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包括利益計算書は2計算書方式もOK?

11月のIFRSのBoard Meetingの内容のサマリーが公開されています。

そのなかでその他包括利益についても俎上にあげられています。

以前、FASBとIASBが公開草案を出しています。


ここでは、包括利益の表示について、損益計算書と一体とした包括利益計算書、いわゆる1計算書方式のみを認めることとし、現行認められている損益計算書と区分する方式、いわゆる2計算書方式を廃止する方向性を示していました。

しかしながら、この案にはそれなりに反対が多かったようで、スタッフに差戻しされています。(このあたりは11/15の拙稿を参照ください)

今回の理事会では、以下のことが暫定的に決まっています。

to proceed with the project as originally planned, as opposed to delaying the project until the boards can develop a consistent basis for determining which elements should be presented in Other Comprehensive Income (OCI) and when reclassification to net income is appropriate;

to require entities to present net income and OCI either in a single continuous statement or in two separate, but consecutive, statements;

the standards would be effective as of the beginning of a fiscal reporting year that begins after December 15, 2011 for US GAAP and for fiscal reporting years that begin on or after 1 January 2012 for IFRS;

to affirm the tentative decision to require full-retrospective application for the final standard; and

to affirm the tentative decision of the FASB to require reclassification adjustments to be presented in both other comprehensive income and net income, and both boards to allow items of other comprehensive income to be presented either net of tax with details in the notes or gross of tax with each item's tax effect displayed parenthetically, and to retain the current calculation of earnings per share based on net income/(profit or loss).

・予定通りにプロジェクトを進めること。その他包括利益がどうあるべきかの議論の決着がつくまでプロジェクトを遅らせることはしない。

・企業には1計算書方式と2計算書方式の選択を認める。

・USGAAPでは2011年12/15以降開始する年度、IFRSでは2012年1/1以降に開始する年度から適用する。

・適用の際には完全遡及適用を要件とする。

・FASBにおいてはリサイクル(reclassification)を要求する。またIFRSを含めて税金については純額表示と総額表示の双方を認める。またEPS(一株当たり利益)の計算については従来の計算通りとする。


どうやら、その他包括利益の内容について、さらには一旦その他包括利益に計上した内容について何をリサイクするべきかという課題については、IFRSとFASBではまだ隔たりはあるものの、その解決は先送りをして、計算書の方式についての意思決定を先決した、ということのようです。

そしてその計算書の方式については、日本側がかねてから主張してきた、2計算書方式の選択が認められる方向になりそうです。日本国内では、「企業の業績として包括利益を重視するものだ」として1計算書方式を嫌悪する声がやたらと大きく、IASBに対してもさんざん要求をしてきたのですが、それを支持する声はなにも日本ばかりではない、ということが明らかになった、ということだと思います。

個人的には開示する量や手間は変わらないし、どちらが投資者の利益、って話でもないので1計算書方式への統一はさほど抵抗感がないのですがいかがなものなのでしょうか。

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IFRSにおける減価償却費(定率法の扱い)

IFRSのサイト上ではあまり目立ってなかったのですが、日本の一部で盛り上がっていたのが以下の記事です。


Depreciation and IFRS


現在の日本のIFRSのアドプションをめぐる議論において、日本基準との大きな差異としてクローズアップされている項目のひとつに減価償却費が挙げられることが多いです。税法の耐用年数が認められないとか、耐用年数は毎年見なおさなければないとか、「コンポーネントアプローチ」を適用しなければならないとか、いろいろなことが言われています。

そんな中での議論の一つに「IFRSでは定率法が認められない」という項目があります。この言い方自体が既に世間に流布しており、あたかもIFRSにはそのように書いてあるかのようですが、現実にはIFRSでは償却方法について、特定の方法に言及しているわけではありません。

以前金融庁が「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」において


IFRSは、減価償却は資産の償却可能価額を耐用年数にわたって規則的に配分するものであり、償却方法は、将来的な資産の経済的便益の消費パターンを反映したものを採用しなければならないとされている。定率法と定額法との間に優劣はない。

と一応宣言しております。

そんな日本の状態を知ってか知らずか出てきたのが上記のレポートです。

IAS 16 permits a variety of depreciation methods(p5)と題された項に記述されています。

Is there a preference in IAS 16 for the straight-line method over other methods? Again, I think not. The straight-line method may be the easiest to administer and for financial statement users to understand, in the absence of evidence to the contrary. Those factors make it the easiest method, but not necessarily the preferred method.(p6)

IAS16号では定額法が優先されているって?そんなことはない、分り易いってだけのことと言い放っています。

で、定率法についてはこんなことも(p6)

For example, many assets require more repairs and more frequent maintenance in the later years of their lives. Similarly, management may expect that the price of a product produced by an asset will decline over the asset’s life. Both suggest that a declining balance method may be a better approximation of the pattern of consumption.

