東急ストア今期最終黒字54億円(11/23 日経)
東急ストアは22日、2007年2月期の連結最終損益が54億円の黒字(前期は25億円の赤字)になる見通しだと発表した。従来予想は36億円の黒字。固定資産の譲渡に伴う税効果の影響で法人税等調整額がマイナスとなる。06年8月中間期決算も後発事象の発生としてさかのぼって修正した。
修正後発事象の問題です。
本体のプレスリリースはこちら
(修正)修正後発事象の発生に伴う平成19年2月期中間決算短信(連結)及び平成19年2月期個別中間財務諸表の概要等の修正について
平成18年10月12日に発表いたしました当社「平成19年2月期中間決算短信(連結)」、「平成19年2月期個別中間財務諸表の概要」及びそれぞれの添付資料について、下記の理由に基づき修正いたします。
(中略)
当社は、本日付で別途発表いたしております「固定資産の譲渡に関するお知らせ」に記載のとおり、平成18年11月22日開催の取締役会において、福岡県筑紫野市所在の土地、建物を譲渡することを決議いたしました。
この決議に伴い、中間期末時の減損会計上の回収可能価額の観点から、売却時に発生が見込まれる損失相当額の減損処理及び一時差異に係る繰延税金資産の計上を修正後発事象として18年8月中間期の中間連結財務諸表並びに中間財務諸表に反映させることにいたしました。
素朴な疑問なんですが、これって修正後発事象にあたるのでしょうか?
ここで修正後発事象の定義をば
・・・決算日後の発生した事象であるが、その実質的な原因が決算日現在において既に存在しており、決算日現在の状況に関連する会計上の判断ないし見積りをするうえで、追加的ないしより客観的な証拠を提供するものとして考慮しなければならない事象である。したがって、重要な事象については、財務諸表の修正を行うことが必要となる。(監査委員会報告第76号)
つまり、決算日を過ぎてからわかったことでも、その事象が決算日現在でも発生している場合はその影響を織り込んで財務諸表を修正しなさい、と言っているわけです。教科書的には貸倒引当金がその例としてよく挙げられます。決算日後半月で取引先が倒産してしまった場合、実質的には決算日時点で取引先の財政状態は悪化していたのだろうから、それはさかのぼって貸倒引当金を計上して、財務諸表を修正してください、ということです。決算日後で監査報告書の発行前に何らかの事実が発生した場合このような問題が生じます。
では、話を戻してこのケース。確かに決算日後、中間監査報告書前に起きた売却損失であるようです。では、決算日時点においてはどうだったのでしょうか。
確かに、決算日後3ヶ月で時価が急落した等の事情がない限り、決算日末(8月末)でも時価は下落していたと考えるのが自然でしょう。したがって、正味売却価額ベースでは減損損失が発生したのでしょう。
しかしながら、減損損失を正味売却価額ベースで算出するのは、売却を視野においている場合が通常であり、それ以外の場合は固定資産を使用し続けることが前提で、使用価値、すなわち事業による将来キャッシュフローで測定するのが原則かと思います。8月末時点では当然その前提で減損会計を適用しているはずです。
そして、11月に売却の意思決定をしたのであれば、その時点で売却予定の資産として改めて評価すべきものであるかと思います。すなわち、このケースであれば、減損損失の発生はあくまで11月であり、8月にさかのぼって修正する必要があるのか?というのが私の疑問です。
もっとも8月末の時点で譲渡の意思が固まっており、資産評価も終わっていた、とか、そもそも使用価値で計算してもやはり損失は生じていた、というのならば別ですが、それであれば最初から8月末の決算に織り込んでいなければならないものであり、修正後発事象の発生というよりは、それは単なる会計基準の適用誤りではないかと考えます。
個人的には、不可抗力によるものであればともかく、事後の取引にかかる取締役会決定のたびに、既に公表した財務諸表をいちいち修正しなければならない、というあたりに激しく抵抗を覚えるのですが。
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 日興の不正会計課徴金5億円命令(1/6 日経)(2007.01.17)
- 12月の新聞記事より(3)(2007.01.09)
- 12月の新聞記事より(2)(2007.01.08)
- 12月の新聞記事より(1)(2007.01.08)
- 米、過剰規制を見直し・企業改革法緩和へ(12/1 日経)(2006.12.01)
Comments