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三菱UFJの繰延税金資産(1)

三菱UFJ 4000-5000億円資本増強へ(4/26 日経夕刊)

三菱UFJフィナンシャルグループ(FG)は二十六日、二〇〇六年三月期で自己資本を四千億-五千億円増強する方針を固めた。経営統合で将来の収益見込みが強まったと判断、旧UFJグループが経営危機に際して大幅に減額していた「繰り延べ税金資産」を資産に計上する。


いつも思うのですが、金融面担当の方が書いたこの手の記事を読むと、どうも本質を外しているという印象が否めないのであります。まず、見出しに非常に違和感があります。繰延税金資産の回収可能性が高まったことを「資本増強」と呼ぶのが正しいのか。貸借対照表の資本の部の推移と、BIS規制しか見てないのであれば確かに資本増強なのかもしれませんが、会計側から見ると実際に現金が動かず、単に資本剰余金と繰延税金資産が両建てになって膨らんだものを「資本増強」と呼ぶのはちょっとミスリーディングなのでは?と思います。

同じようなことが、次の記事にも

旧UFJ行員の心境複雑(4/27)

三菱UFJフィナンシャルグループ(FG)が二〇〇六年三月期で約四千八百億円の繰り延べ税金資産を積み増したことが明らかになった。旧UFJグループが旧三菱東京FGとの経営統合に追い込まれる原因となった繰り延べ税金資産が「復活」し、新グループを潤すという皮肉な結果となった。

三菱UFJの収益力から見て「復活」は当然だが、旧UFJの行員は複雑な心境だろう。復活した繰り延べ税金資産を削減せずに済んでいたら、旧三菱東京FG主導の経営統合に追い込まれなかったのではないかとの思いがよぎるからだ。

これもなんか変な話で、経営統合したからこそ資産計上できるわけであって、UFJ単体では資産計上できなかったという単純な話です。

繰延税金資産は将来の税負担を軽減させる効果を持って資産として計上できるわけですから、近い将来に一定の収益が上がることが前提となります。収益が上がらないとそもそも税金を支払わないわけですから、税負担の軽減は不可能。したがって資産には計上できないというわけです。

ですから、UFJ単体では将来の収益力が足りない。三菱東京と経営統合することにより将来の安定した収益が見込めるようになった。信用力が増した。それだけのことです。「削減せずに済んでたら経営統合に追い込まれなかった」という考え方自体繰延税金資産の性質をよく分かっていないのではないのかなと思います。ですから、以下のような表現になってしまうわけで、

・・・財務内容などを勘案し1:0.62という統合比率を決めた際にも、これほどの資産復活は想定外だったはずだ。

そんな間抜けなデューデリって・・・(笑)。当然繰越欠損金等の税効果は通常資産査定のうちの一つに入りますので、経営統合によって繰延税金資産が復活することは想定の範囲内であったでしょう。

ところで、この記事ですが、もう一つ気になる表現をしています。

ただ、三菱UFJは今回の繰り延べ税金資産計上に伴って決算が大幅に上ぶれするのは望ましくないと判断、バランスシート(貸借対照表)上で繰り延べ税金資産と資本を調整し、利益予想には影響しないようにする方向だ。

これについては稿を改めてということで。

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