« 引当金各論-役員退職慰労引当金 | Main | 引当金各論-有給休暇引当金 »

引当金各論-リストラクチャリング引当金

IAS37号では「Restructuring」という表題で比較的多くの項数を費やしています。この「Restructuring」がいわゆる「リストラ」と同義なのかどうかはまた議論がありそうな気がしますが、そこに立ち入るのも面倒なのでここでは単に「リストラ」の語を当てます。

このリストラ引当金。まず日本基準ですが、今まで何度か出てきているように、日本基準の引当では債務性は特に求められていません。発生の可能性の高い、将来の特定の損失であれば、金額が合理的に見積もれる範囲でリストラにかかる引当金が計上できることになります。

このブログ再開前に取り上げているケースが典型的な例になります。12月決算で、希望退職の募集が8月、退職が10月とかなり先のプランではありますが、この希望退職にかかる費用を特別損失として計上しています。相手勘定は明らかではありませんが、名目はともかく、リストラ引当金の性質を持つ負債になります。企業が宣言しているのだから発生な可能性は高く、募集人数もほぼ決まっているのだから合理的に見積もることができる、と判断したのかと思います。日本基準では注解18に示すこれらの要件が満たされればリストラに関する損失とそれにかかる引当金を計上することができます。

しかしながら、IFRSでは単純にそうはいかなくなります。IAS37号の引当金は現在の債務であることを求めていますのでその検証をする必要があります。少なくとも法的債務ではないので、推定的債務があるかどうかの検証ですが、

72 A constructive obligation to restructure arises only when an entity:
(a) has a detailed formal plan for the restructuring identifying at least:(略)
(b) has raised a valid expectation in those affected that it will carry out the restructuring by starting to implement that plan or announcing its main features to those affected by it.

と、(b)で関係者がリストラクチャリングの実行が確実であると考えるような場合、としており、その場合には

74.For a plan to be sufficient to give rise to a constructive obligation when communicated to those affected by it, its implementation needs to be planned to begin as soon as possible and to be completed in a timeframe that makes significant changes to the plan unlikely. If it is expected that there will be a long delay before the restructuring begins or that the restructuring will take an unreasonably long time, it is unlikely that the plan will raise a valid expectation on the part of others that the entity is at present committed to restructuring, because the timeframe allows opportunities for the entity to change its plans.

要は計画が変わらないように、さっさと実行することが必要だということです。12月時点での8月のプランが実務的にどのように扱われるかは定かではありませんが、計画を変更する時間は十分にありそうで、この規定からすると引当金の計上は難しいような気がします。

ところで、日本基準でも「退職給付会計に関するQ&A」 Q18では「従業員が早期退職金制度に応募し、かつ、当該金額が合理的に見積もられる時点で費用処理すべきです。」という規定があります。通常の希望退職では少なくとも募集時点ではなく、従業員が応募をして初めて費用に計上できることになります。ただ、これが事業構造改革を絡めた早期退職の費用となると、その実行可能性がより高まることから、募集前でも引当金を計上する実務が行われているようです。

IAS37の公開草案ではそのあたりに踏み込んでいまして、

61 An entity shall recognise a non-financial liability for a cost associated with a restructuring only when the definition of a liability has been satisfied.
63 An entity shall apply the requirements in paragraphs 132-147 of [draft]IAS 19 to benefits that are provided in connection with the termination of an employee’s employment.

リストラに関する非金融負債については、負債の定義を満たしたときに計上され、IAS19の従業員給付における解雇給付の要件を満たす必要がある、とされています。リストラのどさくさにまぎれて早めに引当金を計上することを諌めている規定を織り込んでいます。

これに関連してIAS19自体も変更の草案が出されています。

137 An entity shall recognise a liability and expense for voluntary termination benefits when the employee accepts the entity’s offer of those termination benefits.

138 Except as specified in paragraph 139, an entity shall recognise a liability and expense for involuntary termination benefits when it has a plan of termination that it has communicated to the affected employees, and actions required to complete the plan indicate that it is unlikely that significant changes to the plan will be made or that the plan will be withdrawn. The plan shall:
(a) identify the number of employees whose employment is to be terminated, their job classifications or functions and their locations, and the expected completion date; and
(b) establish the benefits that employees will receive upon termination of employment (including but not limited to cash payments) in sufficient detail to enable employees to determine the type and amount of benefits they will receive when their employment is terminated.

自発的退職の場合は、従業員がそれを受け入れたときに費用計上するとしています。希望退職という名目であれば自発的退職ですので、募集が終了するまでは費用に計上できないことになります。また非自発的退職の場合でもどの部門で何人といった人数と、給付の内容を明らかにして、対象従業員に通知してある必要があります。いわゆるクビの場合にしても実質的には人数がほぼ固まっていないと費用計上は難しいことになりそうです。

|

« 引当金各論-役員退職慰労引当金 | Main | 引当金各論-有給休暇引当金 »

IFRS」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/12395/49394564

Listed below are links to weblogs that reference 引当金各論-リストラクチャリング引当金:

« 引当金各論-役員退職慰労引当金 | Main | 引当金各論-有給休暇引当金 »