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引当金各論-役員退職慰労引当金

注解18には他に損害補償損失引当金、貸倒引当金がありますが、前者は後で出てくる訴訟損失引当金とかぶりますし、後者は評価性引当金ですので、IFRSの引当金の範疇からは外れます。したがって、注解18に出てくる引当金の検証はこれで一旦は終了です。

この論点整理では注解18で例示している引当金の他にも、いくつか実務的な観点から取り上げるべき引当金を検討しています。これに沿った順番で検討を続けていこうと思います。今回は役員退職慰労引当金。

役員に対する退職慰労金については、通常従業員に対する退職給付引当金とは区別して計算されます。それは支給の根拠が異なるからです。従業員に対する退職給付引当金については、労働協約等で支給が義務付けられているのですが、役員に対する退職金については通常契約に基づいて支給されるものではなく、株主総会の決定により支給されるものだからです。株主総会で決定されて初めて契約上の債務になるわけですから、役員在任期間中には契約上の債務は負っていないわけです。従ってその期間中に引当金として計上すべきかどうかは議論があります。

ただし役員退職慰労金を支払っている会社は現実的にはそれに関する内規を定め、それに基づき金額を計算しているのが通例です。したがって、監査・保証実務委員会報告第42号「租税特別措置法上の準備金及び特別法上の引当金又は準備金並びに役員退職慰労引当金等に関する監査上の取扱い」においては、注解18の要件を踏まえ、以下の場合においては各事業年度の負担相当額を役員退職慰労引当金に繰り入れなければならないことに監査上留意する、としています。

(ア) 役員退職慰労金の支給に関する内規に基づき(在任期間・担当職務等を勘案して)支給見込額が合理的に算出されること
(イ) 当該内規に基づく支給実績があり、このような状況が将来にわたって存続すること(設立間もない会社等のように支給実績がない場合においては、内規に基づいた支給額を支払うことが合理的に予測される場合を含む。)

要は発生の可能性が高く、金額が合理的に見積もれる場合、ということになります。

これがIFRSになるとどうなるかですが、役員退職慰労金に特化した定めはなかったかと思います。したがって引当金の原則に鑑み債務性の有無を検討することになります。前述したとおり契約上の債務ではないので、推定的債務であるかどうかを判断することになります。推定的債務の要件は以下のとおりです(IAS37 para.10)

A constructive obligation is an obligation that derives from an entity’s actions where:
(a) by an established pattern of past practice, published policies or a sufficiently specific current statement, the entity has indicated to other parties that it will accept certain responsibilities; and
(b) as a result, the entity has created a valid expectation on the part of those other parties that it will discharge those responsibilities.

実際に内規があり、その通りに支払っている実績のある会社であれば、上記の要件は満たされるのではないかと推定されます。したがって現在わが国で役員退職慰労金を計上出来ているのであればIFRSでの計上もあまり問題ないように思えます。

ただし計上金額については注意が必要です。IAS19の従業員給付ではとくに役員退職金を区別していません。役員退職慰労金についても従業員の退職給付引当金と同様の方法によって計上されることになります。したがって予測給付債務を計算した上で割引計算をする必要があるということになります。現行実務では割引計算を指定ない場合が多いと推定されますので、この部分については差異になると考えられます。

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