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2009.03.15

【映画】男はつらいよ 寅次郎相合い傘 (第15作)

3/15 川崎チネチッタ

幾多の方々が書いていて、今更陳腐な言葉を重ねるまでもないのですが、紛れもないシリーズ指折りの名作でしょう。チネチッタでの連続上映は6月まで続くのでそれまでは順位付けできませんし、終わったところで順位付けなど野暮なことはしないつもりなのですが、まず確実に5本、そしておそらく3本の指には入ることになるでしょう。もっとも第11作を見てなくては分からない、(いや、観ていなくてもストーリーはつながるでしょうが、味わいは半減するでしょう)という欠点がありますので、この一本というのには勧めにくいところがあるのですが。

とにかく、映画を流れるテンポがやけにいいです。冒頭の夢のシーンはさておき、テーマ曲以降はだいたいマドンナとは比較的関係の薄いサブストーリーから入り、後にマドンナのメインストーリーにと続いて行くのですが、今回は冒頭からリリーさんが登場し、あとはほとんど出ずっぱり。横道それたサラリーマンの「パパ」のサブストーリーはありますが、それはメインストーリーとは密接不可分のものとして進行していきます。マドンナが出ずっぱり、しかも二度目の登場とあれば、ただでさえパターン化されているこのシリーズ、二番煎じとしてだれる部分が出てきてもおかしくないのですが、終幕まであっというまに突っ走ってしまいます。

最後のほうから遡ると、まず「さくらの勇み足」。
なんだかんだ言っても結局兄想いのさくら、その熱意によって何とかリリーさんの想いを引き出すことができたのですが、それをその場に帰ってきた兄にストレートに伝えてしまう。兄の性格を考えれば、そこで手放しにそれを受け入れるはずがないことは分かりそうなものですが、兄の幸せを願う気持ちがそれを盲目にされたのでしょう。ストレートな伝え方をされた寅は「冗談だろ」と流してしまい、リリーさんは「そ、冗談」と煙に巻いてしまう。この二人がこの場で、他にどういう台詞を言えるのでしょうか。この後のシーンでもその行動を悔やむ台詞が出てきますが、明らかに「さくらの勇み足」であるところが、なんとも切ない思いに駆られます。もっともさくらは引き金を引いたに過ぎず、遅かれ早かれこういう運命にはなっていたのでしょうけれども。

題名にもなっている「相合い傘」。
美しいシーンです。某所に動画が上がっていました。何度も観かえしました。山本直純さん、あの顔からどうやって「リリーのテーマ」みたいな叙情的な曲をひねり出すのでしょうか。

「メロン騒動」
たしか、サザエさんにもメロンを家族全員の7等分にしようとしているときに、マスオが腹痛を起こしたのだが、その心配をする前に、サザエが「6等分に変更」と言ってしまい、マスオがふてくされてしまう、というネタがあったと記憶しています(注:記憶は確かなようです。(おやつの行方 参照))。これほどまでに気を使うメロンの分け方。数の入れてもらえなかった寅、それもメロンを受け取った張本人なのですから、拗ねるのはある意味当然。しかし、その正当性をもばっさり斬ってしまうリリーさんの小気味いい啖呵。「ろくでなしのあんたを、大事にしてくれる家がどこにあるってんだ」。おいちゃんや博まですっとしてしまうまさに本音。これだけ本音で啖呵が切れる女性はマドンナではもちろん彼女だけで、あとは実母役のミヤコ蝶々さんを数えるくらいでしょう。しかし、流れ者でありながら帰る家がある寅と、それがないリリー。第11作での別れの原因がまたここで繰り返されるのでした。

「寅のアリア」
この言葉自体このシリーズを重点的観だした最近知りました。で、だいたいはとらやの面々を呆れ返らせるというオチで終わってしまうのですが、今回のアリアはおばちゃんがもらい泣きしてしまうくらいの感動的なもので、珍しくも周りの人々を温めて終わってしまうのです。いつもは寅の人生観が滑稽な形で表れるアリアですが、今回は相手を思いやる気持ちがストレートに出ている異色のものでした。「金があったら想い人の夢をかなえてあげたい」。時代を超えて今でも通じる美しい人の心です。

「出会いと別れ」
言葉とは、強くそして儚い。劇的な再会をした寅とリリー。「あれから何してたの?」「恋していたのよー」。こんなテンポのいい会話ができる二人。それなのに、そのテンポに甘えてしまうと言っていいことと悪いことの区別がつかなくなる。「ホントは捨てられたんだろう?」、このひと言でテンポのいい会話と、二人の仲が急速に失われていく。言葉って本当に恐ろしい。実生活でも自戒の念に駆られてしまいます。

まだまだ書きたいことはありますが、「今昔物語」としてあと3題

・ 「パパ」を演じる船越英二さん。子持ちの昔の想い人に息子がいて幸せそうな姿を見て立ち去ろうとします。25年後、息子の船越英一郎さん、子持ちの松居一代さんと結婚します。
・ そういえば、冒頭に出てきて、「立ってるだけで金が入ってくるんだったら・・・」とタコ社長をうらやましがらせたエリザベス女王。それに対して「いろいろ苦労があるんだよ」とおばちゃん。これから始まるチャールズ皇太子一家の紆余曲折をおばちゃんは御見通しか?
・ 冒頭の夢は海賊船。34年のときを経た今、まさか新聞の一面に海賊対策が出てくる時代になるとは・・・

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» 『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」□監督・原作 山田洋次 □脚本 山田洋次、朝間義隆□キャスト 渥美清、倍賞千恵子、浅丘ルリ子、船越英二、下條正巳、前田吟、笠智衆、三崎千恵子、太宰久雄、佐藤蛾次郎、九里千春、早乙女愛、岩崎加根子■鑑賞日 3月20日(金)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★★(5★満点、☆は0.5)<感想>  『男はつらいよ』40周年を記念して行われている松竹のプロジェクト。 昨年夏から全国各地で再上映がされています。 川崎のチネチッタでもその上映が始... [Read More]

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