資産によっては修繕やメンテナンスが今後必要になってくるものもある。同様に、年次を経るごとに生産品の価格が落ちて行くと考えられるものもある。そう考えると定率法というのも費消のパターンを示している場合もあるといえる、くらいのトーンでしょうか。

で、結局は(p7)

The selection of a depreciation method and the pattern of depreciation charges, is ,then, constrained by the requirements found in paragraphs 32 to 38 of IAS 8 Accounting Policies, Changes in Accounting Estimates and Errors. The extent to which an entity’s management documents its choice of depreciation methods is a matter of internal control over the financial reporting process. IFRSs do not specify the detail with which that documentation should be prepared. Instead, judgements about depreciation and documentation are a matter left to the judgement of the entity’s management and auditors.

結局は会計方針の問題なので、判断の問題であり、その根拠は明確にしておく必要がある、ということろに行き着きます。要はこの見解、新しいことは何も言っていません。会社が自ら定率法の根拠を示せるのであれば、継続的に定率法が適用できるし、もし説明できないのであれば定額法のほうが説明しやすい、これだけのことです。

要はもうちょっと自分の頭で考えましょうってことですな。


(追記)これ書いた後、日経に載っていることを知りました

固定資産の償却方法、定率・定額ともに容認 国際会計審が見解

容認も何も、もともと何も書いてないことを、何も書いてませんと改めて表明しただけの話です。何かが進展(後退)したわけではありません。

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ASBJの基準諮問会議

基準諮問会議とは、ASBJの上部組織であるFASF(財務会計基準機構)の一組織でASBJの審議運営の検討を行っているところです。
(参考)https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/fasf/apercu/

ここが11月11日に審議を行ったとのこと。ちなみに過去のアーカイブを見ると、年2回だったり、3回だったり、4回だったりでどのようなタイミングで行っているかはよくわかりません。

議題は以下のとおり

1.企業会計基準委員会の最近の活動状況について
2.国際対応の活動について
3.平成22年度アンケート調査の結果報告について
4.単体財務諸表に関する検討会議の設置について

1および2についてはいままで行なってきたことの報告なので、3について取り上げてみたいと思います。当該アンケート結果は下記で見ることができますが、有料会員限定となっております。

https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/standards_advisory/minutes/20101111/20101111_13_lmtd.pdf

アンケートについてはやり方については以下のとおりで、ASBJに何らかの形で名前を連ねている方で、常勤ではない方を対象としていたようです。

・送信日:平成22 年8 月6 日(〆切9 月10 日をめど)
・送信先:企業会計基準委員会・基準諮問会議・専門委員会の各構成員
※常勤及び研究員を除く
・送信者数:77 名
・回答者数:48 名
・回答率:62.34%

関係者に向けられたアンケートにしては回答率が壊滅的に悪すぎるような気がするんですがまあそういう事はおいておいて・・・

アンケートは下記の質問からなります。

Q1 「中期運営方針」(7 ページ「Ⅲ.」「1.」が該当)の国内会計基準関連について、ご意見・ご提言等があれば、ご記入ください。
Q2-1 「中期運営方針」(7 ページ~9 ページ「Ⅲ.」「2.」①~⑦が該当)のIFRS 関連の下記項目について、重要性をどのように考えるか、ご記入ください。
Q2-2 上記項目以外で、ASBJ がIFRS の強制適用を見据えた将来、取り組むべきであると思われる項目があれば、その項目について内容及び理由をご記入ください。
Q3 ASBJ に関する活動について、その他、ご意見・ご提言等があれば、ご記入ください。

要は今までは「基準諮問会議」との名が示すとおり、今後ASBJにどのような基準を開発してほしいか、という要望を吸い上げる場所であったのですが、IFRSのアドプションが視野に入ってきた現在、そもそもASBJってどうよ、と言った疑問に対してどういう方向性を示していこうか、という議論に比重が移ってきているように見えます。

で、回答内容について詳細を紹介したいのですが、一応有料サイト情報ですので詳細に紹介することは憚られます。要約しようとしても、意見が総花的であるため結局かなりの部分引用してしまう事になりますので、目に止まった意見を紹介するにとどめたいと思います。紹介するのが多数意見のみではないことをご承知おきください

・回答者のうち大多数が、今後ASBJ がわが国における国内会計基準の設定機関として中心的な役割を果たしていくことに対して肯定的に言及している。ASBJ の役割として具体的に期待されているものとして言及されたものは、個別財務諸表および非上場企業の連結財務諸表の作成にあたって適用される基準の開発である。

IFRSアドプションしてしまえば、ASBJの仕事はこれになるでしょうね。連単分離を前提とすれば、ですが

まず、IFRS の強制適用後におけるわが国の会計制度の将来図を示すべきであるという意見が多数みられた。この中には、強制適用後は、コンバージェンスを緩和し、わが国の環境にあった会計基準を開発すべきであるとする意見もある一方、今後もコンバージェンスを推進すべきである、IFRS と似て非なる国内基準は排除すべきであるなどの意見もあった。また、日本基準をIFRS の適用指針として開発すべきであるとする意見もあった。

