「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」の公表
「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」の公表
連結財務諸表を作成する場合、在外子会社が採用する会計処理は、本来、企業集団として統一されるべきものであります。これまで日本公認会計士協会監査委員会報告第56号「親子会社間の会計処理の統一に関する当面の監査上の取扱い」では、在外子会社の所在地国の会計基準において認められている会計処理が、企業集団として統一しようとする会計処理と異なる場合でも、当該会計処理が明らかに合理的でないと認められるときを除き、当面、親会社と子会社との間で会計処理を統一する必要はないものとされてきました。
その後、我が国の会計基準は、国際的な会計基準と同等の水準まで整備されてきたことや、欧州をはじめ多くの国々において国際財務報告基準(IFRSs)が採用されつつあるなど、国際的な会計基準の適用にも変化が見られることから、企業会計基準委員会(以下「当委員会」という。)では、上述のようなこれまでの取扱いの見直しを検討してまいりました。今般、平成18年5月12日の第104回企業会計基準委員会において、標記の実務対応報告(以下「本実務対応報告」という。)を承認しましたので公表いたします。
連結財務諸表を作成する際に、海外子会社の財務諸表については日本基準に修正したうえで連結しなさい、ほかの国の基準で作成した財務諸表を連結したら、会計処理が首尾一貫しない財務諸表になってしまいますよね、という至極当たり前のことを言っている基準であります。
しかし、この至極当たり前のことが日本ではできていませんでした。というよりしなくても良いと明文で書かれております。
監査委員会報告第56号
「親子会社間の会計処理の統一に関する当面の監査上の取り扱い」
5.在外子会社の会計処理の統一
在外子会社の会計処理についても、本来、企業集団として統一されるべきものであるが、その子会社の所在地国の会計基準において求められている会計処理が企業集団として統一しようとする会計処理と異なるときは、当面、親会社と子会社との間で統一する必要はないものとする。なお、在外子会社が採用している会計処理が明らかに合理的でないと認められる場合には、連結決算手続上で修正する必要があることに留意する。
なぜこの当たり前のことをしなくてもいいという基準が設定されていたのか。「だってしょうがないじゃない」というのが本音です。
そもそも、日本基準なんてのは日本語と一緒であり、日本以外ではまず通用しません。それを在外子会社に強制できるのかというと。ただ日本人の経理担当が居ればいい、というだけであればまだしも、それをいったい誰が監査するのか。現地に日本基準に詳しい会計士がいるかというと、4大会計事務所の出先機関の出張者くらいでしょうから圧倒的に数が少ない。日本にいる会計士が出張ベースで対応する?それも数と費用の面から現実的ではない、というわけで、まあそれなりの国の基準で会計士からお墨付きもらってればまあいいんでないの?くらいのノリで決まったものと思います。
しかし、他国に自国の基準をグローバルスタンダードだと押し付けることに何の疑問も感じない方々にはそんな理屈は通用しません。IFRS(国際財務報告基準)と日本基準のコンバージェンスプロジェクトでは、真っ先にこの点が重要な差異であると俎上に上がっています。またいわゆる2007年問題といわれる、欧州での日本企業上場維持のための会計基準の検討においても、この点は槍玉に上がっています。
ここまで言われては仕方ないので、対応することにしたというわけです。何せ正論には違いないので、会計基準自体はあっという間にできてしまいます。ただ、きっかけがきっかけであるので、IFRSまたは米国基準で作成されている財務諸表については、「当面の間」従来どおりそのまま連結できるということになっています(ただし、一部の項目については修正が必要と明記されています。これについては別稿予定)。
さて、さしあたってどうするかですね。IFRS適用可能国は100国以上などとIASBは豪語しておりますが、あくまで適用可能というレベルであって、ローカルスタンダードが全廃されているわけではなく、中小企業には自国の会計基準が使用されている場合が多いかと思います。これらを平成20年度までに、IFRS、米国、日本、どれかの基準に対応させなければなりません。おそらくこれから例えば中国GAAPのReconciliationチェックリストなどというものが各会計事務所により作成されることになるのでしょう(今もあるのでしょうが、日本の監査が通るまでのレベルにブラッシュアップする必要があるでしょう)。現地に行かなければ対応できないと、会計士の出張要求が増えるんでしょうなぁ。ああ金がない金がない。
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