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会計基準に揺れるROE(5/17 日経金融)

・・・ただ、経営成績や財務体質が適正でも当てる物差しが変われば企業像も変化することはある。典型が会計基準だ。今月施行された新会社法に基づき、会計基準にはいくつかの変更点が待ち構えている。

多くの企業に影響を及ぼす変更点の一つが「少数株主持ち分」の扱い。今月以降に決算期末を迎える企業の貸借対照表では「資本の部」(株主資本)が廃止され、代わって「純資産の部」が新設される。従来「負債の部」に計上していた新株予約権のほか、負債と資本の中間に位置していた少数株主持ち分も、純資産に含まれるようになる。

これは、資本と負債を明確にする国際的な流れに沿った改訂とされる。だが、株主資本利益率(ROE)にはマイナスの影響が出かねない。少数株主持ち分などを含む新基準の純資産は、現行の株主資本より多くの項目を含むため、通常は金額が膨らむ。ROEの絶対水準が切り下がり、日本企業の魅力を乏しくさせかねないわけだ。「外国人投資家はとくにROEを重視するため、大幅に低下する銘柄には悪材料」との指摘があった。

東証一部上場企業を対象に、影響額が大きい少数株主持ち分に絞って「純資産」を試算してみた。それによるROEの変化が左の表だ。ROE低下幅の大きい五十銘柄でポートフォリオを組むと、昨年対比の投資リターンは足元でマイナス五.一%。東証株価指数(TOPIX)を七ポイントも下回る。

会計基準の変更ででROEが変わってしまうとのこの記事。引用はしませんが、具体的にROEの変動が予想される企業の表を掲げています。これらの株式のパフォーマンスは平均より下回っている、とのことですが・・・

あげられている企業は某スーパーとか、某ハウジング会社とか。これって、過去累損を重ねてきた会社で、株主資本自体がものすごく弱っているのではないかと。すなわち、単に過小資本だから株価のパフォーマンスが悪いだけ、というような気がします。分母がもともと小さいと分母が動いたときのインパクトが巨大になりますからね。

こうしてただでさえ個人的には胡散臭いと思っている指標であるROEがさらに少数株主持ち分によって暴れるということになると、さらに使いにくい指標になりますね。少数株主のいる会社に大損を出させれば、少数株主持分が減少し、純資産は減少するけど、連結純利益は少数株主損失分は含まれなくて底上げされる。これぞ究極の「分母対策」(これが言いたかっただけなんですけど・・・)。

もっとも、この記事中にもあるのですが、決算短信や、有価証券報告書に記載されるROE(自己資本利益率)の定義は、従来のものと変わらないものになります(正確に言うと若干違うのでまた面倒なのですが)。連続性は途切れないという建前です。変えないために「自己資本」という定義を新たに作りました。とはいえ実務家にとっては(利用者にとってもかと思いますが)純資産≠株主資本≠自己資本という定義は甚だ複雑であり面倒だなというのが率直な感想です。

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見かけの業績、株価かく乱(2)

見かけの業績、株価かく乱(2)

旭化成株をめぐり、誤解に基づく株価の波乱があったのは九日から十日にかけてのことだ。・・・

誤解の元は「年金数理差異の償却」。これまでは発生した翌期に一括計上していた差異を、今期から十年間での定額償却に変更。結果として、事前の予想で二百億円程度になると見られていた年金による利益上乗せ効果が、実際には二十五億円にとどまってしまったのだ

以前取り上げましたが、旭化成は保険数理上の差異の償却年数を1年でやってきました。これは2003年3月期から変更した処理です(同期の決算短信のp19参照)

今回の変更につき、決算短信(p26)では以下のように書かれています。

当社及び一部の国内連結子会社は、従来、退職給付会計における数理計算上の差異をその発生の翌連結会計年度に1年間で費用処理してきた。しかし、当初想定した範囲を上回る国内外の株式市況の高騰、下落などを背景に、毎期多額の年金資産運用の利差損益(数理計算上の差異)が発生した。数理計算上の差異を1年間で費用処理することにより、営業費用に多額の数理計算上の差異に係る費用処理額が含まれることとなった結果、営業利益、経常利益、当期純利益の変動要因の相当部分を数理計算上の差異に係る費用処理額が占める状態になっている。このため、利益水準の変化が必ずしも事業業績の動向・評価を端的に表さないこととなり、表示の明瞭性から望ましくない状況を招いている。
また、数理計算上の差異を長期間で費用処理する方法を採用することにより、株式市況の高騰、下落に起因する年金資産運用の利差益、利差損を長期的に相殺する効果が生じるが、近年の年金資産運用の利差損益(数理計算上の差異)の発生状況を鑑みると、数理計算上の差異を長期安定的に費用処理していく本来の退職給付会計の考え方に、より適合する経済環境になってきている。