「強制適用後はコンバージェンスを緩和」というは一見意味不明ですが、おそらく上記の非上場会社や個別財務諸表に適用される会計基準、という意味かと思います。IFRSを強制する必要はないにしても「コンバージェンス」からあえて遠ざかる必要がどこにあるのかが疑問であります。なおローカルな適用指針を開発することは禁じられていたはずです。


その他の提言についても

.・作成者側の実務負担の軽減を望む

シンプルな意見でよろしい(笑)

・具体的には、会計基準の開発過程で実務適用に関する事前検討が不足しているとの指摘があった。一方で、ASBJ の常勤委員の考え方は、母体色が強すぎるとの指摘もあった。

下段は笑うしかないですが、どちらにせよ委員会で全ての実務精通した人間を揃えるのは無理であり、だからこそ意見収集の機会を設けているはずなのですが、それほど活発な意見が集まっているようには見えません。もっともASBJはややコメント期限が短いような実感がありますが。

・特に会員への情報提供が不足しており、会員となることのメリットが感じられないとの指摘があった。

会員になるメリットの面では思うところはあります。適時開示情報で「財務会計基準機構の加入に関する当社の考え方」というリリースが連日公開されている状況をどう思うかです。ただそれは情報提供不足だからもっと情報を開示すべきという議論をしても仕方がない。どんなに詳細な情報を提供しても、受け手が有益だと思わない限りそれは意味がありません。有益だと思わせる努力をするか、有益だと思わないところからも強制的に徴収するか、しかないと思います。個人的には後者が現実解かと思っております。

・IFRS 強制適用がIPO 市場に与える影響に配慮すべきである。

・・・具体的にどうしろと言っているのかがいまいちわかりません。

・基準諮問会議の諮問能力に疑問があり、役割の見直しを図るべきである。
・SAC アンケートのフィードバックが不足している。

たしかに存在自体がほとんど知られていないかと思いますので・・・

・原価計算基準は、IFRS や米国基準と異なっており、見直す必要がある。

これは寡聞にして知らないのですが、IFRSや米国の原価計算基準って日本のとそんなに違うんですか?というか原価計算基準自体あるんですか?誰か教えてくださーい。

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決算短信で定性的情報を開示していない会社

平成23年3月期第1四半期決算短信の開示状況について

という文書が東証から公表されています。

これは

本年6月に、効果的かつ効率的なディスクロージャー
を実現するため、有価証券上場規程等の改正と、四半期決算短信の様式・作成要領その
他の実務上の取扱い等の見直しを行ったことを踏まえ、上場会社による投資者ニーズに
応じた的確なディスクロージャーの定着を図る観点から、当該見直しが最初に適用され
た平成23年3月期第1四半期に係る四半期決算短信の開示状況を取りまとめたもので
す。

強制的な開示項目を最低限にして、企業の自由裁量に任すことによって、自主的な形で早期開示を目指す取り組みです。

そのなかで強制開示項目から外されたものに「経営成績に関する定性的情報」があります。すなわち売上高や利益の増減理由等について言葉で説明する部分です。

実務的には、世間の経済情勢と比較したり、事実は一つでも言い回しに気を使ったりとなかなか面倒なところで、事務方では削除していただけるとかなり負担が楽になるのですが、一方で数値について全く説明しないのはアカウンタビリティの面からどうなの、という話もあり省略するにはかなり勇気のいるところです。私も自分の会社で恐る恐る省略を提案してみたのですが、全く誰にも相手にしてもらえませんでした。

そんな中で、時価総額1兆円以上の企業52社のうち46社が定性的情報を開示しているというデータ(上記p9)が出てきましたので、これを手がかりの開示していない6社を探してみました。個人的に栄誉を称えるものであって、晒し上げようなどという意図では毛頭ありません。


三菱UFJフィナンシャル・グループ


メガバンクではここだけなので、業種に依存するものではなさそうです。ちなみに、

三菱重工

ここも非開示ですので最初は金曜会かなんかで示し合わせたりしているのかと思ったのですが、商事さんや電機さんなどは開示していますので、そういう問題でもなさそうです。


東京電力


中部電力

ここは連絡とり合っている可能性がありますね。もっとも関西電力は開示しています。


ファナック


ここは他社と横並びなどという発想は微塵もありません。とにかく数字で判断しろ、わからんやつは投資するなと言わんばかりの短信。清々しいです。


第一生命


ここはノーマークでした。ここにとっては規定が変わったのではなく、規定が変わってから入ってきたようなものでしがらみがないということなのでしょうね。

以上、あまりためにならん割には随分時間がかかってしまいました・・・

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DIVA LIVE 行ってきたよ。

連結会計システム大手のDIVAが主催するDIVA LIVEに顔を出してきました。


午後の最終プログラムに参加してきました。ネット上では下記の記事
IFRS早期適用で大切なのは「効率性」と「PM力」、NECが自社の取り組みを説明

が人気ですが、私は隣のブースに出てきました。

「EUの決算書事例から見るIFRS導入後の決算実務」


こちらでおなじみの武田雄二氏の講演です。

「IFRS導入後」っていつの話や、「IFRS導入後を見据えた」の意味だった、の言葉から始まった講演なのですが、少なくとも、他の講演とはいろいろな意味で一線を画すものであったかと思います。

