IFRSにおける減価償却費(定率法の扱い)
IFRSのサイト上ではあまり目立ってなかったのですが、日本の一部で盛り上がっていたのが以下の記事です。
現在の日本のIFRSのアドプションをめぐる議論において、日本基準との大きな差異としてクローズアップされている項目のひとつに減価償却費が挙げられることが多いです。税法の耐用年数が認められないとか、耐用年数は毎年見なおさなければないとか、「コンポーネントアプローチ」を適用しなければならないとか、いろいろなことが言われています。
そんな中での議論の一つに「IFRSでは定率法が認められない」という項目があります。この言い方自体が既に世間に流布しており、あたかもIFRSにはそのように書いてあるかのようですが、現実にはIFRSでは償却方法について、特定の方法に言及しているわけではありません。
以前金融庁が「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」において
IFRSは、減価償却は資産の償却可能価額を耐用年数にわたって規則的に配分するものであり、償却方法は、将来的な資産の経済的便益の消費パターンを反映したものを採用しなければならないとされている。定率法と定額法との間に優劣はない。
と一応宣言しております。
そんな日本の状態を知ってか知らずか出てきたのが上記のレポートです。
IAS 16 permits a variety of depreciation methods(p5)と題された項に記述されています。
Is there a preference in IAS 16 for the straight-line method over other methods? Again, I think not. The straight-line method may be the easiest to administer and for financial statement users to understand, in the absence of evidence to the contrary. Those factors make it the easiest method, but not necessarily the preferred method.(p6)
IAS16号では定額法が優先されているって?そんなことはない、分り易いってだけのことと言い放っています。
で、定率法についてはこんなことも(p6)
For example, many assets require more repairs and more frequent maintenance in the later years of their lives. Similarly, management may expect that the price of a product produced by an asset will decline over the asset’s life. Both suggest that a declining balance method may be a better approximation of the pattern of consumption.
資産によっては修繕やメンテナンスが今後必要になってくるものもある。同様に、年次を経るごとに生産品の価格が落ちて行くと考えられるものもある。そう考えると定率法というのも費消のパターンを示している場合もあるといえる、くらいのトーンでしょうか。
で、結局は(p7)
The selection of a depreciation method and the pattern of depreciation charges, is ,then, constrained by the requirements found in paragraphs 32 to 38 of IAS 8 Accounting Policies, Changes in Accounting Estimates and Errors. The extent to which an entity’s management documents its choice of depreciation methods is a matter of internal control over the financial reporting process. IFRSs do not specify the detail with which that documentation should be prepared. Instead, judgements about depreciation and documentation are a matter left to the judgement of the entity’s management and auditors.
結局は会計方針の問題なので、判断の問題であり、その根拠は明確にしておく必要がある、ということろに行き着きます。要はこの見解、新しいことは何も言っていません。会社が自ら定率法の根拠を示せるのであれば、継続的に定率法が適用できるし、もし説明できないのであれば定額法のほうが説明しやすい、これだけのことです。
要はもうちょっと自分の頭で考えましょうってことですな。
(追記)これ書いた後、日経に載っていることを知りました
容認も何も、もともと何も書いてないことを、何も書いてませんと改めて表明しただけの話です。何かが進展(後退)したわけではありません。
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