【映画】男はつらいよ 寅次郎紅の花(第48作)

6/13 川崎チネチッタ

ついに終わってしまいました。半年間見続けてこれがラスト。公開した24作中23作観ることができました。1作見逃したのがなんといっても残念。

平成7年というごく最近の作品。平成7年。いろいろなことがあった年である。阪神大震災、オウム真理教事件といった事件があったと思えば、個人的には結婚、長男誕生、残業をたまにする職場から終電が常識の職場への異動、パソコンを初めて買ったのもこの年。何もかも既存の価値観を覆す出来事でありました。

そして、そんな年の年末に公開されたこの作品。本作が最終作ということで、いろいろあった平成7年に社会的にも個人的にも記憶を残す1作となりました。

しかしながら、明らかに寅次郎、というより渥美清さんがしんどそうなのが傍目から見ても分かります。動きのある演技がほとんどない、リズム感のある台詞回しもない、アップを見せられても顔の色艶が悪いです。公開当時も観ているのですが、当時はそんなところには気付かないでいました。半年間見続けた身からすると、観ていてつらいところがあります。

そんな状況の中でも、作品を作り上げて行くことができるのが、さすが48作重ねたチームならではです。マドンナには4回目のリリー、浅岡ルリ子が起用されます。忘れな草(11作)、相合い傘(15作)、ハイビスカスの花(25作)を重ねて、そのすれ違いにやきもきしながら観てきた身からすると、

「男が女を送るって場合はな、その女の玄関まで送るってことよ」

この台詞にて、リリーさんシリーズについても結論が出て一安心ということになりました。ラストではまたぷいと出て行った寅さんですが、またいずれはリリーのところへ帰ってきそうな予感を残して終わります。

また3年ぶりの後藤久美子を迎え、満男と泉シリーズも復活しました。これも、満男が泉の結婚式をぶち壊すという反則技にて一応の結論を出したことになります。満男の告白のあとの泉の笑顔がたまらなく魅力的です。まあ、今日本で本人を見ることができないので美化されているのかもしれませんが。ちなみにアレジとの交際が始まったのはこの頃のようです。

まあ、結婚式ぶち壊して、そのまま行方をくらました若者に対してみんな温かいです。会社まで休暇扱いにしてくれて、何という温情。こういう突っ込みもできますが、まあ目をつぶりましょう。

そして、舞台となった奄美の加計呂麻の風景が実にすばらしい。元ちとせさんの島唄が流れていたのは、平成7年の当時では分かるわけもなく。「ワダツミの木」が全国的ヒットするのはその7年後のこと。島唄、焼酎、島バナナ。すべてが旅情を誘います。14年の月日が経ってどうなっているのかは分かりませんが、ふらっと出て行きたくなるところです。
http://shodon.exblog.jp/8600621/

というわけで、半年間の楽しみが終わりました。もっとも、まだ半分の作品を観たに過ぎません。非上映だった作品をこれからDVDで観て行くことになります。これから関連書籍も読んでいきます。まだまだ修行?の日々は続きそうです。

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男はつらいよ 寅次郎の縁談(第46作)

6/6 川崎チネチッタ

前回から満男と泉の恋愛話は合計4作の間続きますが、チネチッタはそのあたりは効率的にすっ飛ばして、本作の上映を選んでいます。

舞台は平成5年。前回平成元年に浪人だった満男が大学4年となり、就職活動中。バブル崩壊後という世相もあり、就職活動には相当難儀しているところからスタート。

香川県の琴島(志々島http://www.city.mitoyo.lg.jp/hf/shishijima/jiman.htmがロケ地らしい)へ現実逃避する満男とくるまや面々の期待と不安を背負って満男を連れ戻しにいく寅次郎の島での人間関係とほのかな恋模様が主題。

マドンナは松坂慶子演じる葉子さん。しかしながら、瀬戸内の島の舞台といい、夜の商売の設定といい、寅さんとの神社での参拝シーンといい、そして、積極的な女性と逃げ腰の寅さんという設定は、第27作で松坂さんが演じたふみさんがかぶります。

