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「にわか会計もの知りTWEETER」より

23日土曜日は疲れが溜まっていてずっと寝ていたのですが、民主党三宅議員のtweetが話題になっていたようです。

http://twitter.com/#!/miyake_yukiko35/status/28391666868


この発言がひとしきり炎上した後に、24日、私が仕事中にこのtweetを擁護するブログが登場して、また私のTL上はひとしきり話題の種になっていたようです。

すっかりこの話題に乗り遅れたようですので、冷静になった今、あらためて考えてみたいと思います。

まず、内部留保と言う表現が言葉足らずであったことはご本人も認めているようですので、このことにはあえて触れません。池田先生に言われるまでもなく、いろいろな方が書いてらっしゃいますし、不肖私めも大昔に書いたりしております。


では、三宅議員は何が言いたかったのか。擁護派の方は

1. ニュアンスを取れば三宅議員の言いたいことがわかるはず。単純に言葉の使い方の問題。この単語一つで全体の議論に解釈違いが起きるとは考えにくい。

と言い切っていますが、実は私はこのニュアンスがとれないでいます。
三宅議員はあとで、内部留保が多額の企業のことだとか、儲かっている企業のことだとか説明していますが、この二つも厳密に言えば、いえ厳密に言わなくても大きく異なります。

では、いったい、何が言いたかったのか

a,「儲かっている企業」が派遣切りをすることが許せないのか?

一番想像出来るのがこれであり、また一理ある議論であると思います。利益水準が高い企業はもっと利益を落としてでも雇用を重視すべきだという議論ですな。それが言いたいのであれば、あえて内部留保などという言葉を使用しなくても「利益を出しすぎている企業はけしからん」と言ったほうが、会計のプロじゃない方にはよっぽどわかりやすい。そしてそれに対する政策は法人税率のアップということになります。

あ、言い忘れましたが、政策の是非についてはここでは触れません。

b.「内部留保が多額な企業」が派遣切りをすることが許せないのか?

三宅議員は「内部留保が多額な企業」とも言い直していますが、利益が出ていれば内部留保が潤沢というわけではなく、利益を全額株主への配当へ回してしまえば、内部留保はゼロです。内部留保が厚い企業は言い換えると、利益を挙げていながら株主へ還元していない企業、ということになります。多額な内部留保を是正しようとすると、間違いなくその金額は株主への配当に流れることになりますが、それが言いたいことだったのでしょうか?ということです。

c,「現金を溜め込んでいる企業」が派遣切りをすることが許せないのか?

「留保」という言葉からは何やら溜め込んでいるようなニュアンスが感じられます。三宅議員は否定していますが、現金を溜め込んでいる企業であると考えている向きもあるかと思います。しかしながら、この額も内部留保とは必ずしも一致しません。確かに多額の利益を計上してそれを何にも使わず貯めこんでいればそれを従業員に還元しろというのは至極まっとうな意見であると思いますが、それならそのように言うべきで、内部留保とあえて誤解をあたえかねない表現を使用する趣旨がわかりません。


「にわか」かどうかはともかく、私も経理職のはしくれとして、経理以外の方に説明することもあります。些細な言葉の誤用をあげつらうことはくだらないことだと思っています。政治家が多少の言葉の正確性を犠牲にしても分かりやすく説明することは当然のことだと思います。しかしながら、他にわかり易い表現がありながら、あえて定義の曖昧な誤解を招く表現をする必要はないかと思います。

ちなみに、こちらでの内部留保の定義、「実際には支出していないのに隠し利益としてため込む各種引当金」なども内部留保に含まれております。


この「隠し利益」などという表現からして悪意プンプンの定義なのですが、もし発言の根底にこのような企業観があるのだとすれば、それは用語の誤用だけでは済まないかと思いますし、「にわか」な方々が相次いで声を上げたのは「菅さんが、もっと財界にパイプを持ち、圧力をかけるべきだと思います。」との発言にそのような企業観を感じ取ったからではないか、そのような気がするのであります。

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監査法人に交代制 EU検討、企業となれ合い防止 (10/16 日経16面)(2)