前段は何を今更、という感じです。株式市況が想定の範囲で推定すれば苦労はありませんて。だからこそ、遅延認識という会計処理を認めているわけでして。3年で会計処理を元に戻す理由としては極めて弱いかと。
後段も同様。「より適合する経済環境」とはいったい何なのか。株価が乱高下する時代になったということでしょうか?説明が欲しいところですな。意地悪ですが。

まあ、過去の過ちを正したのだ、と前向きに評価しましょう。

もっとも以前の記事で書いたとおり、国際的には保険数理上の差異の遅延認識というものは廃止される方向で検討が進んでいるようです。現在の有価証券評価損益と同様の扱いとなる(実際IFRSではその処理もすでに認めています)というのが最終的な落としどころであると思っているのですが、こうなったら日本の資本の部、おっと失礼、「純資産の部」に多大な影響を与えるでしょうね。

(written on May 28)

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見かけの業績、株価かく乱(5/19 日経金融)

十八日の日経平均株価は一時、約二カ月ぶりに一万六〇〇〇円を割り込んだ。米国株の急落が投資家心理を冷やしたのが直接の原因だが、期待の高かった企業業績に不透明感が漂い始めたのも響いている。十八日時点の日本経済新聞社の集計では、二〇〇七年三月期の予想連結経常増益率はわずか一・二%。株価押し上げどころか、下支えとしても力不足に見えてしまう。
 だが、会計上の技術的な要因で表向きの予想数字が実態を反映していない企業がある点には注意が必要だ。決算発表シーズンに入って「会社側の予想が事前の市場予測を上回れば買い、下回れば売り」といった機械的な事例が目立つが、表面上の数字だけに着目した誤解に基づく株式売買では、やけどを負うことにもなりかねない。

槍玉に挙げられているのは二社。

新日本製鉄が先月二十八日に発表した今期の予想連結経常利益は、前期より八百七十四億円少ない四千六百億円。だが、前期に八百三十億円あった評価益を今期は見込んでいない。つまり減益の大半は会計上の要因だ。設備改修費など一過性の費用も加味すると、新日鉄は実質的に増益の予想を出したことになる。

ということなので、決算短信を見てみたのですが、今期多額の評価益が出ている旨の記載は見当たりませんでした。そこで決算発表資料のほうを見てみますと、6ページのグラフの説明において「上期原料キャリーオーバー+200、在庫評価差+400、下期在庫評価差+180」との記述があります。キャリーオーバーと在庫評価差の違いがよく分からない、830億円すべてが在庫評価益ではなさそう、などの疑問はありますが、まあ記事の内容に大差はなさそうです。プレゼンで発表しているからいいのかもしれませんが、短信でまったく開示がないというのは若干不親切である印象を受けます。すくなくともセグメント別に一過性のものがいくらであるのか、というのは発表資料からでは分かりません(まあほとんど鉄鋼分野であることは推定できますが)。

いろいろ書こうと思ったのですが、ちょっとまとまらないので備忘としていったん上げておきます。

(written on May 28)

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FASF設立5周年記念講演会-資本市場のグローバル化と財務報告-

FASF設立5周年記念講演会-資本市場のグローバル化と財務報告-

前のエントリで、米国会計基準審議会(FASB)と企業会計基準委員会(日本)(ASBJ)が協議を開始したことを紹介しましたが、そのついで?に、FASBのメンバーの記念講演会が開催されました。

FASF設立5周年記念講演会-資本市場のグローバル化と財務報告-の開催について

当財団では、財団設立5周年記念事業の一環として、我が国の市場関係者に国際的な会計基準の最近の動向を身近に感じていただけるよう、第1回定期協議のために来日するFASB議長のロバート・ハーズ氏及びFASB委員のマイケル・クルーチ氏を迎えて、下記の要領で「資本市場のグローバル化と財務報告」と題する記念講演会を開催することと致しました。つきましては、諸事ご多用のことと存じますが、多数ご出席くださいますようご案内申し上げます。

このロバート・ハーズ氏の講演、まとめようとしていたところ、実はFASBのサイトに全文が掲載されているようです。「ようです」と書いたのは、ヘタレな私は同時通訳の方に耳を傾けていたため、英語でどう言っていたかは定かではないからです。

Tokyo International Conference May 19, 2006

On behalf of my fellow Board member Michael Crooch, our Director of Major Projects, Sue Bielstein, and myself, let me say how wonderful it is to be here. It is emblematic of our commitment to work with other standard setters around the world to both converge and improve accounting and reporting standards. And certainly we view the ASBJ as a key accounting standard setter given the importance of your economy and capital markets.

