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IASB会議報告(第127回から第129回まで)(1)

IASB会議報告(第127回から第129回まで)

ASBJのウェブサイトで、IASB山田辰己理事のIASB会議報告を読むことが出来ます。いや読むことが出来るだけではなく、下記のWebCastで報告を聴くことができます。
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/minutes/20101105/20101105_webcast.jsp

日本語で最新情報のサマリーが会員以外でも無料で聴けるというのはなかなか有益だと思います。40分程ですのでお時間のある方は試してみてはいかがでしょうか。

私は11/14(日)の朝に聴きましたので、気になった所について書いてみます。
当日のテーマは金融商品、特にヘッジ会計が主題となっているようですが、その辺りは苦手分野であり、最新の状況についてコメントできるレベルにはありませんので、それ以外のところでいくつか書いてみます。

包括利益計算書の改訂(1計算書方式への統一)(p12)

包括利益計算書については、損益計算書と統合して表示する1計算書方式か、別々に表示する2計算書方式か、現行IFRSでは選択が認められています。そして、IFRSでは5月に1計算書方式への1本化を求める公開草案を公表しておりました。それを知りつつも、日本ではなぜか1計算書方式への抵抗が非常に強く、今年度から適用される包括利益計算書の会計基準では選択を認めたままで運用されることになっています。

5月に公表された公開草案に対する意見を現在集約させているところのようなのですが、公開草案には意外にも1計算書方式に対する懸念が多く寄せられたとのことです。それでもIFRS理事の採決では1計算書方式への一本化への賛成が過半数(山田理事の発言によると8/9)であったとのこと。ただFASBとの合同会議の席でのFASBの採決は過半数に至らなかったとのことで(山田理事の発言によると2/5)、もう一度スタッフ差し戻しになった模様です。
IASBならともかく、FASBが日本の意見に配慮しているとはとても思えませんので、日本以外でも1計算書方式への統一には懸念を示す声がそれなりにあるということのようです。日本の多数の方には朗報かと思います(個人的にはあまりこだわりはないのですが・・・)


退職後給付(p13)

これも4月に出た公開草案に対する意見の集約をしているところです。基本的には以下に示す公開草案の骨子は変わらないまままとまりそうな気配です。ただし、年金資産の期待収益を計算するための利率について、公開草案では実質的に割引率を使用する提案をしていたものの、今回はどういった経緯かスタッフは再び期待収益率を切り分ける提案をしてきたようです。しかしながら理事の決議はそれを退けるものだったようです。スタッフと理事との間にもやや温度差があるように見えます。
(骨子)
(a) 確定給付債務の現在価値及び制度資産の公正価値の変動のすべてを、それらが生じた時点で認識する。
(b) 権利未確定の過去勤務費用は、関連する制度変更が生じた時点で認識する。
(c) 制度資産の公正価値及び確定給付債務の変動のすべてを勤務費用、財務費用及び再測定構成要素に分解する。
(d) 勤務費用を測定する際に使用された仮定の変化から生じる利得及び損失は、勤務費用には含めない。
(e) 財務費用構成要素は、確定給付負債(又は資産)純額に対する金利純額(確定給付負債(又は資産)純額に確定給付債務の測定に用いられたのと同じ金利を適用して算出)から構成されなければならない。

つづく

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