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【映画】男はつらいよ 寅次郎紅の花(第48作)

6/13 川崎チネチッタ

ついに終わってしまいました。半年間見続けてこれがラスト。公開した24作中23作観ることができました。1作見逃したのがなんといっても残念。

平成7年というごく最近の作品。平成7年。いろいろなことがあった年である。阪神大震災、オウム真理教事件といった事件があったと思えば、個人的には結婚、長男誕生、残業をたまにする職場から終電が常識の職場への異動、パソコンを初めて買ったのもこの年。何もかも既存の価値観を覆す出来事でありました。

そして、そんな年の年末に公開されたこの作品。本作が最終作ということで、いろいろあった平成7年に社会的にも個人的にも記憶を残す1作となりました。

しかしながら、明らかに寅次郎、というより渥美清さんがしんどそうなのが傍目から見ても分かります。動きのある演技がほとんどない、リズム感のある台詞回しもない、アップを見せられても顔の色艶が悪いです。公開当時も観ているのですが、当時はそんなところには気付かないでいました。半年間見続けた身からすると、観ていてつらいところがあります。

そんな状況の中でも、作品を作り上げて行くことができるのが、さすが48作重ねたチームならではです。マドンナには4回目のリリー、浅岡ルリ子が起用されます。忘れな草(11作)、相合い傘(15作)、ハイビスカスの花(25作)を重ねて、そのすれ違いにやきもきしながら観てきた身からすると、

「男が女を送るって場合はな、その女の玄関まで送るってことよ」

この台詞にて、リリーさんシリーズについても結論が出て一安心ということになりました。ラストではまたぷいと出て行った寅さんですが、またいずれはリリーのところへ帰ってきそうな予感を残して終わります。

また3年ぶりの後藤久美子を迎え、満男と泉シリーズも復活しました。これも、満男が泉の結婚式をぶち壊すという反則技にて一応の結論を出したことになります。満男の告白のあとの泉の笑顔がたまらなく魅力的です。まあ、今日本で本人を見ることができないので美化されているのかもしれませんが。ちなみにアレジとの交際が始まったのはこの頃のようです。

まあ、結婚式ぶち壊して、そのまま行方をくらました若者に対してみんな温かいです。会社まで休暇扱いにしてくれて、何という温情。こういう突っ込みもできますが、まあ目をつぶりましょう。

そして、舞台となった奄美の加計呂麻の風景が実にすばらしい。元ちとせさんの島唄が流れていたのは、平成7年の当時では分かるわけもなく。「ワダツミの木」が全国的ヒットするのはその7年後のこと。島唄、焼酎、島バナナ。すべてが旅情を誘います。14年の月日が経ってどうなっているのかは分かりませんが、ふらっと出て行きたくなるところです。
http://shodon.exblog.jp/8600621/

というわけで、半年間の楽しみが終わりました。もっとも、まだ半分の作品を観たに過ぎません。非上映だった作品をこれからDVDで観て行くことになります。これから関連書籍も読んでいきます。まだまだ修行?の日々は続きそうです。

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男はつらいよ 寅次郎の縁談(第46作)

6/6 川崎チネチッタ

前回から満男と泉の恋愛話は合計4作の間続きますが、チネチッタはそのあたりは効率的にすっ飛ばして、本作の上映を選んでいます。

舞台は平成5年。前回平成元年に浪人だった満男が大学4年となり、就職活動中。バブル崩壊後という世相もあり、就職活動には相当難儀しているところからスタート。

香川県の琴島(志々島http://www.city.mitoyo.lg.jp/hf/shishijima/jiman.htmがロケ地らしい)へ現実逃避する満男とくるまや面々の期待と不安を背負って満男を連れ戻しにいく寅次郎の島での人間関係とほのかな恋模様が主題。

マドンナは松坂慶子演じる葉子さん。しかしながら、瀬戸内の島の舞台といい、夜の商売の設定といい、寅さんとの神社での参拝シーンといい、そして、積極的な女性と逃げ腰の寅さんという設定は、第27作で松坂さんが演じたふみさんがかぶります。

