監査法人に交代制 EU検討、企業となれ合い防止 (10/16 日経16面)(1)
欧州連合(EU)が監査法人に対する規制を強化する。
監査法人と顧客企業とのなれ合いを防ぐため、企業に担当監査法人の定期的な変更の義務付けを検討する。登録した監査法人や会計士が域内で自由に活動できる「パスポート」も導入する。四大監査法人の寡占状態にある監査市場の競争を促し、企業や銀行の財務内容を厳しく点検することで金融危機の再発防止につなげる狙いだ。
いくつかのブログでも話題になっている記事ですが、原文はこちらです。
Consultation on audit policy - Lessons from the Crisis
このグリーンペーパーの目的としては
The Green Paper aims to draw the lessons from the crisis with respect to the external audit of companies. In particular, the Commission is keen to discuss whether audits provide the right information to all financial actors, whether there are issues around the independence of audit firms, whether there are risks linked to a concentrated market, whether supervision at a European level might be useful and how best the specific needs of small and medium sized businesses may be met.
いわゆる金融危機によって、いろいろと監査人監査に関する問題点が出てきたので、その対策をしていこう、ということが垣間見えます。日本では景気悪化に伴う市場の伸び悩みから来る会計士試験の合格者の就職問題に夢中のようですが、EUではそもそも監査人監査のストラクチャーを根本的に揺るがすような検討を始めたということのようです。
原文は9章と38個の質問からなっています。全部で21ページですので読むのにはそれほど時間がかからない方が多いでしょうが、私がまじめに読むと時間がかかりますので、質問文を読んでから本文を読むという必殺TOEIC Part7テクニックを駆使して読んでいくことにします。いつもどおり訳は適当にはしょっております。
1. Introduction
ここは全体像なので、とりあえずパス。
2. Role of the Auditor
2.1. Communication by auditors to stakeholders
そもそも、監査人と利害関係者との情報のやりとりが十分であるのか、という問題意識から、以下の質問を投げかけています。
(4) Do you believe that audits should provide comfort on the financial health of
companies? Are audits fit for such a purpose?
(5) To bridge the expectation gap and in order to clarify the role of audits, should the auditmethodology employed be better explained to users?
(6) Should "professional scepticism" be reinforced? How could this be achieved?
(7) Should the negative perception attached to qualifications in audit reports be
reconsidered? If so, how?
(8) What additional information should be provided to external stakeholders and how?
(9) Is there adequate and regular dialogue between the external auditors, internal auditors
and the Audit Committee? If not, how can this communication be improved?
(10) Do you think auditors should play a role in ensuring the reliability of the information
companies are reporting in the field of CSR?
(11) Should there be more regular communication by the auditor to stakeholders? Also,
should the time gap between the year end and the date of the audit opinion be reduced?
(12) What other measures could be envisaged to enhance the value of audits?
そもそも、監査人というのは企業の財務健全性維持の目的に十分寄与しているのか。
投資家と監査人の間にあると言われるいわゆる「期待ギャップ」解消のために監査人はもっと利害関係者に説明すべきではないのか。
監査人に課されている「職業的懐疑心」はもっと強化すべきではないのか、それはどうしたら達成できるのか。
限定付き意見については、消極的評価を恐れるあまり、避けようとする場合が多いが、そのような見方を改めるべきではないのか?
外部の利害関係者にもっと提供すべき情報はないのか、またそれはどのようにして適用したらいいのか
外部監査人と内部監査人との間の十分なかつ定期的な情報交換は行われているのか
監査人はCSRの分野においても情報の信頼性を確保するために一定の役割を果たすべきではなかろうか
外部の利害関係者と監査人の定期的な情報交換はもっとやるべきではないのか、また財務諸表日と監査意見日の差は埋めていくべきではないのか
その他監査の価値を高めるためにどのような手段があるか
2.2. International Standards on Auditing (ISAs)
ISA(国際監査基準)については最近フォロー不足なのですが、2009年までに「クラリファイプロジェクト」というものをやっておりまして、基準が見直されています。これに応じて日本の監査基準なども修正されています。IFRSを導入しようとなると何かと抵抗勢力がぞろぞろ出てきますが、監査基準についてはあまりニュースにもならず、簡単に国際的な基準が入ってくるようです。
(13) What are your views on the introduction of ISAs in the EU?
(14) Should ISAs be made legally binding throughout the EU? If so, should a similar
endorsement approach be chosen to the one existing for the endorsement of
International Financial reporting Standards (IFRS)? Alternatively, and given the
current widespread use of ISAs in the EU, should the use of ISAs be further
encouraged through non-binding legal instruments (Recommendation, Code of
Conduct)?
(15) Should ISAs be further adapted to meet the needs of SMEs and SMPs?
ISAってどう思いますか、EUで強制的に導入すべきだと思いますか、中小企業にも適用できると思いますか?ということです。
(つづく)
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