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原則主義への対応と解釈指針の役割

企業会計3月号。すでに1月前の号となっていますが、特集が「IFRS導入のインパクト」でIFRSネタの宝庫となっています。その中からIFRICの委員である鶯地さんの論考。IFRICとは国際財務報告解釈指針委員会、つまりIFRSの解釈の指針を決めるところです。そこがどのような方針で動いているか、そしてそれに日本がどう絡んで行くべきか。まとめてみました。

原則主義の特徴と利点ということで、以下の点が挙げられています
・ 法律を前提としたルールを作らない
・ 数値基準を唯一の判断基準としない
・ 産業別、商品別といった個別のルールを作らない
・ 判断基準となるものの確証や証跡の形式を限定的に定めない
・ ルールに不明確な点があれば概念フレームワークに立ち返って判断する

つまり、この数値を越さなきゃ大丈夫、この確証をそろえれば大丈夫、といった解釈を認めないということであります。迷いがあったら常に基本に立ち返る。ある意味宗教的な信念をも感じます。

しかしながら、基本に立ち返っても複数の解釈が成り立つ場合には、複数の会計処理が成り立ち、財務諸表の比較可能性が失われます。ダイバージェンス(divergence)と呼ばれるこの問題、それぞれの企業がベストの判断をしているはずであり、多少の違いであれば許容範囲内にあるのが通常ですが、ときにそれが市場の信頼を逸するほどに大きな差異が生じると判断された場合、IFRICの出番となるわけです。

といっても、解釈指針を公表すれば、その解釈指針をさらに解釈する指針が必要になる、というように、解釈指針を乱発すれば、結局それは原則主義から大きく逸脱したものとなってしまいます。したがってIFRICでは取り上げるべき判断基準を明確にし、公表する指針数は極めて限定されたものとなっています。この論考ではいくつかの判断基準が挙げられていますが、逆に取り上げられなかった理由として以下の2点が主なものとしています

・ 重要性がないもの
・ IFRSの基準が明確であると判断されるもの

そして、もともと複数の会計処理が考えられるためIFRICの俎上に載せようと考えていた事象が、後者と判断された場合、解釈は1つであり、他の選択肢は明らかな誤りということになってしまい、過年度の財務諸表の修正等、影響が大きいものになる、と指摘されています。原則主義の怖いところと言えるかもしれません。

そして、限定された議題しか取り上げないIFRICでは、現在適用が義務付けられている欧州企業の声が大きくなる傾向にある。そのような積み上げがアダプション後の日本に悪影響を与えることを危惧しています。実際に適用する企業からのコミュニケーションの絶対量が足りないことを切に訴えています。住友商事に在籍したままIFRICの活動を行っている鶯地さんだからこういった危機感を肌で感じることができるのでしょう。

そして、財務諸表の「読者」に対しても、財務諸表を「解釈」する能力が必要であり、原則主義というのは財務諸表の読者の力量も試すものであるとしています。総資産がいくら純利益がいくら、という数値だけではなく、注記情報を含めた全体像を読みこなす力が求められるというわけです。

作者であり、読者でもある私にとってはなかなか耳の痛い意見でありました。

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