3. Governance and Independence of Audit Firms

このパートが一番の肝です。

(16) Is there a conflict in the auditor being appointed and remunerated by the audited
entity? What alternative arrangements would you recommend in this context?
(17) Would the appointment by a third party be justified in certain cases?
(18) Should the continuous engagement of audit firms be limited in time? If so, what
should be the maximum length of an audit firm engagement?
(19) Should the provision of non-audit services by audit firms be prohibited? Should any
such prohibition be applied to all firms and their clients or should this be the case for
certain types of institutions, such as systemic financial institutions?
(20) Should the maximum level of fees an audit firm can receive from a single client be
regulated?
(21) Should new rules be introduced regarding the transparency of the financial statements
of audit firms?
(22) What further measures could be envisaged in the governance of audit firms to enhance
the independence of auditors?
(23) Should alternative structures be explored to allow audit firms to raise capital from
external sources?
(24) Do you support the suggestions regarding Group Auditors? Do you have any further
ideas on the
matter?

監査人を指名する際や報酬を決定する際に利益相反というものがあるのか、という問題意識から入っています。

そして


一定の場合には第三者がそれを決定することが正当化されるのであろうか、

監査契約期間は制限すべきであろうか、そうであれば最長何年がいいのか、

非監査サービスの提供は禁止すべきではないのか、そうであればその対象は全般的にすべきなのか金融機関等一定の範囲にすべきなのか


最大報酬金額は制限すべきではないのか

監査法人の財務諸表の透明性について新たなルールが必要ではないのか

他に監査人の独立性について取るべき手段があるのか

監査法人の資金調達のために新たなストラクチャーを考えるべきか

「グループ監査人」についての提案に賛同するか

ということにつき質問を投げかけています。

17,18あたりが新聞報道されたメインの部分であります。大事なところですので、原文を引用しますと

The Commission is considering the feasibility of a scenario where the audit role is one of statutory inspection wherein the appointment,remuneration and duration of the engagement would be the responsibility of a third party,perhaps a regulator, rather than the company itself.Such a concept may be especially relevant for the audit of the financial statements of large companies and/or systemic financial institutions. This matter should be explored taking into account, on the one hand, the risk of increased bureaucracy and, on the other hand, the possible societal benefits of demonstrably independent appointments.

大企業や金融機関については、監査人氏名の責任を企業自身よりも規制当局等の第三者にもたせる制度についての可能性を検討している、ということです。独立性についてはベネフィットがある一方で官の増大というリスクがあるということは認識をしているようです。

In this context, the mandatory rotation of audit firms . not just of audit partners . should be considered. The Commission acknowledges arguments relating to a loss of knowledge as a result of rotation. It would nevertheless like to examine the pros and cons of such rotation, especially with a view to instilling and maintaining objectivity and dynamism in the audit market. To prevent partners from changing firms to "take along" certain clients with them, rotation rules, if adopted, should ensure that not only firms, but partners are also rotated.

パートナーのみではなく監査法人のローテーションについても検討する人のことで、これも欠点については認識しているものの、客観性や監査市場のダイナミズムの維持の観点から再度検討したいと。パートナーが顧客を連れて別の監査法人に移るのは反則ですよと。


また意外にも非監査サービスについて制限するEU全般の規制というものはなく、独立性に反してはいけない、という規定の解釈の世界となってしまい各国での実務はまちまちであるとのことです。

最大報酬金額というのはひとつのクライアントから受け取る金額の上限を、法人が受け取る全報酬の一定割合に留める規制のようです。IFACの倫理規定では15%以上であれば開示すべきであるということらしいですが、中小の法人であればありうるのでしょう。

また、監査法人の資金調達云々というのは、現在EU規制では監査法人の議決権は監査人がマジョリティーをとっていなければならないらしいのですが、それを改めるべきかどうかというもののようです。

「グループ監査人」についての提案とは、グループ内の子会社に対する監査についてのドキュメントについても親会社の監査人はアクセスすべきである、ということを言っています。現在でも別監査法人間のクリアランスのやりとりはしていると思われるのですが、どこまでの改訂を見込んでいるのか、原文からは読み取れませんでした。

4. Supervision

EUの監督の話です。国の連合体であるがゆえの悩みもあるようですが、ここではあまり触れません。

(25) Which measures should be envisaged to improve further the integration and
cooperation on audit firm supervision at EU level?
(26) How could increased consultation and communication between the auditor of large
listed companies and the regulator be ac
hieved?

