電子マネーの仕組みと会計・税務(10/20 経営財務)
電子マネーの普及が加速している。利用者が一千万人を超え、利用できる場所も増えて爆発的な普及の段階に入ったといえる。まずは小売業やサービス業で電子マネーを扱い税務会計処理が必須の業務になるであろう。このためには電子マネーの仕組みと法的な規制の絡みを理解し、それに基づいて収益・費用の認識と対応、貸借対照表への表示という基本問題を考えていくことが大切である。
財務アナリストの雑感のdancing-ufoさんも取り上げていますこの記事。
会計のこともさることながら、著者の税理士さんは電子マネーの初期段階から研究されている方のようで、技術的素人にもsuicaなどの仕組みの初歩的な知識がわかるように解説されており、なかなか面白い記事でありました。
この記事において、プリペイド型の電子マネーに関する事業者の会計処理について以下のように書かれています。
・法人税法の規定上、収益認識の時期は、預託金を受け取ったときが原則であるが、一定の条件の下、電子マネーの利用があったときまで収益認識を繰り延べることができる。これは会計上も認められた方法である。
・JR東日本の貸借対照表を見ても、前受金についての説明はなく、預かり時の収益計上か未利用額について繰延処理をしているのか不明となっている。
ただ、Edyのビットワレットみたいな非上場企業であればまだしも、JR東日本のような企業が税法上の原則をそのまま会計方針としているとは考えにくいかと思います。少なくとも会計上は用益の提供なくして収益計上はありえないという立場かと思いますので、何らかの形で繰延処理を行っているものと考えられます。
ここで、東日本旅客鉄道株式会社の有価証券報告書をみてみます。主な資産負債の項目に
前受運賃
定期旅客収入 67,865 平成18年4月以降の定期券収入
定期外旅客収入 23,249 イオカード ほか
との記述があります。カード式のイオカードは既に廃止されていますので、ここでいうイオカードはsuicaイオカードのことと思われます。定期券つきのsuicaがどちらに入っているのかわかりませんが、とりあえずは未提供の役務に対しては前受運賃として計上されていると考えてよいのではないでしょうか。
さらに遡ってみると、15/3の有価証券報告書の前受運賃の内訳には、suicaの記載があります。少なくともこの期では繰延処理をしていたことになります。この後記載がなくなったことが不思議ですが、次期以降「前受金」が倍増していることと関係があるような気がします。おそらく前受金の金額を運賃と解するか、クレジット業務と解するかの問題でないかと考えています。
なお、dancing-ufoさん指摘の、
ファミリーマ-トでもSuicaの取扱いが始まったのですが、例えば、ファミマの店頭でSuicaにチャージ入金した時、これはファミマの売上となるんでしょうか?
ですが、あくまでこの入金はJR東日本に対する入金であるため、ファミマとしては預かり金に計上するものと考えられます。ファミマでsuicaの利用があれば、その時点で売り上げが上がり、JR東日本から売掛入金があるという流れになるのではないのではないでしょうか。
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