発言を纏めると
「IFRS導入の最終目的はIFRSに即した有価証券報告書を作成すること」
「その有価証券報告書で財務諸表の部分はページ数3%しか占めない。ここに力を入れすぎている」
「実際にはページ数で37%を占める注記の部分のほうがはるかに重要。それが「財務報告基準」たる所以」
「そういう事を考えると、IFRS導入に複式簿記の考え方なんていらない」
「『とりあえずGAP分析から』なんて言っていると『とりあえず3点セット』といって多額の費用をかけた大騒ぎの二の舞になる」
「原則主義というのは書いてあることを絶対守れということではない。柔軟に考えましょうということ」
「単なるツールである会計を変えたからと言って、経営を変える必要があるわけはない。」
「包括利益計算書の1計算書方式、2計算書方式の選択は経営者が何を説明したいかという問題。何がボトムに来るかというのは意外と重要だと思う」

まあ、言いたい放題で、システムベンダーの銭になる話ではないような気がしました(笑)。
個人的には異論がある部分もあり、また「簿記がいらない」の件は誤解を与えかねない様な気もしますが、ひとつの視点でもあるかと思いますので、ここで紹介してみました。

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「ゴースト もう一度抱きしめたい」 を観てきたよ

映画は月2-3回みるものの、レビュー書くのは苦手で
殆ど書かないんですが、今回ばかりは言いたくなりました。

「原作をなぞるだけじゃ原作は超えられんでしょう」

の一言につきます。

Demi Mooreよりは松嶋菜々子のほうが好みです。
Patrick Swayzeよりもソン・スンホンのほうがかっこいい(かもしれない)

でもそれに加えて行った工夫が男女入れ替えるだけ、というのでは・・・

そもそもリメイクという時点でネタバレなので、

死ぬぞ死ぬぞ・・・・ほら死んだ
裏切るぞ裏切るぞ・・・ほら裏切った

楽しみ方が吉本新喜劇と一緒。笑えないだけたちが悪い。

原作でWhoopi Goldbergが演じている似非霊師は樹木希林が演じていて、流石の役者ぶりを見せてはくれますが、これも正直物足りない。監督のこの役に対するリスペクトがたりないような気がします。もっと大暴れさせても良かった。

そして、一番ガッカリ感が漂うのが、平井堅のUnchained Melody。不幸なことに原曲のThe Righteous Brothersと声色が似ているせいで、モノマネのように聴こえてこの映画の「パチもん」感を増幅させてくれます。(もっとも主題歌の「アイシテル」では相変わらずの手練手管ぶりを発揮してさすがだと思いますが)

というわけで、原作のぶっ壊し方を笑うために観にいった映画なのですが、その期待すら裏切られたというわけでございました。

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IASB会議報告(第127回から第129回まで)(2)

排出枠取引スキーム(p15)
この分野にも明るくありませんが、まず前提となる「キャップ・アンド・トレード・スキーム」を理解する必要があります。


キャップ・アンド・トレード
キャップアンドトレードは、政府が温室効果ガスの総排出量(総排出枠)を定め、それを個々の主体に排出枠として配分し、個々の主体間の排出枠の一部の移転(または獲得)を認める制度のこと。

そして、企業の立場から言えば、排出権という権利を無償で受け取ったと同時に、排出を削減する義務を負うわけで、それをどのように会計処理をするか、という論点です。もっとも正確にどのような義務を負っているかはまだIASBとFASBでは整合していない模様です。

で、まず当初認識の際にどのように測定するかというと、公正価値にて資産負債を同額計上するというアプローチが支持されています。そして事後認識も同じように公正価値にて計上することに暫定決定されています。そしてその義務の測定には「予想返却アプローチ」、すなわち排出枠を達成できなかった際に返却しなければならない枠について加重平均にて見積もる方法が支持されています。

概念としては理解できるのですが、私個人は具体的にどういう計算をするのかが全くイメージが湧きません。もうすこし学習が必要ですね。

財務諸表の表示(p18)

2011年6月までに完成させることを目標に進めているMOUプロジェクトに両者の資源を集中すべきことが合意され、資源にゆとりができるまで、当面本プロジェクトを休止することが暫定的に合意された、とのこと。
これで、直接法のキャッシュフロー強制はしばらく棚上げになるということですな。実務的にはほっとしております。

その他、短いですが、質疑応答がなされています。重要なのを抜粋しますと

Q:包括利益の表示の議論がスタッフに差し戻されたということだが、その他包括利益の内容についても議論が行われるということか?

→A:それをやっていては何時まで経っても終わらない。あくまで表示の形式について検討するだけで、何をその他包括利益にするかは個別の基準による。

Q:議論には出ていなかったが、IAS37(引当金)について、当初は来年の初頭にも結論が出るということであったが、それがかなり遅れているという認識で良いか?