EUレベルでの監督を改善するためにはどうしたらいいか
上場企業の監査人と規制当局の情報交換をどのように増やしていくべきか

(まだ続く予定)

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監査法人に交代制 EU検討、企業となれ合い防止 (10/16 日経16面)(1)

監査法人に交代制 EU検討、企業となれ合い防止 (10/16 日経16面)(1)

欧州連合(EU)が監査法人に対する規制を強化する。

監査法人と顧客企業とのなれ合いを防ぐため、企業に担当監査法人の定期的な変更の義務付けを検討する。登録した監査法人や会計士が域内で自由に活動できる「パスポート」も導入する。四大監査法人の寡占状態にある監査市場の競争を促し、企業や銀行の財務内容を厳しく点検することで金融危機の再発防止につなげる狙いだ。

いくつかのブログでも話題になっている記事ですが、原文はこちらです。

Consultation on audit policy - Lessons from the Crisis


このグリーンペーパーの目的としては

The Green Paper aims to draw the lessons from the crisis with respect to the external audit of companies. In particular, the Commission is keen to discuss whether audits provide the right information to all financial actors, whether there are issues around the independence of audit firms, whether there are risks linked to a concentrated market, whether supervision at a European level might be useful and how best the specific needs of small and medium sized businesses may be met.

いわゆる金融危機によって、いろいろと監査人監査に関する問題点が出てきたので、その対策をしていこう、ということが垣間見えます。日本では景気悪化に伴う市場の伸び悩みから来る会計士試験の合格者の就職問題に夢中のようですが、EUではそもそも監査人監査のストラクチャーを根本的に揺るがすような検討を始めたということのようです。


原文は9章と38個の質問からなっています。全部で21ページですので読むのにはそれほど時間がかからない方が多いでしょうが、私がまじめに読むと時間がかかりますので、質問文を読んでから本文を読むという必殺TOEIC Part7テクニックを駆使して読んでいくことにします。いつもどおり訳は適当にはしょっております。

1. Introduction
ここは全体像なので、とりあえずパス。

2. Role of the Auditor
2.1. Communication by auditors to stakeholders

そもそも、監査人と利害関係者との情報のやりとりが十分であるのか、という問題意識から、以下の質問を投げかけています。

(4) Do you believe that audits should provide comfort on the financial health of
companies? Are audits fit for such a purpose?

(5) To bridge the expectation gap and in order to clarify the role of audits, should the auditmethodology employed be better explained to users?

(6) Should "professional scepticism" be reinforced? How could this be achieved?

(7) Should the negative perception attached to qualifications in audit reports be
reconsidered? If so, how?

(8) What additional information should be provided to external stakeholders and how?

(9) Is there adequate and regular dialogue between the external auditors, internal auditors
and the Audit Committee? If not, how can this communication be improved?

(10) Do you think auditors should play a role in ensuring the reliability of the information
companies are reporting in the field of CSR?

(11) Should there be more regular communication by the auditor to stakeholders? Also,
should the time gap between the year end and the date of the audit opinion be reduced?

(12) What other measures could be envisaged to enhance the value of audits?

そもそも、監査人というのは企業の財務健全性維持の目的に十分寄与しているのか。

投資家と監査人の間にあると言われるいわゆる「期待ギャップ」解消のために監査人はもっと利害関係者に説明すべきではないのか。

監査人に課されている「職業的懐疑心」はもっと強化すべきではないのか、それはどうしたら達成できるのか。

限定付き意見については、消極的評価を恐れるあまり、避けようとする場合が多いが、そのような見方を改めるべきではないのか?

