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引当金に関する論点の整理(2)


前回の続きです。

【論点3】測定

まず「現時点決済概念」か「究極決済概念」かという整理をしています。

「現時点決済概念」は負債の金額を決めるのに、現在その負債を誰かに引き取ってもらうにはいくら払う必要があるか、ということを考えます。

「究極決済概念」は将来その負債の相手先にいくら払う必要があるのか、ということを考えます

通常は、負債は第三者に引き受けてもらうわけではなく、相手先に支払うことにより決済されます。したがって「究極決済概念」に基づいたほうが実態の取引に即しているような気がするのですが、「公正価値」の伝道師であるIFRSは公正価値=第三者が引き受けてくれる価格=「現時点決済概念」での測定に改訂案ではこだわっています。

「究極決済概念」をとった場合、負債の金額は一番実現の可能性がある金額、最頻値が適当な測定方法となります。企業がいくらで決済しようと考えているかの金額で測定することになります。

一方「現時点決済概念」をとった場合、期待キャッシュフローによる測定が整合的になります。すなわち、いくつもの負債を引き受ける業者がポートフォリオの評価として用いる金額ですので、実際に企業がいくらで決済しようとしているかにかかわらず、確率を用いた期待値で測定するというわけです。

先ほどIFRSの改訂案では「現時点決済概念」の方針であると書きましたが、これは認識のところであった「蓋然性」とも繋がっています。つまり引当金を計上する要件として、「蓋然性がない」=0、「蓋然性がある」=1、という考え方ではなく、負債が存在するのだからとりあえず計上する、ただしその金額に発生確率を反映させる、という考え方が「現時点決済概念」での引当金計上の考え方になります。

たとえば、100億の訴訟を受けている場合で、ほぼ勝てる、敗訴の確率5%という場合。従来であれば蓋然性がない、ということで負債を計上する必要がなかったものと思います。ところがIFRSの改訂案では100億×5%の5億円の負債を計上することになります。

この5億という金額、実際にこの金額で負債を決済することはありません(まして訴訟であれば第三者に債務を引き受けてもらうことは実際には少ないのでは?)。この金額で負債を計上することに意味はあるのでしょうか。確かにいくつかの企業の株式を持つ投資家にしてみれば、ポートフォリオの評価としてこの金額は意味があるのでしょう。しかし、実際に企業の中の人であるわれわれが成績表としてこの金額を財務諸表に計上するのはどうも抵抗があるんですよね・・・・

ちなみにこの論点整理ではこの「現時点決済概念」「期待値方式」に傾き過ぎることにつき否定的な観点のようです。

そのほか、割引率についての議論。IFRSでは長期の負債を割り引くのが常識となっていますが、日本基準では必ずしも明確ではありませんので、時間的価値が重要であると考えられるときは、割引を求める方向に持っていくようです。

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引当金に関する論点の整理

引当金に関する論点の整理


「収益認識に関す論点の整理」も出ましたが、長くてまだ読んでないので、とりあえずこちらから。こちらのほうがマニアックそうだし。

IFRSには引当金で独立した基準IAS37があり、そして今もなお改訂途上にあります。一方日本では昔企業会計原則で定められた一文が今も燦然と輝いております。

「将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生
の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負
担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸
借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。」

これぞ、原則主義の最たるものではないかと思うのですが、なぜか日本の基準の場合は文章が少なければ少ないでまた叩かれます。というわけで、日本の基準をねたにして、IFRSのお勉強をしましょう、という最近の論点整理の流行を追った文書といえましょう。

この論点整理、論点を4つに分けております。

【論点1】定義と範囲 【論点2】認識要件

日本では商法の時代から負債の中から「引当金」を独立して扱うことに執念を燃やす傾向があります。「未払賞与」なのか「賞与引当金」なのかを規定している基準もあります。ただ、個人的にはその2つを切り分けることにはあまり意味を見出しません。フレームワーク曰く

「負債とは、過去の事象から発生した現在の債務で、その決済により、経済的便益を有する資源が企業から流出する結果となることが予想されるものである。」

というわけで、IAS37号改訂案は引当金を定義しておらず、金融負債以外の負債をひとつに括ってしまっています。そして負債というのは現在の義務(法的または推定的)であると規定しています。現在に何らかの義務があると言えないものは負債として計上できないわけです。その観点から企業会計原則に例示されている引当金を見ると、修繕引当金などは企業の意思決定により回避できるものであり、現在義務を負っているとはいえないことから、負債の定義を満たさないものだとされています。また役員退職慰労引当金については法律上の義務は株主総会承認後に発生するものであるが、現状を踏まえ取り扱いを検討する、というわけで結論を出しておりません。

また、認識要件から蓋然性の要件を削除しています、と書くとわかりにくいですが、要は発生の可能性の程度は問題としないということ。僅少でも(まあ重要性の基準は適用されるでしょうが)義務があるのであれば負債を計上する必要があるということです。限りなく発生確率の低い条件付債務でも、債務である以上負債の計上が要求されるということになるでしょう。

つづく。

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IFRS8月の動向

Source:http://www.iasplus.com/pastnews/2009aug.htm

26 August 2009: ED on improvements to IFRSs
http://www.iasb.org/NR/rdonlyres/BA0DC098-9956-49A3-990E-2573AE1ACF21/0/EDImprovementsFRS09.pdf

21 August 2009: ED on employee benefits discount rate
http://www.iasb.org/NR/rdonlyres/25D72699-B629-44EC-841C-2F02A1FBDBE5/0/EDProposedAmendmentsIAS19DiscountRates.pdf

13 August 2009: Extractive activities – draft discussion paper
http://www.iasb.org/NR/rdonlyres/23F1424B-05E4-4BD1-AFD8-382125765D8E/0/ExtractivesDPworkingdraft10August2009.pdf

7 August 2009: IFRIC proposal on debt extinguishments
http://www.iasb.org/NR/rdonlyres/974EE382-6274-4294-A92B-230D0504C26E/0/IFRICD25.pdf

7 August 2009: IASB ED on classifications of rights issues
http://www.iasb.org/NR/rdonlyres/DDAEFAC3-3C20-4EBA-AD71-D21170ADF0EF/0/EDIAS32Classificationrights.pdf

5 August 2009: Notes from the Special August 2009 IFRIC meeting
http://www.iasb.org/NR/rdonlyres/C68AD06C-349C-4E40-97ED-C7F04C66E41D/0/IFRICUpdateAug09.pdf

5 August 2009: Notes from Special 4 August IASB meeting
http://www.iasb.org/NR/rdonlyres/E9307811-DDB4-4276-8EF1-CA434BD47446/0/August2009IASBUpdate.pdf

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