満男の相手は城山美佳子演じる亜矢さん。よく知りません。そういえばパンプキンというグループがいたようないないような・・・。

納屋でのキスシーンまで演じる二人ですが、結局満男は島の生活ではなく、東京に戻って就職活動をするほうを選びます。その割には東京に戻る決断が割とあっさりしています。その辺がやや消化不良のような気がします。葉子さんとの絡みが原因ならあまりにも亜矢さんがかわいそう。

対して、体調は以前思わしくないはずの寅さんです。長い石段を登るシーンは演技でなくしんどそうですが、その割には好調な演技が見られます。いつもの惚れっぽさと、定番となったあっさりした引き際はいつもながら。
「満男、これが一生就職をしなかった人間の成れの果てだ。」のアリアにも笑わされます。

その他
・なぜか西田敏行が「浜ちゃん」役で出演
・すでに故人となった笠智衆の代わりに娘役の光本幸子が出演。第1作のマドンナでもあり、正月から観続けてた身としてはいろんな思いが・・・
・当時88歳の島田正吾さんが熱演。前年「ひらり」での長丁場を乗り切った余勢か。


ところで、なぜ寅次郎の「縁談」なのでしょう。リアルタイムで観たときも分からなかったし、今観なおしてもやっぱり分からなかった。いろいろ調べても分かりません。

さて、次回が最後の第48作です。

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男はつらいよ ぼくの伯父さん(第42作)

5/30 川崎チネチッタ

正月から見始めてついに、リアルタイムで観た映画までたどり着いてしまいました。
そして自分にとっても記念すべき作品。3か月の放浪のたびに出た末に日本に帰ってきてみて、改めて日本を感じた象徴的な作品。そして舞台挨拶を見た最初の作品でもあります。
ついこの前のことだと思っていたのですが、すでに20年がたちます。

しかし、今回初期の作品からずっと観てきてみると、登場人物に老化が忍び寄っているのが明らかに分かります。まあ、前回が35作目で5年分くらい飛んでいるので無理もないのですが、くるまや(いつの間にかとらやより改名)の面々は一気に老け込んだ感じですし、太宰久雄さんもかなり痩せてきてしまっている(ただし佐藤蛾次郎さんだけはよく分からない)。逆にレギュラーではない夏木マリさんや笹野高史さんは現在と比べてしまうので妙に若く見えてしまうという不思議な現象を感じます。しかし、今や大河ドラマで秀吉を演じる笹野さんの気持ち悪い役どころが見ものでもあります。

そして、異人さんに連れられて行っちゃった後藤久美子が本作から4作連続でマドンナを務めるわけですが、当時15歳。悔しいけど今見ても可愛い。前回35作では中学生役だった満男こと吉岡秀隆はいきなり浪人生になって実質主役を演じています。今回は寅さんに覇気がない分だけ、かっこ悪い部分、身勝手な部分、情けない部分などを一手に引き受けています。子供のときの演技に比べればあまりぱっとしない演技であるようにも感じるのですが、このぱっとしない度合いもまた演技だったということなのでしょう。

そして、覇気のない寅さん。リアルタイムで観たときは分からなかったのですが、この頃からかなり体調に無理があった様子。明らかに出演時間を絞ったシナリオになっており定番の喧嘩も、恋もほとんどなく終わってしまいます。特にラストシーンでくるまやのメンバーと電話で次々と話すシーンは、この回で終シリーズを終わらせることもある程度考えていたのかな、とすら感じます。
そんななか、かっこ悪いシーンを満男に押し付けた寅さんは今回はひたすらカッコいい。

「私のようなできそこないが、こんなことを言うと笑われるかもしれませんが、私は甥の満男は間違ったことをしてないと思います。慣れない土地へ来て、寂し い思いをしているお嬢さんを慰めようと、両親にも内緒ではるばるオートバイでやってきた満男を、私はむしろよくやったと褒めてやりたいと思います」(from wiki)