外部の利害関係者にもっと提供すべき情報はないのか、またそれはどのようにして適用したらいいのか

外部監査人と内部監査人との間の十分なかつ定期的な情報交換は行われているのか

監査人はCSRの分野においても情報の信頼性を確保するために一定の役割を果たすべきではなかろうか

外部の利害関係者と監査人の定期的な情報交換はもっとやるべきではないのか、また財務諸表日と監査意見日の差は埋めていくべきではないのか

その他監査の価値を高めるためにどのような手段があるか

2.2. International Standards on Auditing (ISAs)

ISA(国際監査基準)については最近フォロー不足なのですが、2009年までに「クラリファイプロジェクト」というものをやっておりまして、基準が見直されています。これに応じて日本の監査基準なども修正されています。IFRSを導入しようとなると何かと抵抗勢力がぞろぞろ出てきますが、監査基準についてはあまりニュースにもならず、簡単に国際的な基準が入ってくるようです。

(13) What are your views on the introduction of ISAs in the EU?
(14) Should ISAs be made legally binding throughout the EU? If so, should a similar
endorsement approach be chosen to the one existing for the endorsement of
International Financial reporting Standards (IFRS)? Alternatively, and given the
current widespread use of ISAs in the EU, should the use of ISAs be further
encouraged through non-binding legal instruments (Recommendation, Code of
Conduct)?
(15) Should ISAs be further adapted to meet the needs of SMEs an
d SMPs?

ISAってどう思いますか、EUで強制的に導入すべきだと思いますか、中小企業にも適用できると思いますか?ということです。

(つづく)

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9-10月のIFRS

某IFRSの勉強会の冒頭にてここ1ヶ月のIFRSのリリースのレビューをやっております。
いつも聞き流してはわすれてしまうので、おさらいしてみるという全くの個人的勉強であります。

13-Sep-10
IASB and ASBJ meet to discuss convergence with and intended adoption of IFRSs in Japan

日本のASBJとIASBの定期的なお話し合いが行われましたということです。

ちなみに日本側は下記
日本側 https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/press_release/overseas/pressrelease_20100913.pdf

16-Sep-10
Public roundtables on Revenue Recognition, lnsurance Contracts and Leases announced

日本語では円卓会議と訳されるでしょうか。公開草案に対する公開討論会みたいなものが開催されます。
東京では12月9日に保険契約に関する草案の討議が行われます。
FASBとの共催のため全世界でやるように見えて米国が開催地のうち約半分。
その中でも日本が一回入ったのだからよしとすべしなのか。

24-Sep-10
IFRS Foundation publishes IFRS Taxonomy 2010 labels in Spanish

スペイン語版のIFRSタクソノミの最新版について


ちなみに日本の昨年のものはこちら


24-Sep-10
Public roundtable in Tokyo on lnsurance Contracts ? change of date

先程の円卓会議続報、というか特に詳細な情報なし。
参加希望者は11/1までにご連絡をとのこと。

27-Sep-10
Live webcast on first phase of Conceptual Framework

下で紹介するフレームワーク関連のwebcastがあったらしいですね。今さらですが。

28-Sep-10
IASB and US FASB complete first stage of conceptual framework


長々とやっていました、フレームワークの議論のファーストステージが終了。
その成果物が出ましたということで。
これは後々読んでいく予定・・・予定・・・

全文はいまのところフリーのエリアにはないようなので
podcastへのリンクを貼っておきます。

http://media.iasb.org/Conceptual_Framework_podcast280910.mp3

またFASBのはフリーで見られるようなのでこちらを御覧ください。同じかどうかわかりません。

29-Sep-10
Staff draft of a forthcoming IFRS on consolidation


今度出る連結の改訂基準についてのスタッフドラフト。最近最終基準が出る前にこれが出る場合が多いですね。
12月までにこんなのが出るから覚悟しておけ。コメントは受け付けない。以上。みたいな。
ドラフトそのものはこちら

30-Sep-10
IASB proposes Severe Hyperinflation amendment to IFRS 1


超インフレ経済におけるIFRSの初度適用について。
ジンバブエにでも子会社がない限り関係ないかとは思いますが・・・・

7-Oct-10
Live webcast on IFRS 7: Financial Instruments: Disclosures
下記の金融商品会計基準の改正に関するwebcastがロンドン時間11日に行われる由

7-Oct-10
IASB finalises enhanced derecognition disclosure requirements for transfer transactions of financial assets


IFRS7号の改訂がファイナライズされました。
金融商品の認識中止、すなわち証券化等において、いつ金融資産をオフバランスするか、ということについて
2009年3月に公開草案を出して、認識の中止要件を変えようとしていたのですが、最終的には変えずに、
ディスクロージャーを強化することで対応しよう、ということになりました。