→A:公開草案に対する議論が蒸し返されており、来年の後半くらいに、再公開草案が出せればいい方。その時には測定の問題だけではなく、一度結論が出た認識の問題(蓋然性基準の廃止)についても再度問うということになるであろう。

後者についても、日本ではかなり公開草案に反対してきた経緯があり、ここで明らかな揺り戻しが出てきていることは朗報でしょう。日本の影響力のせいかどうかはともかく、今後も意見発信していくべきであることは確かなようです。

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IASB会議報告(第127回から第129回まで)(1)

IASB会議報告(第127回から第129回まで)

ASBJのウェブサイトで、IASB山田辰己理事のIASB会議報告を読むことが出来ます。いや読むことが出来るだけではなく、下記のWebCastで報告を聴くことができます。
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/minutes/20101105/20101105_webcast.jsp

日本語で最新情報のサマリーが会員以外でも無料で聴けるというのはなかなか有益だと思います。40分程ですのでお時間のある方は試してみてはいかがでしょうか。

私は11/14(日)の朝に聴きましたので、気になった所について書いてみます。
当日のテーマは金融商品、特にヘッジ会計が主題となっているようですが、その辺りは苦手分野であり、最新の状況についてコメントできるレベルにはありませんので、それ以外のところでいくつか書いてみます。

包括利益計算書の改訂(1計算書方式への統一)(p12)

包括利益計算書については、損益計算書と統合して表示する1計算書方式か、別々に表示する2計算書方式か、現行IFRSでは選択が認められています。そして、IFRSでは5月に1計算書方式への1本化を求める公開草案を公表しておりました。それを知りつつも、日本ではなぜか1計算書方式への抵抗が非常に強く、今年度から適用される包括利益計算書の会計基準では選択を認めたままで運用されることになっています。

5月に公表された公開草案に対する意見を現在集約させているところのようなのですが、公開草案には意外にも1計算書方式に対する懸念が多く寄せられたとのことです。それでもIFRS理事の採決では1計算書方式への一本化への賛成が過半数(山田理事の発言によると8/9)であったとのこと。ただFASBとの合同会議の席でのFASBの採決は過半数に至らなかったとのことで(山田理事の発言によると2/5)、もう一度スタッフ差し戻しになった模様です。
IASBならともかく、FASBが日本の意見に配慮しているとはとても思えませんので、日本以外でも1計算書方式への統一には懸念を示す声がそれなりにあるということのようです。日本の多数の方には朗報かと思います(個人的にはあまりこだわりはないのですが・・・)


退職後給付(p13)

これも4月に出た公開草案に対する意見の集約をしているところです。基本的には以下に示す公開草案の骨子は変わらないまままとまりそうな気配です。ただし、年金資産の期待収益を計算するための利率について、公開草案では実質的に割引率を使用する提案をしていたものの、今回はどういった経緯かスタッフは再び期待収益率を切り分ける提案をしてきたようです。しかしながら理事の決議はそれを退けるものだったようです。スタッフと理事との間にもやや温度差があるように見えます。
(骨子)
(a) 確定給付債務の現在価値及び制度資産の公正価値の変動のすべてを、それらが生じた時点で認識する。
(b) 権利未確定の過去勤務費用は、関連する制度変更が生じた時点で認識する。
(c) 制度資産の公正価値及び確定給付債務の変動のすべてを勤務費用、財務費用及び再測定構成要素に分解する。
(d) 勤務費用を測定する際に使用された仮定の変化から生じる利得及び損失は、勤務費用には含めない。
(e) 財務費用構成要素は、確定給付負債(又は資産)純額に対する金利純額(確定給付負債(又は資産)純額に確定給付債務の測定に用いられたのと同じ金利を適用して算出)から構成されなければならない。

つづく

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ゴールドマン・サックス研究~世界経済崩壊の真相~(文春新書)

ゴールドマン・サックス研究~世界経済崩壊の真相~(文春新書)

会計とは直接関係ありませんが、最近読了した本ということで。

まず、タイトルには若干違和感。著者がかつて在籍していたゴールドマン・サックス(GS)。かつてはよかったが、今は・・・という箇所が何回も出てきますが、研究と言えるほどのものではなく、非関係者から見ると懐古主義に思えるところがあります。GSそのものについてもっと知りたい、というニーズに答える本ではありません。

しかし、本題はそこにはありません。

かつてライブドアの堀江氏が幅を聞かせていた頃、「額に汗して働く労働こそが貴重である。堀江氏のやっているのは錬金術にすぎなく、それは虚業である」といった言論が跋扈し、IT、金融業界の方が中心となって、大いに反論が巻き起こった、ということがあったことを思い出しました。

というのも、邦銀出身、転じてGSに在籍していた本人自らして金融を「虚業」と断じ(p178)、日本は「実業」を再興すべきと主張しているからです(p179)。
もっとも、前段では著者が従事していたころの金融業はもっと実業のことを考えたものであり、今のGSがやっていることはそれとは異なるものだ、という思想が根底にあるからこその物言いなのであり、そこは下記の記載からそのような自負が読み取れます。

もし私が日本の銀行の頭取であれば何を目指すかと言えば「将来の日本を作るしっかりとした企業を10社創ることに貢献したい」と考えるだろう(p101)

