が期中平均株価を下回っているストックオプションはすべて行使されたものと考えて計算します。それは子会社のストックオプションについても同様です。子会社のストックオプションが行使された場合、親会社の持分が減少しますので、連結としては純利益が減少します。その減少分は潜在株式調整後のEPSの計算に当たって考慮しなければなりません。
従来は、そのなかで未公開子会社のストックオプションについては、平均価格の算定が難しいとのことから考慮しなくてもいいことになっていました。ところが、最近公表されましたストックオプション等に関する会計基準により、未公開株式に係るストックオプションについても原則として公正価値による費用認識が求められることになったことに伴い、未公開株式であっても処理を区分することをしないこととしたものです。
まあ、そうは言っても未公開株式の期中平均株価をどうやって算出するのかという問題がありますが・・・
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