言わずもがなのベタな台詞と評価する人もいますが、私は20年ぶりに聞いたこの台詞に痺れました。こういうことを言える伯父さんになりたいですね。って私一人っ子だから甥もいないのですが。

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男はつらいよ 寅次郎恋愛塾(第35作)

5/23 川崎チネチッタ

決算ですっかりサボってしまって、気がつけばもう35作目です。

・・・いや、実はいくら決算でも欠かさず川崎には通っていました。書き込みをサボっているだけで、

・ 寅次郎ハイビスカスの花 (第25作)(4/18)
・ 浪速の恋の寅次郎(第27作)(5/2)
・ 寅次郎あじさいの花(第29作)(5/10)
・ 口笛を吹く寅次郎(第32作)(5/16)

計算をすればお気づきの通り、1週だけ飛んでいます。寅次郎かもめ唄(第26作)を落としてしまいました。映画館には駆けつけたのですが見られませんでした・・・。まあこの経緯と他のレビューはまたの機会に。

ということで、今回は寅次郎恋愛塾(第35作)

巷ではあまり評価の高くない作品、というか第32作を除いてあまり評価されていない30作代の作品。その中からチネチッタがこの作品を選んだ意図は不明です。
マドンナで選定したのでしょうか。確かにこの作品での清楚なマドンナが、日本のヘアヌードの歴史を書き換え、有名コピーライターと結婚した挙句に、犬の奥さんになってしまうとは当時誰も想像だにしないのであります。

そのような意図とは別に、自分にとっては親近感を持てる作品でありました。それは以下の点からです。

五島とキリスト教
縁あって息子がミッション系の中学に通うことになってから、私も父親向け聖書研究会の一員に名を連ねることになったわけです。月1回、それもメインは飲み会である団体に所属しているだけのにわかクリスチャンには何も分からないのですが、それでも隠れキリシタンの島、そして殉教の島である五島でのクリスチャンのおばあさんの死の美しさ、そしてマドンナ若菜さんの「神のお導き」という言葉が心に沁みるようになりました。ある種の偶然の出会いに支えられているこのシリーズですが、神のお導きと考えるとある意味納得できるのかもしれません。

陸中花輪
平田満演じる青年の出身地は秋田の鹿角市。
それを追いかける豪華3人(渥美清、松村達雄、樋口可南子)が降り立つのは当時の陸中花輪駅。花輪線、花輪高校、安比高原、八幡平。個人的にいろいろ引っかかるキーワードがある近辺。開通したばかりの東北新幹線がまた新鮮。
そのときの状況を臨場感あふれる形で伝えているブログがあったので以下に紹介。
http://plaza.rakuten.co.jp/odagiritsushin/diary/?ctgy=4

ただ、ここ最近見てきた25、27、29、32作は揃いもそろってマドンナ側が比較的積極的に寅さんにアプローチするという恋愛成就の緊張がある作品だったため、それと比較するとどうしてもストーリーが緩慢になってしまうのは否めません。ちょっとやりすぎのギャグの挿入も目障りなところがあります。このあたりの作りが30作代の限界なのかもしれません。

ところで、32作までは小学生だった満男が、いつの間にか中学生になっています。次週上映はいきなり42作まですっ飛ばしてしまうため、浪人生になりほぼ主役を張ってしまいます。満男の少しずつの成長ぶりと、寅さんが果たした影響というのをもう少し見てみたかったよう泣きがするのですが。ちなみに中学時代の満男はフルート奏者だったようで。次週はチューバを吹いている満男が見られるはず。

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【映画】男はつらいよ 噂の寅次郎(第22作)