そして突き刺さったのは以下の項。現在のデトロイトの惨状を紹介した後に、復興を目指す企業の副社長の言葉です。

「この20年、これだけ没落していっているのに、企業も、役人も、労働組合も皆『やがて良い時が来る』と、現実を否定し続けたんだよ。」(p144)

否定し続けた結果が・・・

「町がここまで荒むと、まず人間の復興から始めなければいけない・・・今デトロイトで伸びている事業は、カジノ、ストリップバー、酒屋、薬の密売人しかない。したがってここ(注:教会の中のシェルター)に来た人間に最初にすることは解毒だ」(p147)

金融業が虚業か否かは議論があるでしょうが、少なくともこのデトロイトと同じ道を日本は歩み続けており、それを何とか阻止すべく「実業」の復活を、という著者の趣旨は明快です。少なくともその危機感については共有していかなければならないと考えるのです。

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アジア・オセアニア会計基準設定主体グループのウェブサイト

アジア・オセアニア会計基準設定主体グループのウェブサイト


アジア・オセアニア会計基準設定主体グループ(AOSSG)は、メンバー間の
効果的かつ効率的なコミュニケーションを可能とするとともに、アジア・オセ
アニア地域の外部関係者のAOSSG に対する認知度を高めること等を目的とし
て、第2 回年次会合でウェブサイトを立ち上げることに合意した。AOSSG は、
財務報告の関係者が定期的に本サイトを閲覧することを歓迎する(リンク先:
http://www.aossg.org/index.php)。

AOSSGがウェブサイトを立ち上げたというASBJのプレスリリース。そもそもAOSSGとは何かということなのですが、アジアおよびオセアニアの会計基準設定主体の集まりで、昨年に発足しております。昨年の時は全く気にしていなかったのですが(笑)、本年になって今回の議長がASBJの西川委員長であること、そしてIASBのサテライトオフィスが東京になりそうだ、というニュースと相まって、今後注目しておいたほうがよさそうな気がします。

AOSSGの歴史をたどってみますと(といってもかなり少ない)

準備会合(2009/4 北京)


このような点に鑑み、参加者は、当該地域におけるIFRSの採用やコンバージェンスを促進し、一組の単一の高品質なグローバルな会計基準を設定するためのIASBの取り組みを支援し、当該地域のそれぞれの国・管轄地域の立場とIFRSの開発への参画を調整し、当該地域における財務報告基準の整合性と比較可能性を改善し、管轄地域の公益のために財務報告の品質を向上させるため、アジア・オセアニア基準設定主体グループ(AOSSG)の設立に関連する論点を議論した。参加者は、AOSSGをできるだけ早期に設立することで合意した。

第1回会議(2009/11 クアラルンプール)


AOSSGメンバー国 はまた、AOSSGの4つの目的を定めた覚書(MOU)を採択した。その目的とは、以下のとおりである。
(a) 当地域の各国による国際財務報告基準(IFRS)の採用及びIFRSとのコンバージェンスを促進すること
(b) 当地域の各国によるIFRSの整合的な適用を促進すること
(c) 国際会計基準審議会(IASB)の専門的活動に対する当地域からの意見を調整すること
(d) 当地域の財務報告の品質改善のため、政府や規制当局、他の地域組織や国際機関と協力すること

第 2 回会議(2010/9 東京)


第 2 回AOSSG 会議における議論の概要
1. 連結 WG
2. 排出量取引 WG
3. 公正価値測定
4. 金融商品
5. 財務諸表表示
6. 保険
7. イスラム金融
8. リース

中でも「イスラム金融」というのが注目ですな。アジアの独自性が発揮できる項目かと思いますので。

ただ、次の会合が2011年の11月という悠長なことを言っています。まあそれぞれのワーキンググループの事務方は会合を重ねていくのでしょうが、アピール力としてはどうなのか。

ともあれウェブサイトを公開し、意見発信をしていく姿勢を鮮明にしたことは注目に価するかと思いますので、今後ともフォローをしていきたいと思っています。

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Trustees seek public comment on the future strategy of the IFRS Foundation

Trustees seek public comment on the future strategy of the IFRS Foundation

The Trustees of the IFRS Foundation, the oversight body of the International Accounting Standards Board (IASB), today published a first-stage consultation document designed to solicit input on the strategy of the IFRS Foundation as it enters its second decade. The Trustees initiated this review as a result of the second Constitution Review that was completed earlier this year.

IFRS財団の評議員(Trustee)が、今後10年間の戦略についてのコメントを求めるために、質問文書(consultation document 定訳ありますか?)を公表したとのこと。

もともと評議員の方々は、憲章の改訂作業に携わっていたわけですが、その過程において、今後の戦略につき利害関係者からコメントをとることについて決議したという経緯があるようです。IASBが前身のIASCから設立されてから10年。この間に100以上の国々で受け入れられているということを成果として、さらに今後の10年間で”a single high-quality globally accepted set of accounting standards”という究極の目標と成果をどのように結びつけていくかという戦略策定の参考にしたい、ということのようです。この目標自体に疑念を呈する方もいらっしゃるでしょうが、憲章(Constitution)で決まっておりますので(para.2)それはもう所与のものであります。

で、質問内容ですが、次の5つの大問に対して8項目の小問からなっています。

Mission: How should the organisation best define the public interest to which it is committed?

