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ダイレクトレポーティングは不採用って?(2)

(自動エントリです)

まず、前回の訂正より

ありていに言えば、米国の内部統制監査報告書は「当該企業の内部統制は有効に機能している」という報告書になり、日本のそれは「当該企業の内部統制は有効に機能しているという経営者の意見は正しいと認められる」という報告書になります。

やや不正確でしたね。米国の監査報告書でも経営者の意見に対する評価は行います(というか、あくまでメインはこちら)ですので、正確には「当該企業の内部統制は有効に機能しているという経営者の意見は正しいと認められる。そして、当該企業の内部統制は有効に機能している」という表現になります。

さて、ダイレクトレポーティングに関して、少し前にこちらのサイトに考察があります。

米国が内部統制監査報告書においてダイレクトレポーティング方式を採用した理由(まるちゃんの情報セキュリティ気まぐれ日記)

ここでPCAOBの基準が引用されています


=====
PCAOB No.2 APPENDIX E
BACKGROUND AND BASIS FOR CONCLUSIONS

E17. The Board concluded that the auditor must obtain a high level of assurance that the conclusion expressed in management's assessment is correct to provide an opinion on management's assessment. An auditing process restricted to evaluating what management has done would not provide the auditor with a sufficiently high level of assurance that management's conclusion is correct. Instead, it is necessary for the auditor to evaluate management's assessment process to be satisfied that management has an appropriate basis for its statement, or assertion, about the effectiveness of the company's internal control over financial reporting. It also is necessary for the auditor to directly test the effectiveness of internal control over financial reporting to be satisfied that management's conclusion is correct, and that management's assertion is fairly stated.
=====

おそらく、ここがポイントなんでしょうね。

An auditing process restricted to evaluating what management has done would not provide the auditor with a sufficiently high level of assurance that management's conclusion is correct.

経営者が行ったことだけに監査プロセスが限定されるのであれば、経営者の結論が正しいことについての十分に高い保証を得ることはできないであろう、ってことですね。ですのでdirectlyに testすることが必要である、ということ。

では、日本の内部統制監査が「An auditing process restricted to evaluating what management has done」なのか、ということですが、

たとえば、以下「Ⅲ.財務報告に係る内部統制の監査(案)」より長文引用しますが


ロ. 業務プロセスに係る内部統制の運用状況の検討

監査人は、評価対象となった業務プロセスについて、内部統制が設計どおりに適切に運用されているかどうか及び統制を実施する担当者や責任者が当該統制を有効に実施するのに必要な権限と能力等を有しているかどうかを把握し、内部統制の運用状況の有効性に関する経営者の評価の妥当性を検討する。

a. 運用状況の検討の内容及び実施方法

監査人は、評価対象となった業務プロセスに係る内部統制の運用状況を理解しなければならない。そのため、監査人は、経営者の内部統制の運用状況に関する「Ⅱ 財務報告に係る内部統制の評価及び報告」3.(7)に記載の内部統制の記録を入手し、関連文書の閲覧、適切な管理者又は担当者に対する質問等により、内部統制の実施状況及び自己点検の状況を検証する。また、記録の閲覧や質問等では検証が困難な場合には、業務の観察や、必要に応じて適切な管理者又は担当者に再度手続を実施させることによって検証する。以上の手続については、基本的に、監査人自ら選択したサンプルを用いた試査により適切な証拠を入手する方法で行われる(例えば、日常反復継続する取引について、統計上の正規分布を前提とすると、90%の信頼度を得るには、評価対象となる統制上の要点ごとに少なくとも25 件のサンプルが必要になる。)。その際、例えば、反復継続的に発生する定型的な取引について、経営者が無作為にサンプルを抽出しているような場合には、監査人自らが同じ方法で別のサンプルを選択することは効率的でないため、経営者が抽出したサンプルの妥当性の検討及び経営者による作業結果の一部についての検証を行った上で、経営者が評価において選択したサンプルを自ら選択したサンプルの一部として利用することができる

「基本的に、監査人自ら選択したサンプルを用いた試査により適切な証拠を入手する方法で行われる」というところがポイント。経営者が行ったサンプリングをなぞるのではなく、あくまで内部統制の有効性に係る証拠を得るために自らサンプリングを行うというのが原則です。となれば、これは「An auditing process restricted to evaluating what management has done」ではなく、「directly test the effectiveness of internal control」の方ではないかと考えるのですが、いかがなものなのでしょうか。

確かに「経営者が抽出したサンプルの妥当性の検討及び経営者による作業結果の一部についての検証を行った上で、経営者が評価において選択したサンプルを自ら選択したサンプルの一部として利用することができる」ということが書かれていますので、書かれていないよりはサンプルサイズを軽減することは可能なのでしょう。しかしながら、少なくとも「全部」を経営者のサンプリングにゆだねることはできないのは明らかです。で結局この「一部」がどれくらいのものであれば合理的であるのかはこれからの実務の積み上げになるのでしょうから、ダイレクトレポーティングの不採用が企業負担の軽減になるのか、はたまたダイレクトレポーティングの不採用は換骨奪胎なのか、の判断はこの「一部」の解釈次第になるのではないでしょうか。

また、通常監査の計画は前年度までの積み上げがある程度ベースになっているかと思います。昨年までちゃんとやっているところは今年の監査手続は少なくてもよい、といった判断が当然に含まれるかと思います。といったときに全く白紙から始まる初年度の内部統制監査において「経営者が抽出したサンプルの妥当性の検討及び経営者による作業結果の一部についての検証」というのは厳しめに判断せざるを得ないのではないかと考えます。となると監査人の証拠入手において経営者のサンプルが使用できる範囲はそれほど大きくないのではないでしょうか。

てなことを考えると、ダイレクトレポーティングの不採用による企業負担の軽減も、換骨奪胎度もそれほど大きいものではないのではないか、というのがとりあえずの私の感触です。

読み込みが(特に米基準の)甘いところが当然にあるかと思いますので、いろいろ識者の方に教えていただければと思っています。

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Comments

たびたびすみません。こちらを読み落としていました。

なるほど、DRがない日本基準でも、「基本的に、監査人自ら選択したサンプルを用いた試査により適切な証拠を入手する方法で行われる」ということなのですね。それでは確かに、ダイレクトレポーティングの不採用による企業負担の軽減はあまり感じられない気がします。ちなみに、米国実務でのDaily Transactionの監査人側のテストはサンプルを16-25(クライアントのリスクに応じて増減)とることを求められており「90%の信頼度を得るには、評価対象となる統制上の要点ごとに少なくとも25 件のサンプルが必要になる」という記載はそれより若干厳しい気さえいたします。

非常に勉強になりました。ありがとうございます。

Posted by: lat37n | 2006.11.23 at 12:14 PM

lat37nさん、はじめまして。
秘かにブログ愛読しております。
今後ともお付き合いのほどを。

さて、2回に分けたエントリでしたので、わかりにくかったと思いますが、趣旨を汲み取っていただいたようで幸いです。

結局ここのサンプルのとり方でずいぶん変わってくるものと思います。そんな細かいところまでは実務指針は明示しないでしょうから、実務の積上で判断されることになるのかと思います。「DRの不採用」だけでは一概に判断できないかと。

Posted by: KOH | 2006.11.23 at 05:48 PM

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