4/12 川崎チネチッタ

私、・・・寅さん好きよ。

いるんですよねぇ。軽い気持ちでこういう言葉をばら撒いてしまう女性って。しかもそれが大原麗子だからたちが悪い。渡瀬恒彦と森進一を惑わした魔性が寅次郎を襲います。

いままで十数作見てきましたが、こうねっとりした色気をばら撒くマドンナというのは異色の部類に入るでしょう。枯れているように見える下條のおいちゃんに「色っぽい」と劇中で断言させていましたからね。こういう女性をどう見るかによってこの映画の評価は分かれるような気がします。ちなみに、私はかなり評価高いです。大原麗子、久しぶりに見ましたが、魅力的です。不幸が堂に入ってます。

そういえば大原麗子って最近見ませんね。どうしているんでしょうかと思ったら、闘病中のようです。ぜひもう一度元気な姿を見たいものです。

そして、それに対峙する寅さんも男気を見せてくれます。従兄の室田日出男さん(役名失念)の強い思いに打たれ、早苗さんに彼を追いかけるように諭します。口ごもる早苗さんに「それは明日聞くから・・・」と。この時点で観客は今日中に寅次郎が旅立つことを悟ります。優しく、かつ切ない情景がまた1つ、とらやで繰り広げられます。


また、この作品のもうひとつの側面、諏訪ひょう一郎(「ひょう」は難しくて書けない))三部作の最後でもあります。志村喬さん演じる博の父親。第1作では博の結婚式、第8作では妻の葬式、それぞれで頑固で食えない親父役を好演していた志村さんが、再登場します。次に出てくるのが5年後の第32作で3回忌ですから、余命2年といったところでしょうか(事実志村さんは、この4年後に亡くなっているようですが)。寅に訥々と話をし、寅が改心するものの、マドンナの登場で・・・ってのは第8作の二番煎じなのですが、2度のイベントを経て、ひょう一郎さんの魅力が丸みを帯びてきています。とらやで店員と間違えられお茶を入れているシーンがいいです。

さて、来週決算のピークなのですが、第25作です。なんとしても時間を作らねば。

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【映画】男はつらいよ 寅次郎わが道を行く(第21作)

♪大きな口の木の実ナナ~

ってなわけで、今回のマドンナは松竹歌劇団(SKD)のメンバー、紅奈々子に扮する木の実ナナ。今はなきSKDのレビューを手軽に垣間見られることで貴重なものとなっているらしいです。SKDは木の実ナナさん以外本物のメンバーであり、そのシーン自体は楽しむことができました。しかしながら、同じ松竹ということもありどうしても映画、レビュー双方のてこ入れという側面が露となってしまっており、いまいちストーリーに入り込むことができなかったのが正直なところ。

そんな木の実ナナさん、恋と踊り、すなわち仕事の間で悩む女性を演じます。現代なら真っ先に両立、という発想が出てくると思いますが、当時ではそのような発想自体うかばないものであったのかもしれません。一旦は仕事を選んでしまい、その憂さを晴らすべく寅さん相手に「夜通し飲もう」とくだを巻きます。関係ない男を夜中まで飲みに付き合わせる性格はのちに五木ひろしを巻き込んで「居酒屋」に発展するわけですが、それはさておき、寅さんを家まで巻き込んでおきながら、窓の外で張り込みを続けるゴリさん、いや竜雷太扮する恋人隆をみるや、大雨のなか飛び出して行き、稲光の中でのキスシーンを寅さんに見せ付けてしまいます。稲光はややベタな気もしますが、寅さんの寂寥感との対比が心に残る美しいシーンではありました。

そして、武田鉄矢扮する留吉。「もてない男」を忠実に演じます。「幸福の黄色いハンカチ」で山田監督に抜擢されて直後の出演。今後映画の「刑事物語」やドラマ「101回目のプロポーズ」等このキャラをひっぱっていきます。ちなみに「金八先生」の開始はこの1年後。一発屋で終わると思われていた人を軌道に乗せた映画でもあります。