から、始まるこの講演。原文があると分かったらまとめるのが面倒になったので(笑)、興味のある方は原文を読んでください。来日スピーチですので、基本的には日本との協議開始について歓迎するというスタンスで話されています。根気の要る作業で、痛みも伴うかもしれないがとにかくやっていこうと。

次に、FASB委員のマイケル・クルーチ氏の「FASBの最近の活動状況」について。以下の活動について言及されましたが、とくに目新しい情報はなかったかとおもいます。

・概念フレームワークの改訂
分かりにくい部分、それぞれ矛盾する部分の改定を行っているとのこと。

・企業結合について
IFRSとの共同提案につき、全部のれんの計上(部分のれんからの変更)、買収費用の処理(取得価額処理から期間費用処理への変更)、少数株主持分の表示(明確にequityの一部として認識する)などの説明がありました。

・財務諸表の表示について
当期純利益を表示するのか、表示するのであれば包括利益との関係をどのように表示するのか、というあたりが論点となっているとのこと。決定しているのは期首のB/Sの表示を強制することであるそうな。つまり、規制当局が連続した2期間の財務諸表の開示を求めている場合、3種類(前期期首、前期=当期首、当期末)の貸借対照表が必要となるということになるのであろう。

そして、コンバージェンスについては、プロセスはうまくいっているものの、あまりに歩みが遅い、というコメントを発されていました。個人的には思ったよりテンポ良く進んでいると思っているのですが・・・。

最後はわが国ASBJ斎藤委員長のお話。日本におけるコンバージェンスの取り組みと、1年半くらい前に出た討議資料「財務会計の概念フレームワーク」についてのお話。日本のコンバージェンスの取り組みについてはこのブログでも何度か取り上げているので省略。討議資料についてはかなり前のエントリで紹介しております。今回改めてということになったのは、コンバージェンスの検討には概念フレームワークの明確化が不可欠という立場から、基本概念専門委員会というのが発足し、あらためて真剣に検討しましょうということになったからでしょう。これについてはこれからネタがいろいろ出てくるかと思います。

(written on May 28)

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SEC、中小にも適用へ 内部統制ルール(5/22 日経)

米証券取引委員会(SEC)は企業改革法の柱である内部統制ルールについて、大企業に比べて費用負担が過大として焦点になっていた中小企業にも例外なく適用する方針を発表した。中小企業へのルール適用緩和や免除を訴える提案が諮問委員会から出ていたが、事実上却下した。SECは近く、規則を適用する際のガイドラインを企業に示す。

最近の報道などを見て、中小企業への適用緩和は既定の流れかと思っていたのですが、どうもそうではなかったようです。日本ではもともと中小企業への適用緩和という話はないようですが、多少なりとも期待していた方は落胆でしょうし、逆に商売につなげようという方には朗報でしょうね。

と、取り急ぎ備忘のみ

SECのプレスリリースはこちら

(written on May 25)

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企業会計基準委員会と米国財務会計基準審議会がグローバル・コンバージェンスを目指して協議を開催

企業会計基準委員会と米国財務会計基準審議会がグローバル・コンバージェンスを目指して協議を開催

5 月18 日及び19 日、企業会計基準委員会(ASBJ)と米国財務会計基準審議会(FASB)は、国際的なコンバージェンスを目指した相互の対話を促進するため、それぞれの代表者による協議を東京で開催いたしました。この協議は今後定期的に開催される予定であり、今回の協議はその第一回目であります。

これ以下の内容を見ると、お互いの自己紹介というような感じで、あまり具体的にどうこうといった話はできていないようですが、何はともあれ対話にこぎつけたということで画期的なことなのでしょう。IASBとの対話も回を重ねるうちにそれなりの成果が出ている(といっても日本側が歩み寄る話がほとんどですが・・・)ようですので、次回あたりからは具体的にどの会計基準を槍玉に挙げようかという話が決まってくるのでしょう。

この協議のあと、FASBメンバーを囲んだセミナーが開かれていますが、これについては別稿で。

(written on May 25)

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