GW明けの週であるということと、京浜東北線の事故(木曜に半日止まったあと、金曜日にもマイナーな事故がありダイヤが多少乱れた)により、いつもは確実に座れる朝の通勤電車が5日中4日座れなかったということがあり、大して仕事をしていないにもかかわらず何か疲労感が漂う週末です。電車の中の睡眠時間というのは普段の睡眠不足の貴重な補充時間であったことを改めて認識させられています。
さて、中央青山監査法人の一部業務停止に関する件ですが、ブログでもだいぶエントリーが出てきたようです。全然まとまっていないのですが、思うところをつらつらと書き連ねていきたいと思います。
1.監査法人の処分理由について
監査法人及び公認会計士の懲戒処分について
(3)処分理由
カネボウの平成11年3月期、平成12年3月期、平成13年3月期、平成14年3月期及び平成15年3月期の各有価証券報告書の財務書類にそれぞれ虚偽の記載があったにもかかわらず、同監査法人の関与社員は故意に虚偽のないものとして証明した。
あくまで「関与社員は故意に虚偽のないものとして証明した」ことが処分理由なのですね。監査法人の内部体制がどうあろうと、社員の故意により虚偽の監査報告書が世に出てしまった場合、監査法人が処分を受けることになってしまいます。内部統制をいくら強固にしても100%虚偽を防ぐことは不可能ですので、この処分理由だと結果責任を問うているように読めます。そういうものなんでしたっけ?
なお、同監査法人に対する調査を通じて、別紙2のとおり、審査・教育体制及び業務管理体制を含む監査法人の運営に不備が認められたことから、同監査法人に対しては、責任の所在の明確化を含めた現状認識及び対応策について、公認会計士法第49条の3第1項に規定する報告徴求を併せて行っている。
別紙2とは、以下の通りです。
中央青山監査法人については、審査・教育体制及び業務管理体制を含む監査法人の運営に関し、主として以下のような不備が認められた。
① 審査体制が、レビュー・パートナーによるレビューに過度に依存し、審議会による審議やインターナル・レビュー、モニタリング等が有効に機能していなかった。
② 監査法人として、レビュー・パートナーが判断の拠り所とする基準・マニュアル等が適切に整備されておらず、レビュー・パートナーによるレビュー業務が有効に機能していなかった。
③ 投書への対応について、十分な仕組みが用意されていなかった。
レビュー・パートナー、インターナルレビューなどという言葉が、金融庁の処分理由に使われるほどのの正式用語とは思いませんでした。日本語で適正な用語はないんですね、という瑣末な感想はともかく、
審査体制を体制をちゃんとしなきゃならない、というのは下記の基準かと思います。
(あまり自信がないので、どなたかフォローしていただければ)
監査基準 第四 報告基準
5.監査人は、意見の表明に先立ち、自らの意見が一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して適切に形成されていることを確かめるために、意見表明に関する審査を受けなければならない。
監査基準委員会報告書第12号 監査の品質管理
17.監査事務所は第32項に規定する個々の監査業務における監査意見表明のための審査を効果的かつ効率的に実施するため、監査意見の表明に係る審査機能に関する方針と手続を策定しなければならない。
18.審査担当者は、審査の対象となる監査業務に従事せず、かつ、監査責任者と同程度以上の専門的能力と実務経験を有するものでなければならない。
監査事務所がどのような審査体制及び審査内容を確立・維持するかは監査事務所の規模、監査対象会社の数、監査業務の内容、監査リスク等を総合的に勘案して、それぞれの監査事務所が決定する
その付録として、監査事務所としての品質管理の方針と手続の例示として、以下のものが挙げられています。
4.監査意見表明のための審査機能
・審査の担当者又は部署若しくは機構を定め、その責任と権限を明確にする。
・審査担当者の資格・選任方法を定める。
・審査の方法、審査関連書類の様式及び審査の対象となる項目を定める。
・監査責任者と審査の担当者又は部署等の間に見解の相違がある場合の解決手続を定める。
・審査の過程と結果を適切に文書に記録し保管する方法を定める。
・審査に関する守秘義務を定める。
上記以外に根拠条文があるかどうかはよく存じませんが、いちおうこれが日本の一般に認められた監査基準であるかと思います。
中央青山はこの審査体制がなっていなかったということで、以下の処分を決めています
3.関係者の処分について 今回の処分に対する責任を明確にするため、以下の処分を実施いたします。
1)当時の審査関係者3名を辞職、2名を6ヶ月の就業停止とする。
2)金融庁に対する調査報告書作成に携わった者5名を減俸30%6ヶ月~減俸10%3ヶ月とする。
「辞職」が処分なのか、なんとなくピンときませんが、とにかく審査担当者の首を取ったことは確かのようです。
では、監査基準上実際にどんな審査体制を取ればいいのか、それは「それぞれの監査事務所が決定する」ことのようですので、実務に委ねられることになるかと思います。ただ、カネボウ事件の期間、そして現在もですが、失敗したら首が飛ぶくらいの機能を審査機関に求めているのかどうか、そこまでの実務になっているのか、ちょっと疑問のところがあります。
(ただ確かに、クライアントとしてこのところ年々審査の突込みが厳しくなっているという実感はありますが)
正直、いくら審査機能を強化したところで、keizokuさんがおっしゃる通り、虚偽報告の防止には限界があると思っています。
それにもかかわらず、金融庁が審査体制に問題ありとして報告を求め、監査法人側がその報告前に審査担当者の首を差し出す、ということは、監査法人側にも弁解ができないレベルで統制についての瑕疵があったのではないでしょうか。内部統制を理由とした処分の危険性を云々する以前の話のような気がしています(あくまで想像の産物ですが)。
ちょっと長くなってしまいましたので、いったんここで切ります。
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