なお、この映画の背景にあるのはUFO。UFOが突然柴又にやってきて、乗組員である猿の源ちゃん(笑)が宇宙人である寅さんを迎えに来る冒頭の夢や、帝釈天の入口でUFOの振り付けをやっている子供たちに時代背景を感じます。源ちゃんとともに振り付けをやっている子供たちが私と同年代と思われます。そしてUFO、この単語自体はあまり使わないし、あまり騒がなくなっている、というのは単に私の感度が鈍っているからなのでしょうか。と思ってしらべたら、矢追純一さんのサイトが。まだ頑張っているんですね。明日はお花見だそうです(笑)。

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【映画】男はつらいよ 寅次郎と殿様(第19作)

3/29 川崎チネチッタ

冷静に考えればこれはネタ切れが見えてきた作品とも言えます。冒頭の「鯉のぼり騒動」はいつぞやの「ピアノ騒動」の焼きなおしだし、頑固爺さんに寅さんが妙に気に入られるというのは、博の父との絡みなどでおなじみ。そして、父と娘の愛憎というのは吉永小百合の歌子さんの時を思い出させます。こちらは義父と嫁ですが。

そういう二番煎じがそこかしこで見られるのですが、それをリメイクだと考えると、古い皮袋に、昭和の名優である嵐寛寿郎さん演じる殿様と、曲者三木のり平さん演じる執事が新しい酒を注いだと言えましょう。彼らの大げさな演技が決してすべることなく、同じように変人である寅さんとの相性も抜群で、上質なコメディーの名品に仕上がっているように思えます。

ただ、そのコメディー色が強すぎたため、真野響子さん演じるマドンナの個性が薄いものになってしまい、寅さんの失恋物語も随分と淡白なものになってしまっています。まあここ2回がリリーさん(浅岡ルリ子)とぼたんさん(大地喜和子さん)という強烈なマドンナであったので、正統な清楚な美女路線に戻ったともいえるのですが。

あと、前回見た第17作もそうだったのですが、冒頭の歌で3番が流れています。

「当てもないのにあるよな素振り・・・(忘れた)・・・止めに来るかとあと振り返りゃ、誰も来ないで汽車が来る。男の人生一人旅、泣くな嘆くな、泣くな嘆くな影法師、影法師」

この3番、存在自体を知らなく、カラオケにも(確か)なかったと思うのですが、なかなか良い詞ですね・・・

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【映画】男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け(第17作)

3/22 川崎チネチッタ

「人生に後悔はつきもの」・・・

私生活でこんな経歴を持つ岡田嘉子さんに言われると、絶対反論できない説得力を持つこの言葉。「ああすればよかった」という後悔と、「何であんなことをしてしまったんだろう」という後悔(正確な引用ではありません)。この映画はこの言葉に支配されているような気がします。

そしてその後悔に向き合っている相手は宇野重吉さん。書の大家なのに無銭飲食で捕まりそうになるところを寅さんに救出されるような生活。名声を得ているが決して家庭には恵まれていない姿が垣間見える。昔の縁ある人と再会し、「人生に責任がある」と謝ってしまうが、それがしっかり断ち切られ、元の鞘に収まって行く。この二人の対峙がこの映画でのメインのような気がします。

私は宇野重吉さんの本当に晩年の姿しか知らないので、最初出てきたときは寺尾聰さんかと思いましたが、その寺尾聰さん、龍野役場の係長さん役で親子共演。「ルビーの指環」発売の4年前のことです。その上司である課長さんは桜井センリさん。上記の岡田さんと宇野さんのシーンの裏、引立て役として強烈なキャラを打ち出します。犬塚弘さんとともにクレージーキャッツでの寅さん常連。

さて、肝心のマドンナ、太地喜和子さん。渥美清さんとは犬猿の仲だったというのをどこかで見たような気がしますが(ソース不明)、もちろんそんなことは演技上微塵も見えません。リリーさんのときもそうなのですが、マドンナが水商売キャラの場合、会話がテンポよく進んでいきます。「所帯持とう」と心から冗談で言える仲はうらやましい限り。

