国会決議が後発事象?について
すらたろうさんの
「本には書いてない会計実務のお話。」より
すたろうさんwrote:
税制改正法案が4月にずれ込むと
繰延税金資産は改正前の
税率のままで計算するのが原則ですが
国会決議が決算日以後~監査報告書日前ですと
これは「後発事象」、それも、
修正後発事象になるのではないかと考えられます。
この場合、改正後の税率で繰延税金資産を計算することに。
後発事象とは、貸借対象表日以後起きた事象ですが
決算前にその原因があるもので、
次期以降の財務諸表に影響を与える事象のことですね。
税制改正法案は既に国会に付議されておりますので
原因は発生しています。
次に、開示後発事象(注記のみ)なのか
修正後発事象なのかを検討すると、
税率の引き下げにより繰延税金資産の大幅な取崩が
生じますので、修正すべき重要性がある、との判断になります。
「後発事象」であることはそのとおりでしょうが、一般的には「修正後発事象」ではなく「開示後発事象」として考えている方が多いような気がします。
まず、修正後発事象であるためにはそもそも「実質的な原因」が決算日現在においてすでに存在している必要があります。税制改正法案がすでに国会に付議されていることが「実質的な原因」であるかどうかがポイントかと思います。
確かに税制改正法案が付議されていることは、今後の税率引き下げの可能性を高くする事象ではありますが、あくまで決まったことではありません。いや普通はほとんど決まっているはずなのですが、今回の民主党の体たらくを見ていると、提出したままでの法案が可決されるのが確実、とはお世辞にも言えないものがあります。したがって、このままの状態が3月末まで継続するのであれば、税率引き下げを修正後発事象として3月末の決算に織り込むことは困難であるように思えます。
それは、たまたま今年のことだからで、また小沢さんが妙な動きをしているからだ(注:上のすらたろうさんの記事は小沢さんが会派離脱をほのめかす前です)とも言えるのかもしれません。しかしながら、その時点での国会の勢力図や反乱分子の動きで会計上の測定が左右されるというのも違和感があります。したがって、「実質的原因」というのは法案の成立、少なくとも衆参両院の議決が必要であると考えています。
これ以下は(だれも支持していない)暴論となりますが、そもそも上記の立場をとるのは、個人的に「修正後発事象」をきわめて限定的に捉えているからかもしれません。
会計公準中の継続企業の公準からすれば、会計期間というのは永続する企業の実績をテクニカルに一定の期間に切っているにすぎません。決算が年1回の時代であればいざ知らず、四半期ごとに業績を公表していながら、決算末日後にわかった事象につき、これは修正後発事象、これは開示後発事象と区分することはあまり有益なことと思えません。
また、よくある修正後発事象と開示後発事象の区分に「期末日後に貸倒がわかった場合」と「期末日後に災害損失があった場合」というものがあります。後者を当年度の業績に織り込むべきでないのはそのとおりだと思いますが、前者を「本当は見積もれたはずだから」監査報告書日までに決算に織り込めというのはあまりに昨今の実務を無視しているように思えます。まして、投資家にとって株主資本の毀損が起こった、という事実は変わらないのに…。
さらに屁理屈を言わせていただくのであれば、IFRSの引当金会計の現在の流れは事象の期待値により見積もれということになっています(最近軌道修正気味ですが)。期末日以降災害が起こる可能性はゼロではないわけですから、期末日後に災害があったとしてもそれは見積もりの誤りです。貸倒損失と処理を区分する必然性はないように思えます。
というわけで個人的には「修正後発事象」全廃論者です。あとでわかったことは「すみません」と断ってしっかり開示すればすむ話ではないかと思います。いたずらに理論をこね回すことはかえって会計の恣意性をもたらすことにつながると考えています。
なお、(いつものことですが) 上記は個人的見解であり、筆者が所属する企業の見解とは一切関係ございませんので、そのおつもりで。特にわたしの出自を知っている方…
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