4大監査法人「内部管理に不備」改善命令勧告へ(6/30 日経)
金融庁傘下の組織で監査法人を監視する公認会計士・監査審査会は二十九日、あずさ、新日本、中央青山、トーマツの四大監査法人に内部管理体制の不備があるとして、金融庁に改善を命じるよう勧告する方針を固めた。会計士と監査先の企業との馴れ合いを防ぐ内部体制の整備が不十分と判断した。事態を放置していれば粉飾決算を見逃すことになりかねないため、同審査会として初の改善勧告に踏み切る。
四大監査法人の監査に占める割合は8-9割であったかと記憶しています。ということは8割以上の監査実務が四大監査法人のレベルで行われるわけであり、それは現在の公正な監査慣行であると言えるのでは?すなわち、金融庁が求めるレベルのほうがおかしいと主張は不可能なのですかね?まあ、各法人厳粛に受け止めるそうですから、面白くありませんが。
実際に会計士さんに話を聞いたことがあるのですが、この金融庁の検査、監査現場はもちろん、監査自体の素人が、マニュアル片手に形式的に○×を判定していく、と言う形で行われたようです。現場からはいろいろ言いたい事もあるのでしょうが、素人にも説明できるように内部体制を整える必要があるといわれればその通りかもしれません。ただ現場の効率は落ちるでしょうし、分かりきった手続を毎回やらされるクライアントにとってはまた手間が増えそうだということで憂鬱ではあります。残高確認が不十分であったとの指摘もあるようですから、銀行さんの窓口には今まで以上の大量の預金の残高確認依頼が届くことになるのでしょう。
(こういうのって銀行が手間を理由に回答拒否したら監査ってどうなるんでしょう。少なくとも回答義務はないはずですし。それをもって意見不表明などといわれたらたまらないのですが・・・)
ところで、経営財務6月19日号の八田青山学院大学教授と、会計士那須伸裕氏との対談で、那須氏は興味深いことを言っています。
・・・あとは、規制が厳しくなるとか、いろいろ外からの目がありますから、当然、事務所の意見審査の段階でハードルも高くなってきています。ですから、これまでは会計基準に「書いてないから自分で判断しろ」だったことが、いまは「書いていないからダメ」になる。要するにグレーゾーンはブラックになってしまった。監査と言う仕事がつまらなくなってきています。
この発言は、監査法人内部の審査のことについてのもので、審査自体はどんどんハードルが高くなっているという現実があるようですが、金融庁から見るとまだまだと言うことなのでしょう。しかし、那須氏がおっしゃるとおり、すべてマニュアルどおりの対応でよいのだったら、監査自体はつまらないでしょう。何でもマニュアルどおりにこなせばいい、マニュアルに書いていないことは保守的に、怒られないようにやっておけばいい、というのであれば、専門的能力など必要ありませんからね。そうなれば、会計士など不要、政府が直接企業にらみを効かせればいい、と言う、監査制度の根本を揺るがすような話になってきます。
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