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収益認識に関する論点の整理

収益認識に関する論点の整理

「引当金」の論点整理と同日9/8に出てきたこの論点整理。
分厚さでは7月に出た日本公認会計士協会の会計制度委員会研究報告第13号「我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)-IAS第18号「収益」に照らした考察-」の公表についてのほうが詳細で実務よりですが、こちらはASBJですので、より概念に寄ったものです。

収益認識については、IASBから「顧客との契約における収益認識についての予備的見解」 (日本語)というDiscussion Paperが昨年の12月に出ています。これに対するコメントは既に締め切られており、2010年の第2四半期に草案を公開すべく議論が進められているようです。それに対して日本はどう対応しますか?というわけです。

この論点整理は第1章、第2章に分かれています。第1章では上記Discussion Paper(以下:DP)の考え方を紹介しています。そして第2章は総論と各論にわけ、総論はDPの論点と原稿モデルの比較をするとともに、以前ASBJが提出したコメントの概要を紹介し、各論では現行実務に及ぼす影響の可能性について整理をしています。

まず、第1章ですが、DPでの収益認識原則は、以下のとおりです

顧客との契約において、「契約資産が増加したとき又は契約負債が減少したとき(あ
るいは両者の組み合わせが生じたとき)」に収益が認識される。

「顧客とは」「契約とは」という議論はあるようですが、とりあえずおいて置いて、「契約資産の増加」「契約負債の減少」が収益認識のトリガーということです。

「契約資産」とは顧客から対価を受け取る権利であり、「契約負債」とは顧客に対して何らかのサービスを提供する義務となります。つまり対価を受け取る権利が増加したり、提供する義務が減る(すなわち義務の履行を完了した)時に収益を認識することになります。現行モデルでは「成果が確実となった時点」で収益を認識するとしています。収益を直接認識するような形です。IASのフレームワークは基本的に要件を満たす資産の増減を収益としていますので、今回の新しいモデルは、よりフレームワークの定義に近づけることになるのでしょう。

「契約資産」はなんとなく「先々もらえる金額」ということはわかりますが、「契約負債」はなかなかイメージしづらいですね。とくに、金額にするとなるとなかなかぴんと来ないものがあります。「契約負債」として認識すべき「履行義務」を金額であらわす、すなわち測定する方法について、IASBは2種類のアプローチを検討したとされます。

ひとつは「現在出口価格アプローチ」と呼ばれるものです。「出口価格」とは何ぞや、という議論は長くなるので置いておいて、要はその義務を第三者に引き受けてもらうには幾らかかるか、ということを考える測定方法ですね。

しかしながらこの方法は問題があります。例えば、100円もらえる仕事を受注して、その仕事を下請けに80円で出した場合、その80円が「出口価格」(=公正価値だと思ってくれればいいです)なのであれば、受注した時点で20円の収益が立ってしまいます。受注しただけで、何の仕事も始まっていないのに、いきなり収益が発生するわけです。さすがのIASBの人たちも、これってどうよ、と思ったらしく、「現在出口価格アプローチ」の議論は現在下火になっています。

というわけで当面つづく。

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