満男の相手は城山美佳子演じる亜矢さん。よく知りません。そういえばパンプキンというグループがいたようないないような・・・。

納屋でのキスシーンまで演じる二人ですが、結局満男は島の生活ではなく、東京に戻って就職活動をするほうを選びます。その割には東京に戻る決断が割とあっさりしています。その辺がやや消化不良のような気がします。葉子さんとの絡みが原因ならあまりにも亜矢さんがかわいそう。

対して、体調は以前思わしくないはずの寅さんです。長い石段を登るシーンは演技でなくしんどそうですが、その割には好調な演技が見られます。いつもの惚れっぽさと、定番となったあっさりした引き際はいつもながら。
「満男、これが一生就職をしなかった人間の成れの果てだ。」のアリアにも笑わされます。

その他
・なぜか西田敏行が「浜ちゃん」役で出演
・すでに故人となった笠智衆の代わりに娘役の光本幸子が出演。第1作のマドンナでもあり、正月から観続けてた身としてはいろんな思いが・・・
・当時88歳の島田正吾さんが熱演。前年「ひらり」での長丁場を乗り切った余勢か。


ところで、なぜ寅次郎の「縁談」なのでしょう。リアルタイムで観たときも分からなかったし、今観なおしてもやっぱり分からなかった。いろいろ調べても分かりません。

さて、次回が最後の第48作です。

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男はつらいよ ぼくの伯父さん(第42作)

5/30 川崎チネチッタ

正月から見始めてついに、リアルタイムで観た映画までたどり着いてしまいました。
そして自分にとっても記念すべき作品。3か月の放浪のたびに出た末に日本に帰ってきてみて、改めて日本を感じた象徴的な作品。そして舞台挨拶を見た最初の作品でもあります。
ついこの前のことだと思っていたのですが、すでに20年がたちます。

しかし、今回初期の作品からずっと観てきてみると、登場人物に老化が忍び寄っているのが明らかに分かります。まあ、前回が35作目で5年分くらい飛んでいるので無理もないのですが、くるまや(いつの間にかとらやより改名)の面々は一気に老け込んだ感じですし、太宰久雄さんもかなり痩せてきてしまっている(ただし佐藤蛾次郎さんだけはよく分からない)。逆にレギュラーではない夏木マリさんや笹野高史さんは現在と比べてしまうので妙に若く見えてしまうという不思議な現象を感じます。しかし、今や大河ドラマで秀吉を演じる笹野さんの気持ち悪い役どころが見ものでもあります。

そして、異人さんに連れられて行っちゃった後藤久美子が本作から4作連続でマドンナを務めるわけですが、当時15歳。悔しいけど今見ても可愛い。前回35作では中学生役だった満男こと吉岡秀隆はいきなり浪人生になって実質主役を演じています。今回は寅さんに覇気がない分だけ、かっこ悪い部分、身勝手な部分、情けない部分などを一手に引き受けています。子供のときの演技に比べればあまりぱっとしない演技であるようにも感じるのですが、このぱっとしない度合いもまた演技だったということなのでしょう。

そして、覇気のない寅さん。リアルタイムで観たときは分からなかったのですが、この頃からかなり体調に無理があった様子。明らかに出演時間を絞ったシナリオになっており定番の喧嘩も、恋もほとんどなく終わってしまいます。特にラストシーンでくるまやのメンバーと電話で次々と話すシーンは、この回で終シリーズを終わらせることもある程度考えていたのかな、とすら感じます。
そんななか、かっこ悪いシーンを満男に押し付けた寅さんは今回はひたすらカッコいい。

「私のようなできそこないが、こんなことを言うと笑われるかもしれませんが、私は甥の満男は間違ったことをしてないと思います。慣れない土地へ来て、寂し い思いをしているお嬢さんを慰めようと、両親にも内緒ではるばるオートバイでやってきた満男を、私はむしろよくやったと褒めてやりたいと思います」(from wiki)

言わずもがなのベタな台詞と評価する人もいますが、私は20年ぶりに聞いたこの台詞に痺れました。こういうことを言える伯父さんになりたいですね。って私一人っ子だから甥もいないのですが。

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