“public interest”についてどのように定義すればよいのか。
特に、金融危機に際して会計基準の要求と金融安定化等の政策要請の間に差があることが浮かび上がってきたことからの論点のようです。

Governance: how should the organisation best balance independence with accountability?

現在のMonitoring Board、IFRS Foundation, IASBのバランスがこれでいいのか。そして各国の当局の関与がこのレベルでいいのか、ということについて意見を求めています。各国での採用が進む反面、curve-out付の採用という側面もあることから、そのあたりの論点も興味があります。

Process: how should the organisation best ensure that its standards are high quality, meet the requirements of a well functioning capital market and are implemented consistently across the world?

今の基準設定プロセスが現在のままでいいのかという問題提起。とくに、世界的な適用の一貫性について、もっとIASBが関与すべきなのかどうかについて意見を求めています。

Financing: how should the organisation best ensure forms of financing that permit it to operate effectively and efficiently?

効果的および効率的な資金調達の方法につき意見を求めています。

Other issues


コメント収集期限は2010年12月31日です。

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国際会計基準(IFRS)の早期適用について(日本板硝子株式会社)

既に周知の記事ですが、これを取り上げなわけにはいかないでしょうというわけで。

国際会計基準(IFRS)の早期適用について

当社は、連結財務諸表の作成にあたり、2011年4月1日より国際会計基準(IFRS)を早期適用することを決定いたしましたので、お知らせいたします。これにより、連結財務諸表に、2012年3月期(FY2012)以降、同基準を適用いたします。
国際会計基準(IFRS)の適用は、当社グループの国際的な事業展開と株主構成に、適したものであります。
本決定は、日本に本社を置く、真に国際化した企業となろうという当社グループの意思の表れであります。国際的な事業展開と株主構成に適した国際会計基準(IFRS)の適用は、取締役会メンバーの国際化、委員会設置会社への移行、といったこれまでの施策の流れをくむものであります。
実務レベルでは、2006年のピルキントン社買収により、グループの約2/3は既に国際会計基準を使用しているため、グループ全体が国際会計基準に移行することで、同基準から日本基準への組替えの必要がなくなります。グループ全体が同一の会計上の言語を用いることは、内部の意思決定プロセスに非常に有益であります。
本決定の定量的な影響については、別途、適用の開始前にご説明する予定です。

短いので全文引用しました。前年度末から適用している日本電波工業についでIFRSの適用を正式に表明したのは日本板硝子。日本では2社目になります。

プレスリリースにもあるとおり、2006年にピルキントン社を買収した後に経営者も連れてきた会社です。その後経営者は家庭の事情という名目*1でお帰りになられましたが、2010年にはデュポン出身の社長を招聘*2。資本関係とかかわらず、外国人経営者をトップに据え、従来の経営とは一線を画す決意が垣間見えます。


*1 辞任後に「日本の人事制度や商慣習がこれほど国際展開にそぐわないとは思っても見なかった」と言っている(『日本企業を強くするM&A戦略』菊地正俊(PHP新書)p32)そうなので、額面通りには受け取れないとの説が多いですね。

*2なぜかwiki(11/9修正)wikipediaでは社長が変わっておらず、タレント千秋のお父様(藤本勝司氏)が社長のままです。誰か編集してあげましょう(他人任せ)


そんな中ですし、またプレスリリースによれば、既に2/3がIFRS適用済みということなので、今回の方針は必然のものであったのかと思います。とはいえ、既に2/3がIFRSを適用し、それを日本基準に組み替えているといっても、日本の会計基準で強制されている組み替えはわずか6項目です。残り1/3のうちの日本の割合がどれだけかわかりませんが、それをIFRSに変換する方が限定がないので遥かに大変かと思います。現時点でどこまで準備が出来ているのか外野からはわかりませんが、残り半年の作業はかなりタイトなものと推測いたします。経理の皆さんのご苦労はいかばかりかと。

経営体制が上記のようなものであるため、必ずしも他の会社にそのまま適用できるわけではないかと思いますが、ぜひ先駆者として事例を積み重ねてほしいものです。

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10月のIFRS

7-Oct-10
IASB finalises enhanced derecognition disclosure requirements for transfer transactions of financial assets

金融資産の認識の中止に関する開示を拡充する基準が完成したとのリリース。もともとは金融資産の認識の中止については新たに会計基準を設定する予定だったのですが、公開草案に対する反応がはかばかしくなく、開示の充実にとどめたということです。

7-Oct-10 Live webcast on IFRS 7: Financial Instruments: Disclosures
上記のwebcast情報。もう終了しています。

12-Oct-10 Interoperable Taxonomy Architecture project publishes Global Filing Manual for XBRL

XBRLによるレポーティングを共通化していこうとしているプロジェクトにおいてGlobal Filing Manual for XBRLを発行したというリリース。この分野に疎い私はこの成果がどれだけのものかわかりません。EDINETにも言及しているようですが、この関係の日本側の記事が見当たらないので・・・