そんなマドンナ、ぼたんが詐欺に引っかかり、寅さんが男気を出します。その男気は例のごとくから回りするのですが、若いときから頼るものなく生きてきたぼたんは、男気に触れ思わず泣き出してしまいます。

しかし、これは恋の内に入るんですかね。兄の幸せのことになると盲目になるさくらは例によっておせっかいを焼いてしまうのですが、この2人はどちらかというと友情で結ばれていた面が強いのではないでしょうか。寅さんは今回は恋もせず、ふられもしなかったというのが私の結論です。かなり前の第4作を観たすぐ後であったため、観終わった後の気分は上等なのですが、反面今後あまりかっこ悪い恋をしなく寅さんにややさびしい思いもしてしまうのです。

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【映画】男はつらいよ 寅次郎と殿様(第19作)


3/29 川崎チネチッタ

冷静に考えればこれはネタ切れが見えてきた作品とも言えます。冒頭の「鯉のぼり騒動」はいつぞやの「ピアノ騒動」の焼きなおしだし、頑固爺さんに寅さんが妙に気に入られるというのは、博の父との絡みなどでおなじみ。そして、父と娘の愛憎というのは吉永小百合の歌子さんの時を思い出させます。こちらは義父と嫁ですが。

そういう二番煎じがそこかしこで見られるのですが、それをリメイクだと考えると、古い皮袋に、昭和の名優である嵐寛寿郎さん演じる殿様と、曲者三木のり平さん演じる執事が新しい酒を注いだと言えましょう。彼らの大げさな演技が決してすべることなく、同じように変人である寅さんとの相性も抜群で、上質なコメディーの名品に仕上がっているように思えます。

ただ、そのコメディー色が強すぎたため、真野響子さん演じるマドンナの個性が薄いものになってしまい、寅さんの失恋物語も随分と淡白なものになってしまっています。まあここ2回がリリーさん(浅岡ルリ子)とぼたんさん(大地喜和子さん)という強烈なマドンナであったので、正統な清楚な美女路線に戻ったともいえるのですが。

あと、前回見た第17作もそうだったのですが、冒頭の歌で3番が流れています。

「当てもないのにあるよな素振り・・・(忘れた)・・・止めに来るかとあと振り返りゃ、誰も来ないで汽車が来る。男の人生一人旅、泣くな嘆くな、泣くな嘆くな影法師、影法師」

この3番、存在自体を知らなく、カラオケにも(確か)なかったと思うのですが、なかなか良い詞ですね・・・

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【映画】男はつらいよ 寅次郎相合い傘 (第15作)

3/15 川崎チネチッタ

幾多の方々が書いていて、今更陳腐な言葉を重ねるまでもないのですが、紛れもないシリーズ指折りの名作でしょう。チネチッタでの連続上映は6月まで続くのでそれまでは順位付けできませんし、終わったところで順位付けなど野暮なことはしないつもりなのですが、まず確実に5本、そしておそらく3本の指には入ることになるでしょう。もっとも第11作を見てなくては分からない、(いや、観ていなくてもストーリーはつながるでしょうが、味わいは半減するでしょう)という欠点がありますので、この一本というのには勧めにくいところがあるのですが。

とにかく、映画を流れるテンポがやけにいいです。冒頭の夢のシーンはさておき、テーマ曲以降はだいたいマドンナとは比較的関係の薄いサブストーリーから入り、後にマドンナのメインストーリーにと続いて行くのですが、今回は冒頭からリリーさんが登場し、あとはほとんど出ずっぱり。横道それたサラリーマンの「パパ」のサブストーリーはありますが、それはメインストーリーとは密接不可分のものとして進行していきます。マドンナが出ずっぱり、しかも二度目の登場とあれば、ただでさえパターン化されているこのシリーズ、二番煎じとしてだれる部分が出てきてもおかしくないのですが、終幕まであっというまに突っ走ってしまいます。

