引当金各論-有給休暇引当金
さて、IFRS強制適用でにわかに注目を浴びている有給休暇引当金です。
論点整理では「企業と従業員との間の契約により、従業員が有給休暇を消化した場合にも対応する給与を企業が支払うこととなっている場合には、企業は、期末日時点で従業員が将来有給休暇を取る権利を有している部分について債務を負っている。このため、国際的な会計基準では負債に該当するとされている。」として、法的債務であるがゆえにIFRS等では引当の対象になるとしています。
ご承知の通り、日本ではこんなもの計上する実務はありません。何度か出ている通り、注解18では引当金の計上要件に法的債務であることは求められていません。逆に法的な債務であっても注解18の要件に当てはまらなければ負債の計上の必要はないわけです。注解18では計上対象を「将来の特定の費用または損失」としています。有給休暇を買い取る習慣がない日本の場合、有給休暇自体が「将来の特定の費用または損失」に当たるかと言われると首を捻らざるを得ないと思います。
しかしながら期末時点で有給休暇を繰り越す権利を持っている従業員が、たとえ期首から全く働かないで退職したとしても、会社は有給休暇日数に対応する部分については給与を支払う義務を持っています。このように考えると、たとえ有給休暇自体の買取義務がないとしても、実質的には買取義務があるのと同様の金銭負担が生じることになります。したがってそのような金銭負担が発生する可能性の範囲においては、期末日に債務があることは否定できないことになります。
てなことがIAS19のpara.13に記載されています.
Accumulating compensated absences are those that are carried forward and can be used in future periods if the current period’s entitlement is not used in full. Accumulating compensated absences may be either vesting (in other words, employees are entitled to a cash payment for unused entitlement on leaving the entity) or non-vesting (when employees are not entitled to a cash payment for unused entitlement on leaving). An obligation arises as employees render service that increases their entitlement to future compensated absences. The obligation exists, and is recognised, even if the compensated absences are non-vesting, although the possibility that employees may leave before they use an accumulated non-vesting entitlement affects the measurement of that obligation.
もう少し突っ込みたいところですが、時間ですので本日はこれまで。
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