12-Oct-10 Duck-Koo Chung to serve as Trustee of the IFRS Foundation

韓国の鄭徳亀氏がIFRSのTrusteeに選ばれたとのリリース。アジアの中でいち早いアドプションを表明している韓国ならではなのでしょう。和文はこのあたりで。


12-Oct-10 Trustees appoint Hans Hoogervorst to succeed Sir David Tweedie

そして今月一番のニュースは10年にわたってIASBを仕切ってきたTweedie氏の後任が決定したという記事。必ずしも会計の専門家ではないオランダのHans Hoogervorstをあえて理事に据えて政治活動に邁進させ、会計実務の方は副理事長である、Ian Mackintosh氏を置くというツートップ体制を敷くようです。
http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/news/2010-10-18-04.html

19-Oct-10 IASB and FASB consult on effective dates for convergence accounting standards


各基準の公表後の発効日が現在12-18ヶ月後となっていることについての意見募集です。今後いくつもの会計基準が同時期に公表されることから、それについての発効日をどのようにしたらいいかの参考にするためということのようです。

20-Oct-10 Monitoring Board - IFRS Foundation Trustees Meeting: webcast and observer details available


モニタリングボードとIFRS財団の会合があるようで、そのwebcastの募集。
その結果はどこにも出ていないようですが、IAS Plusによると下記のようなことが議題となっているようです。
• Report from the Monitoring Board on recent activities
• Report from the IFRS Foundation on recent activities
• Budget 2011 and financing strategy
• Strategy planning post completion MoU projects

20-Oct-10 Live webcast on Insurance Contracts exposure draft

保険契約の公開草案に関するwebcastの案内。これも終わってます。

27-Oct-10 Live webcast on Leases exposure draft

リースの公開草案に関するwebcastの案内。これも終わっています。

28-Oct-10 IASB issues additions to IFRS 9 for financial liability accounting

金融負債の時価評価に関しての最終基準。私も記事にしていますので以下を参照ください。

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IASB issues additions to IFRS 9 for financial liability accounting

The International Accounting Standards Board (IASB) has today issued requirements on the accounting for financial liabilities. These requirements will be added to IFRS 9 Financial Instruments and complete the classification and measurement phase of the IASB’s project to replace IAS 39 Financial Instruments: Recognition and Measurement. They follow the IASB’s November 2009 issue of IFRS 9, which prescribed the classification and measurement of financial assets.

IFRS9号(金融商品)については、いくつかに分かれて公開草案やら確定基準やらが出ていてややこしいのですが、概ね下記のスケジュールで動いております。

Timeline


2009年の第4四半期に「分類と測定」部分での確定基準が出ていますが、金融負債の部分については別に今年の第2四半期に公開草案が出ていまして、その確定基準がこの29日に出たわけです。
今回の基準では巷間言われる「負債の時価評価におけるパラドックス」について扱っています。

負債のパラドックスについては、こちらlあたりが簡潔に説明しています。
企業に信用リスクがある場合、銀行が貸し付ける際の利子は当然高くなります。
年利1%の1年後支払いの100の負債の価値は100/1.01=99
年利10%の1年後支払いの100の負債の価値は100/1.1=91
ってなわけで、なぜか信用力が下がると負債の価値が下がる→財政状態が改善する、という現象をパラドックスと呼んでいます。

通常の負債の場合は、利息法で計算するのが原則ですので、このような現象は特に気にしなくてもいいのですが、IFRSで認めているFair Value Optionを適用している場合が問題です。一定の条件下認められるこの会計処理は、金融商品を全て時価評価してしまい、差額を損益に認識してしまおうというもの。このオプションを適用している場合、信用力の低下によって、負債が減少し、利益が出てしまうという状態となってしまいます。

このパラドックスの扱いについては、かなり前から議論があります。金融商品の時価評価についてIASBは10年以上前から議論をしているわけですが、常にこのパラドックスが反論の中心となっていました。2009年に出た確定基準においても、負債の評価の部分については棚上げされていました。

今回出た確定基準では、信用リスクにともなって変動した部分については、その他の包括損益(OCI)に含めるものとしています。上記の例を考えると、信用リスクが下落して負債が8減少した場合、その減少を直接その他の包括損益として計上することになります。公開草案では一旦損益に計上した後に、その他の包括損益に振り返る処理を提案していたのですが、確定基準では直接その他の包括損益に計上することになります。

そして、信用力によってその他包括損益が変動した部分については、リサイクルしないことになりました。つまりその時価評価した部分については永久に損益に出てこないということですね。満期償還した場合はもちろん、途中で負債を信用リスク含みの時価で引き受けてもらった場合においても損益は発生しないことになります。

ぱっと基準を眺めてみた感じでは、今回の基準で具体的にどの条文が加わったかわからないような状態になっていますので、ガイダンス等がどのように追加されているか私にはすぐには分かりませんでした。読み込みにはしばらく時間がかかりそうですな・・・

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