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ゴールドマン・サックス研究~世界経済崩壊の真相~(文春新書)

ゴールドマン・サックス研究~世界経済崩壊の真相~(文春新書)

会計とは直接関係ありませんが、最近読了した本ということで。

まず、タイトルには若干違和感。著者がかつて在籍していたゴールドマン・サックス(GS)。かつてはよかったが、今は・・・という箇所が何回も出てきますが、研究と言えるほどのものではなく、非関係者から見ると懐古主義に思えるところがあります。GSそのものについてもっと知りたい、というニーズに答える本ではありません。

しかし、本題はそこにはありません。

かつてライブドアの堀江氏が幅を聞かせていた頃、「額に汗して働く労働こそが貴重である。堀江氏のやっているのは錬金術にすぎなく、それは虚業である」といった言論が跋扈し、IT、金融業界の方が中心となって、大いに反論が巻き起こった、ということがあったことを思い出しました。

というのも、邦銀出身、転じてGSに在籍していた本人自らして金融を「虚業」と断じ(p178)、日本は「実業」を再興すべきと主張しているからです(p179)。
もっとも、前段では著者が従事していたころの金融業はもっと実業のことを考えたものであり、今のGSがやっていることはそれとは異なるものだ、という思想が根底にあるからこその物言いなのであり、そこは下記の記載からそのような自負が読み取れます。

もし私が日本の銀行の頭取であれば何を目指すかと言えば「将来の日本を作るしっかりとした企業を10社創ることに貢献したい」と考えるだろう(p101)

そして突き刺さったのは以下の項。現在のデトロイトの惨状を紹介した後に、復興を目指す企業の副社長の言葉です。

「この20年、これだけ没落していっているのに、企業も、役人も、労働組合も皆『やがて良い時が来る』と、現実を否定し続けたんだよ。」(p144)

否定し続けた結果が・・・

「町がここまで荒むと、まず人間の復興から始めなければいけない・・・今デトロイトで伸びている事業は、カジノ、ストリップバー、酒屋、薬の密売人しかない。したがってここ(注:教会の中のシェルター)に来た人間に最初にすることは解毒だ」(p147)

金融業が虚業か否かは議論があるでしょうが、少なくともこのデトロイトと同じ道を日本は歩み続けており、それを何とか阻止すべく「実業」の復活を、という著者の趣旨は明快です。少なくともその危機感については共有していかなければならないと考えるのです。

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