最後のほうから遡ると、まず「さくらの勇み足」。
なんだかんだ言っても結局兄想いのさくら、その熱意によって何とかリリーさんの想いを引き出すことができたのですが、それをその場に帰ってきた兄にストレートに伝えてしまう。兄の性格を考えれば、そこで手放しにそれを受け入れるはずがないことは分かりそうなものですが、兄の幸せを願う気持ちがそれを盲目にされたのでしょう。ストレートな伝え方をされた寅は「冗談だろ」と流してしまい、リリーさんは「そ、冗談」と煙に巻いてしまう。この二人がこの場で、他にどういう台詞を言えるのでしょうか。この後のシーンでもその行動を悔やむ台詞が出てきますが、明らかに「さくらの勇み足」であるところが、なんとも切ない思いに駆られます。もっともさくらは引き金を引いたに過ぎず、遅かれ早かれこういう運命にはなっていたのでしょうけれども。

題名にもなっている「相合い傘」。
美しいシーンです。某所に動画が上がっていました。何度も観かえしました。山本直純さん、あの顔からどうやって「リリーのテーマ」みたいな叙情的な曲をひねり出すのでしょうか。

「メロン騒動」
たしか、サザエさんにもメロンを家族全員の7等分にしようとしているときに、マスオが腹痛を起こしたのだが、その心配をする前に、サザエが「6等分に変更」と言ってしまい、マスオがふてくされてしまう、というネタがあったと記憶しています(注:記憶は確かなようです。(おやつの行方 参照))。これほどまでに気を使うメロンの分け方。数の入れてもらえなかった寅、それもメロンを受け取った張本人なのですから、拗ねるのはある意味当然。しかし、その正当性をもばっさり斬ってしまうリリーさんの小気味いい啖呵。「ろくでなしのあんたを、大事にしてくれる家がどこにあるってんだ」。おいちゃんや博まですっとしてしまうまさに本音。これだけ本音で啖呵が切れる女性はマドンナではもちろん彼女だけで、あとは実母役のミヤコ蝶々さんを数えるくらいでしょう。しかし、流れ者でありながら帰る家がある寅と、それがないリリー。第11作での別れの原因がまたここで繰り返されるのでした。

「寅のアリア」
この言葉自体このシリーズを重点的観だした最近知りました。で、だいたいはとらやの面々を呆れ返らせるというオチで終わってしまうのですが、今回のアリアはおばちゃんがもらい泣きしてしまうくらいの感動的なもので、珍しくも周りの人々を温めて終わってしまうのです。いつもは寅の人生観が滑稽な形で表れるアリアですが、今回は相手を思いやる気持ちがストレートに出ている異色のものでした。「金があったら想い人の夢をかなえてあげたい」。時代を超えて今でも通じる美しい人の心です。

「出会いと別れ」
言葉とは、強くそして儚い。劇的な再会をした寅とリリー。「あれから何してたの?」「恋していたのよー」。こんなテンポのいい会話ができる二人。それなのに、そのテンポに甘えてしまうと言っていいことと悪いことの区別がつかなくなる。「ホントは捨てられたんだろう?」、このひと言でテンポのいい会話と、二人の仲が急速に失われていく。言葉って本当に恐ろしい。実生活でも自戒の念に駆られてしまいます。

まだまだ書きたいことはありますが、「今昔物語」としてあと3題

・ 「パパ」を演じる船越英二さん。子持ちの昔の想い人に息子がいて幸せそうな姿を見て立ち去ろうとします。25年後、息子の船越英一郎さん、子持ちの松居一代さんと結婚します。
・ そういえば、冒頭に出てきて、「立ってるだけで金が入ってくるんだったら・・・」とタコ社長をうらやましがらせたエリザベス女王。それに対して「いろいろ苦労があるんだよ」とおばちゃん。これから始まるチャールズ皇太子一家の紆余曲折をおばちゃんは御見通しか?
・ 冒頭の夢は海賊船。34年のときを経た今、まさか新聞の一面に海賊対策が出てくる時代になるとは・・・

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