これも全文はいまのところフリーのエリアにはないようなので
podcastへのリンクを貼っておきます。

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Trustees appoint Hans Hoogervorst to succeed Sir David Tweedie

IASBの改組以来10年間議長をつとめてきたTweedie氏の後任が決定したとIASBのリリースが出ております。

http://www.ifrs.org/News/Press+Releases/chairman+appointment.htm

詳細は読んでいただくとして(手抜き)一言だけ

Hans Hoogervorst, chairman-elect of the IASB said
:
As a securities and market regulator I have investor protection in my DNA.

DNAに投資家保護が刻み込まれていると自認されている方のようです。
敵ながらあっぱれじゃ(敵なのか?)

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起業のファイナンス-磯崎哲也著 日本実業出版社

既にAmazonでも即時入手困難という状況であり、また数々の場所でも取り上げられている書籍なので、今更場末の更新の少ない本ブログで取り上げる意味合いもあまりありませんが、私も読みましたという報告まで。


で、以下の感想は一定の層にしか当てはまらないかと思います。念のため。

私みたいに決算→ディスクローズ業務をやっていて、会計基準や会社法、金商法に常に触れているような方は、ある程度の規模の企業には何人かいらっしゃるかと思いますが、そのような方にとってはこの書籍で述べられている制度的な側面についてはある程度知識があるものと思います(もちろん知識があるのと使えるのでは全く別ですが)。そういう意味でこの書籍により新たな知識を詰め込もうとするちょっと肩透かしにあうかとおもいます。

では、経理財務素人向けの本なのかというと決してそんなことはありません。

これを言ってしまうと推理小説のネタバレに近くなってしまうかもしれませんが、著者は本書で繰り返し「人」の大切さをしきりに説いています。それは、下記の記述の数々に如実に現れています。

ベンチャー企業の「生態系」が機能しはじめるためには、カネだけではなく、デキる「人」が流れ込まないといけません(p38)

事業計画を作ることを通じて考えがまとまっていれば、説得力のある話をできる可能性が高まるということです。(p119)

このため(ストックオプションは)、単なる技術ではなく、「人の気持ち」や、将来展開される「人間ドラマ」を考えて設計する必要が大いにあるのではないかと思います(p224)

次の新しいことを始める場合に、「信頼がおけるヤツだ」と見てもらえるのか「信頼がおけない(いざとなった場合に見苦しい)ヤツだ」とみられるのかは、大きな違いです(起業家にとっても投資家にとっても)(p321)


本著は所詮ベンチャーを活かすも殺すも「人」である、という視点から、最初で述べたような断片的な知識群を「人」を軸としていかに有機的に組み合わせるか、そういう観点からいくつもの気づきを与えてくれるものであると考えています。


さらに、(ベンチャーには)状況にあわせて臨機応変に対処できる能力が必要でありそのためには「イケてるソーシャルグラフ」の中にうまく入り込めることが重要、と述べています。(p114)。さらに「イケてるソーシャルグラフの中に潜り込んで、自分の必要をかなえる能力」。たとえば、「資金を出してくれる人にたどり着いたり、人材などを見つけ出したり、営業で成果を上げる能力があること」がイケてるベンチャー企業の要件であると説きます(p115)

著者はまた冒頭で、この本を執筆するきっかけとしてベンチャー企業に関する適切な情報が十分に供給されているとはとてもいいがたい状況であることを挙げています(p19)。もてしそうだとすれば、起業家側と同様それを助けるべき専門家側でもそういう「イケてるソーシャルグラフ」に入りきれていないということも言えるのかと思います。

上場企業に一人はいるであろう専門家群がこのような「ソーシャルグラフ」の中にどんどん入ってくれば、起業家側の層もまた広がることにつながってくるのではないかと思います。

残念ながら、著者がベンチャーのもうひとつの大事なこととしている「アニマル・スピリッツ」には大きく欠けている私ですが、そんな私でも考え方一つでベンチャー企業の、ひいては日本活性化のお手伝いができるのでは、という気にさせてくれる、キャリアプラン検討の一助としても役立つ本である、そのような感想を持ちました。はい。

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